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第五十話 新説 かぐや姫副読本

 酒田昇の上司である飯塚編集長の協力で副読本の作成に着手しようとしていた時、前世の未来が昼間に言った。


「夕子、その本の原稿を先に見せていただきたくござります」

「未来、どうして」


「字体によっては姫は、理解出来ませぬ。

ーー それに、夕子の物語にも加筆修正が必要な気がしてござりまする」

「分かったわ、未来、酒田さんにお願いしてみるから待っていて」




 翌日、未来と夕子は、エイアイが変換した原稿を眺めていた。

未来は、赤ペンで原稿に修正箇所を次々と書き入れた。


「夕子、ここは、現実との乖離(かいり)が大きいので、こうするといいわよ」

「未来は、歴史の目撃者だから、私には、異論を(はさ)む余地はありません」


 やがて、原稿は大幅に修正されて副読本が完成した。


 タイトルには、「新説 かぐや姫 副読本」と書かれていた。

筆者は、三日月未来、編集協力に未来と書かれている。




 昼間夕子の部屋に、三日月姉妹、未来、零、星乃、朝霧、夕子、日向黒子、酒田と安甲神主が集まった。


 完成した副読本を三日月姫は手に取り涙ぐむ。

夕子が与えたハンカチを目頭に当てた。


「夕子、未来、この物語は、素晴らしいわ」


「三日月姫さま、勿体ないでござります」

未来が言った。


「未来、これが完成したのも未来のお陰よ」

夕子も、満足な表情を浮かべて言った。


 酒田は、全員に副読本を手渡した。

「飯塚編集長の判断で千冊が出版されました。

ーー 一部は、ピンポイントで高校に配布されるそうです。

ーー 残りは有名書店とネットで販売されると聞いています」




「酒田さん、でも、これ読める人いないわよ」

「昼間先生、副読本には訳文を添付しました」


 夕子は、副読本をめくり酒田の言葉を理解した。


 零と日向黒子も、本を手に取り子どものようにはしゃいでいる。


「昼間先生、この本、凄いです」

日向黒子は、三日月未来が昼間夕子と気付いていた。

零との関係から気付くのに時間は掛からなかった。


「夕子、これが私の前世なのね」

「そうよ、紫、あなたの前世よ」


 朝霧美夏も星乃紫と同じ質問をした。


「この本の中に私たちの前世の物語があると思うだけで、

ーー 鳥肌が立つわ」


「美夏、ありがとう。

ーー でも、今回の本は未来の協力のお陰がなければ完成していないわよ」


「夕子、あなたは私の生まれ変わりで、素晴らしい女性よ」

前世の未来が夕子の手を両手で握って感謝している。


「未来、そんなことないわ。

ーー 私の無意識が未来たちからのメッセージを受け取って書けたのよ」


 昼間夕子は、次からのシリーズに強いエッセンスをと思っていた。




 翌日の午後、昼間夕子の携帯に酒田からの着信があった。

夕子は、職員室で帰り支度をしていた。


 夕子と酒田は、神聖学園前の書店で落ち合うことになった。


「昼間先生、今日は、先生にご報告があります。

ーー 朗報です」

「酒田さん、なに、勿体ぶってんのよ」


 二人は、書店の古典コーナーに移動した。

酒田がランキングのボードを指で示した。


「昼間先生、おめでとうございます」

「あっ・・・・・・」


 ランキングの上位に夕子の本が五冊ランクインして独占していた。

「先生、あの副読本がヒットした波及効果で先生の他の本にも火が付きました」

「じゃあ、あの副読本が導火線になった訳?」


「はい、そうなります。

ーー 副読本の増刷は決定しています」


「酒田さん、増刷はいいけど、火傷しない程度にお願いね」

「大丈夫です。うちは大手じゃないから、博打(ばくち)はしませんから」


 夕子は、印税を考えて微笑んだ。




 酒田と夕子が書店を出ようとした時、夢乃兄妹と、白石陽子と会う。


「ヒメ、真夏ちゃん、白石、最近ご無沙汰だな」

「ご無沙汰は、先生よ」

真夏が言った。


白石も真夏の後ろで言った。

「先生、最近、文芸部、無視していませんか」

「白石、そんなことない。

ーー ちょっと私用で手が離せなかっただけだから気にするな」


 相変わらず、昼間夕子の弁解は弁解になっていない。

「じゃあ、次は、先生が文芸部で面白い話を聞かせてあげるから楽しみに」

「先生、それ約束ね」


「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます・・・・・・」

真夏がそう言うと夕子の小指に自分の小指を掛ける。

白石もヒメも真夏の真似をした。


 五人は、神聖学園前駅で別れた。

夕子と酒田は、東富士見町のスーパーマーケットに寄る。


 昼間夕子は次の印税の皮算用をしていたが、複雑な心境だった。

新説 かぐや姫副読本は、未来の作品に近い。

夕子は下書きを提供したに過ぎない。


 夕子の中で疑問の声が大きくなるのを感じた。

夢乃兄妹と白石陽子と前世の関係が未解決だったのだ。


「昼間先生、また考えごとですか」

「朝霧先生、偶然ね。あら、星乃先生まで」


「昼間先生、偶然は、ご挨拶よ」

朝霧の言葉に、夕子は、はにかむ。


「ところで、三日月姫は、どうしているの」

「お部屋で待っているわ、きっと・・・・・・」

「お部屋って、誰の部屋?」


 星乃と朝霧は考えた。

自分たちの前世の人間を・・・・・・。




 日向黒子が零と現れ、その後ろに野球帽の三日月姉妹と未来が立っていた。


 紫色の帽子の三日月姫と楓色の帽子の妹の後ろに、緑色の帽子の未来が夕子を見ている。


「夕子、今夜も晩酌の準備でござりますか」

三日月姫の言葉に、その場の全員が苦笑している。


「わらわが、何か無礼なことを申し上げたでござりますか」

三日月姫の言葉に未来が夕子たちを(にら)み付けている。


「三日月姫に不敬がござりませぬよう」

未来だった。

 お読みいただき、ありがとうございます!

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投稿後、加筆と脱字を修正をする場合があります。


三日月未来(みかづきみらい)

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