第四十六話 未来は三日月姉妹の従者
注意: 昼間夕子、朝霧美夏、星乃紫の三名の氏名の上にある振り仮名は前世名であり、現在のニックネームとなっています。
朝霧と星乃は前世の双子の姉妹の三日月だった。
姉が星乃で、妹が星乃、星乃はかぐや姫のモデルだったため、現世ではケイと呼ばれている。
昼間の前世は三日月妹の従者で未来と呼ばれた作家だった。
※話によっては、ルビ振り仮名を多用しています。とかく読みづらくならないように。
中高生以上を対象に書いています。
昼間夕子が神主に連絡を入れた翌日の午前中、神主は、夕子の部屋に訪問した。
「昼間先生、お邪魔します」
「神主さん、どうぞこちらへ」
週末と重なり、夕子、星乃紫、朝霧美夏、酒田昇も同席した。
「神主さん、白黒のイラストに色が増えています」
「うん、これは、何かの前兆かも知れんな」
「神主さん、前兆ってなんですか」
「わしも知らないが時空の歪みと関係あるやも知れない。
ーー 何が起きても動じないことだ」
神主の言葉にかぐや姫と零が首を捻る。
「あの、神主さん、境内と夕子の部屋にパイプがある気がするんですが・・・・・・」
「星乃先生が仰る推察、わしも感じておる。
ーー 零が、この部屋に瞬間転移したこともあったわけだから」
「神主さん、じゃあ、まだまだ何かが起こるのですか?」
「前世から零が来て、かぐや姫である三日月姫が来たのだが・・・・・・。
ーー 役者が足らない気がしないかな」
「なるほど、日向黒子は前世の零と対面している。
ーー 星乃紫も前世のかぐや姫と対面した。
ーー 神主さん、まさか・・・・・・」
夕子が嗚咽に近い声を漏らした時、精霊が囁く。
「未来、未来も会える・・・・・・」
「昼間先生、イラストの色の変化は信号が変わったと言う合図かも知れませんよ。
ーー 精霊の声でイラストの意図が見えて来ました」
昼間夕子は、神主の声で混乱した。
「神主さん、じゃあ、神社の境内にお迎えに行かないと」
「そうじゃな、みんなで、境内に行こう」
昼間夕子、朝霧美夏、酒田昇、零、神主の五人は大型ワゴンタクシーで神社に向かった。
かぐや姫と星乃紫は、昼間夕子の部屋で留守番することになった。
「昼間先生、私たちも前世の自分と会えるのかしら」
「朝霧先生、分からないわ。
ーー とても複雑な心境よ」
夕子たち五人を乗せてたワゴンタクシーが神社の前に到着する。
社務所の前で巫女たちが集まっていた。
神主が近付いて花園舞に尋ねた。
「舞、何かあったのか」
「はい、神主さん、それが・・・・・・」
神主は、巫女たちに気を取られて境内を見ていなかった。
花園舞が神主の顔前で境内の方向に指を差した。
その先には巫女装束の女性が二名立っている。
未来の妹の零が二人のところに駆け寄る。
「未来お姉さま、零でござります」
前世の未来は零を見て抱きしめる。
「零、ここは、どこでござりまするか?
ーー 零は神隠しで消えたと聞いとりますが・・・・・・」
「お姉さま、ここは、来世の世界と聞いとります。
ーー お姉さまの生まれ変わりの未来から」
零は昼間夕子を指差して、未来の手を引き夕子に顔合わせをさせた。
「来世の未来か。前世の未来でござります。
ーー 未来、会えて嬉しい・・・・・・」
「・・・・・・」
昼間夕子はあまりの驚きに言葉を失った。
朝霧美夏が夕子の背中を押す。
その時、背後から朝霧に声を掛ける別の女性がいた。
「あなた、私の生まれ変わりの三日月の妹ね。
ーー 姉が消えてしまって、未来と探していたら
ーー この境内にいたの」
「・・・・・・」
朝霧も咄嗟のことで言葉がでない。
前世の未来の妹の零が、昼間と朝霧に代わって前世の未来と前世の三日月の妹に説明した。
「じゃあ、三日月姫は、この時代の未来の部屋にいるのね」
零が未来と三日月妹を見ながら小さく頷く。
神主が来て夕子たちの中に入り、社務所で休憩を提案した。
前世からの来訪者はかぐや姫を含めて四人になった。
「神主さん、折角ですが、今は、かぐや姫とあまり離れていない方がいいと思います」
「そうじゃな、昼間先生の言う通りだ」
神主が大型ワゴンタクシーを手配してくれた。
念のため神主も同乗して昼間の部屋に行くことにする。
まだまだ、昼下がりの時刻だった。
前世の未来と転生した未来が会っている。
前世の三日月妹と転生した三日月妹が会っている。
マンションに到着して、四人はエレベーターの鏡に写し出された自分たちの顔をみて驚く。
双子のように瓜二つの顔立ちだった。
昼間と朝霧は、大きな見落としに気付く。
かぐや姫と星乃もそっくりだった。
零と日向黒子もそっくりだ。
次元トンネルや時空の歪みに気を取られて大事なことを忘れていた。
巫女装束の二名は、昼間夕子の玄関を見て驚いている。
「これは、鉄の扉か? 」
「いいえ、ステンレスです」
夕子が答えた。
「なんじゃ、聞いたことのない言葉じゃ」
「鉄の親戚のような金属です」
夕子が鍵を開けて扉を引き、前世の巫女装束の未来と三日月妹を夕子の部屋に入れた。
星乃紫が玄関に出ると前世の二名が声を上げて驚いている。
「星乃先生、前世の二名が、先生をかぐや姫、つまり三日月姫と思っているわよ」
夕子が言った。
「気付かなかったわ。
ーー そう言えば似てるなあとは思っていたけれどけ・・・・・・」
かぐや姫も玄関に出て来た。
「三日月妹、未来、其方たちも、この世界に迷い込んだのか」
「姫さまがご無事で、未来は、安心してござります」
夕子がみんなを居間に案内して気付く。
夕子は頭の中で改めて人数を数えた。
夕子、星乃、朝霧、未来、三日月姫、三日月妹、酒田、零、神主で九人か。
夕子の所の大きなダイニングテーブルは最大十人、日向黒子がいれば十人だ。
能天気な性格の夕子は、まあいいかと心の中で呟いた。
神主は、しばらくいて何も変化の無いことを確認した。
「神主さん、零と同じく、慣れるまで日中は、社務所でお願い出来ませんか」
前世の未来と前世の三日月妹は零と一緒に翌日から社務所の仕事を手伝うことになる。
神主は頭を摩りながら、この流れの不安定さを懸念していた。
昼間夕子も神主もかぐや姫の処遇に頭を悩ませる。
「神主さん、三日月姫に仕事はさせられませんし、如何されますか?」
前世の未来が言った。
「私は、三日月双子姉妹の従者でござります。
ーー 転生の未来は眺めてれば良いかと。
ーー 未来、杞憂じゃ」
夕子は大きな勘違いをしていたことに気付く。
未来は、双子の三日月姉妹二人の従者だったのだ。
まだ日没には遠い晩夏の午後、ギラギラとした日差しに木々の葉が輝いていた。
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三日月未来




