第四十三話 謎のイラストの結界と封印
昼間夕子は、黒子の部屋のイラストを神主に伝えた。
翌日、東富士見町駅で神主と落ち合う約束をして携帯を切った。
夕子は飲み会のテーブルに戻り、日向黒子にその内容を告げる。
「日向、あのな、今回の不思議な出来事。
ーー あのイラストが関係しているんだ。
ーー それで、先生は、陰陽師の子孫の神主さんにお願いしたんだが・・・・・・」
「先生、それで、どうなるのですか」
「先生はな、その道の専門家じゃないから、
ーー 分からん。
ーー だけどな、できることは、お手伝いしたい」
「先生のそう言うところが生徒の人気を集めているんですね」
「こら、日向、大人を揶揄うものじゃないぞ」
零を除く全員が声を上げて笑った。
神聖学園前駅から登校中の生徒の流れが校門まで続いている。
「零、じゃあ、今夜もマンションで待っているわ」
「夕子姉さん、分かったじゃあ」
零と夕子は、書店の先のT字路で別れた。
夕子の同僚が声を掛けて来る。
「昼間先生、今のは」
「ああ、私の妹よ・・・・・・」
朝霧と星乃が夕子を庇うように口裏を合わせる。
「昼間先生の妹さん、大きくなられたわね」
朝霧だった。
「本当、時間の経つのって早いわね。
ーー 私たちもぼーとしているうちにおばあちゃんになってしまうわよ」
「星乃先生、それは、早すぎる」
と夕子が返した。
同僚の先生が先に行って三人はほっとして軽い溜め息を吐く。
放課後、日向黒子が学園の校門で待っている。
朝霧、星乃、昼間の教師三人がやって来て制服姿の黒子が手を振っている。
四人が書店近くのT字路に差し掛かった時、路地の右手側から零と神主が一緒に歩いて来た。
夕子は神主に気付き声を掛ける。
「あっ、神主さん、まだ約束の時間より早くないですか」
「昼間先生、大事なことは早めと言う主義なんです」
「神主さんに言われると納得してしまいます」
夕子はぺこりと神主に頭を下げた。
一同は、神聖学園前駅の自動改札を抜け東富士見町駅方面のプラットホームで電車を待った。
電車を待ちながら夕子が零と黒子の関係を神主に説明する。
「その日向黒子さんのイラストですが、
ーー 見てみないと判断出来ませんね」
電車が鋭いブレーキ音を響かせて東富士見町駅に到着した。
「神主さん、お仕事を終えたら、私たちと晩酌しませんか」
「お酒か、美女に囲まれたお酒も酔狂にならければいいが、
ーー あ、失礼しました。昼間先生」
「神主さんは、二度目ですね。
ーー 日向黒子さんのお部屋は初めてで分かりません」
日向が、夕子の手を引いている。
「先生、私が案内するから大丈夫よ」
「じゃあ、日向、神主さんを案内して上げて」
一同は、あとで昼間の部屋に集合することを約束してマンションの自宅に帰って行った。
日向黒子、零、夕子、神主の四人は、四階でエレベーターを降りる。
零は四階の夕子の部屋で待つことを約束して内廊下を左側に進む。
神主、日向、夕子の三人は、日向の部屋を目指しマンションの内廊下を右手側に進んだ。
昼間夕子の部屋と日向黒子の部屋はエレベーターを挟んで左側と右側の関係になっていた。
エレベーターはエル字マンションの角にあったので右側は正確ではない。
日向が先に部屋に入り、夕子と神主が外で待つことになった。
胸騒ぎを覚えて夕子も日向の部屋の中に入る。
「日向さん、どうしたの、遅いわよ」
夕子は、大声を上げながら上がり口を急いで上がる。
「お邪魔するわよ」
同じマンションの間取りは昼間の部屋と似ていた。
居間に入り辺りを見回す。
黒子が隣室の部屋の中央で倒れている。
夕子は慌てながら、神主を呼びに玄関に行くが眩暈に襲われ、その場にへたり込んだ。
神主が気付き、夕子を出迎え内廊下に引き摺り出した。
神主は、日向黒子の意識を確認して印を切り無詠唱の呪文を掛ける。
黒子は目覚め、神主に御礼を言った。
日向黒子が例のイラストを指で指している。
そのイラストの絵も神社のイラストと同じ光景が見えていた。
神主は、イラストに結界を掛けて封印を施した。
酒田を除く、朝霧、零、夕子、神主、黒子、星乃が大きなダイニングテーブルの席に着席した。
神主が口を開く。
「理由は分からんが時空が歪んでいる。
ーー 昼間先生の眩暈も黒子さんの気絶も、
ーー それが原因の可能性がある」
「じゃあ、神主さん、あの部屋は危ないのですか」
と黒子。
「いいえ、日向さん、そうは言っていない。
ーー 多分、イラストの悪戯だろう」
「神主さん、イラストは、どうなりますか」
星乃だった。
「星乃先生、結界と封印でとりあえずは大丈夫ですが、
ーー 未知の領域なのでなんとも、
ーー 効力の時間差を考えれば・・・・・・」
「神主さん、何ですか」
「昼間先生、日向さんは今夜、
ーー この部屋で零さんと一緒にいるのが一番安全かもしれない」
零が黒子を見て瞳がキラキラに輝いている。
「黒子、零と今夜は一緒じゃから安心じゃよ」
「零、私もあなたと一緒がいいわ」
朝霧が口を開く。
「神主さん、そのいい加減、危ないイラストですが
ーー 処分出来ませんか」
「朝霧先生、そんなーー 簡単に処分出来れば、
ーー だれも苦労しませんよ」
夕子が神主の言葉を聞いて、神主の盃に地酒を入れた。
神主に夕子は盃を準備していた。
零は、盃を見て言う。
「懐かしいのう」
夕子は、零にも盃を渡した。
イラストの処分問題が宙に浮く中、玄関のチャイムが鳴った。
夕子がインターホーンを覗き酒田を見て玄関ロックを外した。
「酒田さん、遅いわね」
酒田は、朝霧と神主の間の席に着いた。
「夕子さん、本当に独身者ですか?
ーー このダイニングテーブル八人用ですよね」
「酒田さん、このテーブルは十人用なのよ」
「そんなに大きなテーブルがなんでここに」
「無意識の判断よ」
酒田は、持参した日本酒の地酒を夕子に手渡した。
「酒田さん、この世界の未来は分からないのよ」
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三日月未来




