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第四十一話 零の処遇は女神次第

 (みかど)の前世を持つ酒田の退行催眠が無事終えた。

時空は依然(いぜん)として不安定だった。


 夕子(みらい)星乃(けい)朝霧(みかづき)の三人はメモを酒田に見せる。

酒田は、その不思議な文字の羅列(られつ)に困った顔をするだけだった。


 神主が零を見て三人のメモを零に見せた。

零が微笑んで神主に言う。


「これ祝詞(のりと)じゃ。

ーー じゃが耳にしない響きが並んでおるのじゃ」


 零は、祝詞の読み方を酒田に教えた。


酒田が、詠唱を覚えるのに数日の時間が必要になった。




 昼間夕子は、今までの展開の気になることに気付く・・・・・・。

神主の言葉では、前世の妹と、その生まれ変わりが、同じ時空に存在していると言う。

では、前世の未来の妹である零の生まれ変わりは誰なのか?


 ヒメか、ヒメの妹の真夏か、日向黒子か、白石陽子かと、考えているうちにはっとする。

この四人の中で強い出逢いが起きていた生徒は一名しかいない。


 日向黒子との出逢いを夕子は強烈に感じていた。


 夕子の部屋のダイニングには、いつもの四人と零がいた。

酒田が神さま召喚に成功すれば零は前世の時代に帰らないで済むことになる。


星乃(ケイ)、あとは酒田(みかど)次第ね」


「でも、神さま召喚して本当にいいの」


「いいわけないけど、零だって好きで、この世界やって来た訳じゃないでしょう」


夕子(みらい)、話が前後するけど、あのイラストを書いたのは夕子のお父さんよね」


「それが母の話では、あのイラストを書いた時、

ーー 父は()()()()のような勢いで書いていたとか言ってたわ」


夕子(みらい)、そんな重要な手掛かり、

ーー 今、初めて聞いたわ」

星乃(ケイ)はそう言うと腕組みをして考え始める。




 朝霧(みかづき)が夕子の話を受け継ぎ整理を始めた。


「つまり、次元扉のあるイラストは、自動書記で書かれた。

ーー 零は、そのトンネルから現世(うつしよ)に辿り着く。

ーー その現世(うつしよ)には、零のいた時代の前世を持つ四人がいる。

ーー おそらく、零自身の生まれ変わりもいる。

ーー こんな感じかしら」


「私も朝霧の整理でいいと思う。

ーー ただ、直感だけど、零の生まれ変わりは、・・・・・・。

ーー 日向黒子じゃないかしら。

ーー 私が赴任して来る時、黒子と偶然会って、

ーー その後も何度も会ったわ」


夕子(みらい)、多分、あなたの話に強い(きずな)を感じるわね。

ーー それで辻褄(つじつま)が合いそうね」


「私も星乃(ケイ)と同じよ」

朝霧が答えた時ーー 零が夕子に尋ねた。


夕子(みらい)姉さん、あたし、あたしの生まれ変わりに会いたい」

「零、でも、それ危なくない」


「会いたい・・・・・・」

「じゃあ零、神主さんに相談してみようよ」


 今日の零は、夕子の黄色のワンピースを着ていた。

現世(うつしよ)に慣れたようでポニーテールと服装がよく似合っている。


「零ちゃん、お姉さんのワンピースが似合うね」

酒田(みかど)は、()め上手で現世(うつしよ)も変わらぬ」


 零の言葉に全員が笑い出す。




その時だった。

精霊が囁く。


()()()()()()()()()()()


 零を含め全員に電気が走ったような衝撃を受けた。


結局、この日も夕子宅に全員が宿泊することになる。


 酒盛りは終わらず続いている。

翌朝、星乃、朝霧、酒田は自宅に戻り着替えることにした。




 零を一人に出来ない夕子は零を神聖学園に連れて行くことに決心する。


 零も大分慣れて電車にも乗れるようになった。

酒田以外の教師三人と零は学園に到着する。


 星乃、朝霧、夕子の三人が交代で零を見守り放課後、零と一緒に神社へ行く。

神主は、星乃の想像通り零と黒子の接触に反対している。

酒田が遅れてやって来た。


「酒田、詠唱出来るようになった」


「うん、多分・・・・・・」

「じゃ、やってみよう」


「夕子、あなた、本当に大胆な人ね」

 三日月の姉である星乃が呆れながら夕子に言った。


「だって、今より悪くなることないでしょう」

「そうだけど、相手は時空そのものよ。

ーー 安全が担保されていないわ」


 夕子は言葉を失い掛けて零を見つめる。

零が小さく(ささや)く。

「姉さん、ここにいたいのじゃ・・・・・・」


 神主も零の言葉に弱り果てた時、

ーー 酒田の顔色が変わって突然、祝詞(のりと)詠唱(えいしょう)()み出した。




 時空が更に(ゆが)み始めた。


 酒田は、自分以外の力に憑依(ひょうい)されていた。

陰陽師(おんみょうじ)すら酒田を止められない。

そして時空の(きし)みが消えた時、空間から女神の姿をした女性が現れる。


 幾枚もの薄い緑色の羽衣に包まれた女神は笑みを浮かべ空間に浮いていた。


「どなたかな?呼ばれたようじゃが」


 昼間夕子が女神に向かって事情を説明した。


女神が答えた。

「この世界は、元々が仮想空間じゃから矛盾に大きな問題は無いのじゃよ。

ーー 善悪とは、人の意識次第じゃから

ーー 良くも悪くもなるのじゃが・・・・・・。

ーー 空間の歪みは神の仕事じゃから」


 女神は、そう言うと、陰陽師と帝と零を見た。

「この子が迷い人じゃな。

ーー 向こうでは神隠しになっているじゃから問題ない。

ーー 陰陽師(おんみょうじ)よ。世話をしてやれ」


 夕子が女神に本題を切り出した。

「生まれ変わりの自分と前世の自分が会ってもいいのでしょうか」


「鏡を見ても問題ないじゃろ。

ーー ここは神々の創造の仮想空間じゃからな」

 女神は夕子に答えを与えて、消えて光になった。




 零は大喜びで神主に挨拶(あいさつ)をする。

陰陽師(おんみょうじ)さま、私、零をよろしくお願いします」


 陰陽師である神主は女神の命令には逆らえず零の後見人になった。

現世(うつしよ)の知識が皆無な零の選択肢は巫女(みこ)だけだった。


 零の風貌は夕子に似た容姿の美人だった。

零は夕子のマンションと神社を往復する日々の中にいた。


 自分自身の生まれ変わりの日向黒子とは、まだ会っていない。




夕子(みらい)、あれから零ちゃん、どうなったかしら」

朝霧(みかづき)、神社で巫女(みこ)をしているわ」

夕子(みらい)の言葉に星乃(ケイ)が満面の笑みを浮かべた。


 夕子(みらい)たちは、東富士見町のスーパーマーケットで晩酌の準備をしている。

陽が傾き掛けても残暑の熱が東富士見町のアスファルトに反射していた。

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三日月未来(みかづきみらい)

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