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第三十九話 イラストと謎の巫女の正体

 翌日の早朝、神社の境内(けいだい)の掃除を担当している巫女がーー 大慌(おおあわ)てで社務所の奥に駆け上がって陰陽師を呼んだ。


「どうした! 騒々(そうぞう)しいぞ」


境内(けいだい)の中央で巫女が横向きに倒れていました」

「それは大変だ。

ーー 分かった、直ぐに行こう」


 神主と巫女が一緒に現場に駆け付けた。

 巫女衣装の女性が右手を伸ばしたまま、右腹を地面に向けて倒れていた。

白い着物に赤い(はかま)の巫女の装束は乱れていない。


(一般的には、白衣(びゃくえ)緋袴(ひばかま)と呼ばれている)


 陰陽師の神主が巫女装束の女性の呼吸を確認する。

微かな呼吸を読み取って陰陽師は印を結び詠唱を囁くように繰り返す。


 倒れていた巫女を神社のスタッフが奥座敷に運ぶ。



 ほどなくして巫女が意識を回復するのだが・・・・・・。


 神社の巫女もスタッフも、この女性を知らなかった。


 陰陽師である神主は、時が来たことを悟った。


 巫女が目覚めて叫んだ。


「ここは、どこじゃあ。

ーー 帝は無事か。早うせぬと大変じゃ」


 神主が巫女の言葉に耳を疑う。


「あなたは、どうして神社の境内に倒れていたのですか」


「分からぬじゃ

ーー ただ、境内(けいだい)の血痕を見て・・・・・・眩暈(めまい)を感じたのじゃ」


 神主は事態の流れに、ある推論を思いつき心の中で呟いた。

『倒れていた巫女は、何らかの原因で、この神社に飛ばされている。

ーー そして、イラストの血痕との共通点も浮かび上がる。

ーー 血痕が、誰のものかはわからない。

ーー 大昔に、この神社の境内で何か重大な事件が起きたことは確かだ』


 陰陽師である神主は、おもむろに両腕を組み替えて顎を(さす)る。

神主の癖だった。


 この巫女が全ての鍵を握っている。

神社と巫女と帝の繋がりがはっきりしない。

糸口であることは間違いないようだ。




 神主は胸騒ぎを覚えて昼間夕子に連絡を入れた。

「もしもし、昼間先生ですか?

ーー 神社の神主ですが、ちょっと気になることがあって」


 神主が言い掛けた時、夕子が矢継ぎ早に前日の出来事を話した。


 神主は、時空事件とイラストの超常現象と

ーー 今朝の巫女が脳裡で重なり狼狽(うろた)えた。


「もしもし、神主さん、大丈夫ですか?」

「昼間先生、そのイラストに触れないようにしてください」


「意味が分かりませんが」

「おそらく、これまでの事件と関係しています。

ーー 酒田さん、星乃さん、朝霧さんにも伝えてください」


「酒田さんには、電話しておきます。

ーー 星乃と朝霧には、あとで伝えます」


「じゃあ、昼間先生、あとでお会い出来ませんか」

「私は、いいですが」


「そのイラストが気になります」

「じゃあ、神主さん、私の自宅のイラストを見てもらえないでしょうか?

ーー 薄気味悪くて」


「分かりました。

ーー 昼間先生、明日の夕方でよろしいでしょうか?」


「神主さん、東富士見町駅の改札口に十六時で如何(いかが)でしょう。

ーー 酒田さん、星乃さん、朝霧さんも同席しますが・・・・・・」

「昼間先生、では、明日」



 神主は、電話を切ると奥座敷のイラストに封印を行った。

横になっていた巫女姿の女性が消えている。


 イラストの前に行くと、イラストの絵の中に倒れていた巫女を発見した。


「そんな馬鹿げた話があるか」


 神主はイラストの封印を始める。


 社務所の蛍光灯が大きく揺れて空間が(ゆが)んでいる。

神主は覚悟を決めながら無詠唱(むえいしょう)で続けた。

大きな揺れが静かになり、消えた女性が座敷に元に戻っていた。


 二次元空間などゲームの御伽噺(おとぎばなし)の世界でしかない。

神主は、元に戻った巫女姿の女性に聞く。


「ここで何が、ありましたか?」

女性はイラストを指で示す。


「あの絵、()()()()()()()()()()

ーー 触ったら、絵に吸い込まれたのじゃ。

ーー 神主に感謝じゃな」



 翌日の夕刻、昼間、星乃、朝霧、酒田の四名が東富士見町駅自動改札で、神主の到着を待っていた。


 昼間夕子は、神主の訪問に合わせて、酒と食材を前日に用意した。


 神社の神主がやや遅れて到着した。

一同は、やや勾配のあるマンションへの一本道を進む。

道は平坦に見えても坂道と変わらない。


 星乃が一階の部屋に神主を招き入れた。

続いて、二階の朝霧の部屋、三階の酒田の部屋と続いた。


「酒田さんの部屋、本当に僻地(へきち)にあるのね」

「昼間先生のところが良すぎるだけですよ」


 神主は疲れた様子をも見せずに昼間先生の部屋に入る。

神主は(わず)かな時空の(ゆが)みを感じ結界を施す。

他の部屋と違いパワーがまるで違う。



 神主がイラストのある部屋に移動した時のことだった。

その部屋の異常さの違いを感じた。


「神主さん、ここどこじゃ?」

 境内で倒れていた巫女姿の女性が夕子の部屋に瞬間移動している。


「神主さん、この女性誰ですか」

「大昔から次元スリップして来たらしい」


 神主はイラストに封印を施したあと、昼間夕子に聞いた。


「この絵だけ、違うが」

「このイラストは父が書いたイラストと聞いていますが・・・・・・。

ーー 下書きの絵です」


 部屋に現れた見知らぬ巫女姿の女性が指で夕子を示した。

「未来、久しぶりじゃ」


次に朝霧だった。

「三日月の妹、久しぶりじゃ」


今度は星乃だった。

「三日月の姉、生きておる」

巫女は星乃に抱きつき泣きじゃくる。


巫女が酒田を見た瞬間、床に額を付けて平伏(ひれふ)した。

「帝さま、ご無事で何よりでござります」


神主は、この巫女装束の女性が大昔からーー 次元スリップをした者であることを確信する。

「未来の御伽噺(おとぎばなし)、面白いのじゃ」


精霊が囁いた。

[その巫女、未来の妹]


 精霊の声を部屋にいる全員が聞いていた。


 昼間夕子は、死ぬほど驚いていた。

 目の前に前世の妹が命懸(いのちが)けで姉に会いに来ているからだ。


「あなたのお名前は?」

「未来の妹」

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三日月未来(みかづきみらい)

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