第三十六話 終わらない美人教師の飲み会
翌日の放課後、昼間夕子は、文芸部の部室で、日向黒子、夢乃兄妹と会っていた。
星乃紫、朝霧美夏も同席している。
「ヒメ、お前、三人を追いかけていた夢の話をしていたな。
ーー 今は、どうなんだ」
「先生、あの時空事件以来、見ていないんです。
ーー 何かが変わってしまったような」
「先生はな、あの事件以来、私たちの繋がりのミステリーを考えているんだ。
ーー 明日の学校の帰りにみんなで神社に寄って見ないか。
ーー 何かが分かったところで何も変わりはしないが、
ーー 奥歯に物が挟まっている感じがどうもな」
「先生、それは僕も真夏も同じです。
ーー でも時空の落とし穴、大丈夫ですか」
「神主が、結界を修復したというから大丈夫じゃないかと思っている」
日向黒子が手を上げて昼間先生に質問をした。
「日向、珍しいな」
「私、あの神社、前から気になっています。
ーー だから、早く真相が知りたいと思います」
「黒子先輩、真夏も同じ意見です」
「そうか、そうか、みんなも乗り気か、
ーー じゃ、明日の放課後に神社に寄ろう」
ずぶ濡れの白石陽子が部室に飛び込んで来た。
「どうした白石・・・・・・」
「急な遠り雨で、傘を取りに学校に戻ったんですが、
ーー 今は、小雨になっています」
「そうか、雨雲レーダー見てから考えよう」
「先生、あと三十分くらいはダメみたいです」
「じゃあ、ヒメの言う通りにして部室で待機して、
ーー 雨宿りをしよう」
夕焼けの日差しが部室のガラス窓を赤く染め始めた。
夕子は背伸びをしながら、白石に声を掛ける。
「もう大丈夫だな」
「先生、ありがとうございます」
白石が部室から消えたあと、夕子たちも部室をあとにした。
学校の玄関前は驟雨のあとが残っている。
「日向、ヒメ、真夏ちゃん、明日は晴れそうだな」
「まだ、秋の入り口よ」
星乃の言葉を聞いて昼間は、晩酌を考え始めた。
昼間の表情を察した、朝霧が夕子に聞いた。
「昼間先生、今日も東富士見町スーパーに寄りますか」
夕子は愚問と言いたげな表情を浮かべて星乃を見る。
星乃も当たり前でしょうと言う表情を浮かべ、夕焼けが彼女の頬を光らせていた。
「じゃあ、東富士見町に着いたらね・・・・・・」
「先生たち、東富士見町で何かあるんですか」
「いやなあ、大人には大人の事情というのがあるんだよ」
ヒメの横で真夏と日向が苦笑いをしている。
駅前通りの歩道を六人は一緒に歩いた。
「先生、私は、本屋に寄りますから、ここで失礼します」
「そうか、日向、じゃあ明日な」
「はい、先生、さよなら」
「日向、さよなら」
夢乃兄妹と神聖学園前駅で別れた教師三人は東富士見町スーパーに寄った。
「あら、酒田さん、早いじゃない」
「ええ、今日は、仕事が早く終えて、晩酌の準備をしに来ました」
「じゃあ、今夜も私たちと付き合いなさい」
「昼間先生、そうなると強引だからね」
「そうよ、あなたには拒否権は無いのよ」
「夕子先生、あまり酒田さんを虐めると可哀想よ」
「星乃先生、ありがとうございます。
ーー 昼間先生の暴走を止めれるのは、星乃先生と朝霧先生だけですから
ーー ところで、今夜のおつまみは、秋刀魚の塩焼きにしませか?」
「いいわね、酒田さん」
「朝霧先生、ありがとうございます」
昼間夕子は、地酒の一升瓶を手に取り迷っている。
星乃が、指で示した。
「昼間先生、私は、こっちが好きよ」
「そうですよね。こっちですね」
夕子たちは、レジを済ませマンションへの一本道を四人で歩いた。
陽が大分傾き東の空が紫色に染めている。
「最近は、星もあまりよく見えないわね」
朝霧美夏の独り言。
酒田が空を見上げて言う。
「朝霧先生、一番星が見えていますよ」
「・・・・・・」
前日と同じく、酒田は三階で降りて自宅に一旦戻る。
三人は、夕子の部屋に直行して上がった。
夕子たちはレジ袋をキッチン台に置き、飲み会の準備を始める。
しばらくして、酒田が夕子の部屋を訪問して朝霧先生が玄関に出る。
「酒田さん、上がって」
酒田は朝霧の言葉に従いダイニングルームに通されて違和感を感じた。
「あの例のイラスト、なんか波動が怪しくないですか?」
「酒田さんの気のせいよ」
「昼間先生、あのイラスト、特殊かも知れないわ」
「星乃先生まで、怪談噺は困りものね」
朝霧がテーブルにおつまみとビールグラスを並べている。
夕子も手伝っていた。
「じゃあ、そろそろ飲み会を始めましょうか」
夕子の声を皮切りに四人はビールを注ぎビールグラスを持ち上げた。
「乾杯ーー 乾杯ーー 乾杯ーー 乾杯」
グラスの音が重なり、四人はビールを飲み干す。
「次は、地酒ね。今日は岩手県の地酒よ」
「星乃先生は、地酒で観光旅行しているみたいね」
「そうよ、朝霧先生、私が地酒が好きな理由よ」
酒飲みは口実を重視する種族なのだ。
大義名分が酒と言う罪悪感を解放してくれる。
「そうね、伏見も、奈良も、灘も、そして静岡も美味しいわね」
「昼間先生は、さすがだな、お酒って歴史と無関係じゃ無いのよね。
ーー 加賀藩のあった石川県の地酒にせよ、
ーー 新潟の地酒にせよ、他の地域の銘酒にせよ、
ーー そこにある共通は、大きな城下町があったことよ」
「そうね、星乃先生、いや、ケイ」
夕子は思い出したようにニックネームに戻した。
「夕子、今夜は、明日のことを考えて見よう」
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三日月未来




