第三十一話 書店で待ち合わせ!
注意: 昼間夕子、朝霧美夏、星乃紫の三名の氏名の上にある振り仮名は前世名であり、現在のニックネームとなっています。
朝霧と星乃は前世の双子の姉妹の三日月だった。
姉が星乃で、妹が星乃、星乃はかぐや姫のモデルだったため、現世ではケイと呼ばれている。
昼間の前世は三日月妹の従者で未来と呼ばれた作家だった。
※話によっては、ルビ振り仮名を多用しています。とかく読みづらくならないように。
朝霧美夏と星乃紫の二人は、翌朝、同じマンションの自室に戻る。
「夕子、じゃあ、あとで玄関でね」
「分かったわ、美夏、紫」
昼間夕子は白いジーンズとブラウスに着替えてマンションの玄関に降りた。
真夏たちとの待ち合わせ時刻には、まだまだ余裕がある。
「美夏、紫、お待たせしました」
「夕子、本当にホワイトジーンズね」
朝霧美夏はブルージーンズで星乃紫はアイボリーのジーンズを着用していた。
三人とも青空のように明るい無地のブラウス姿だった。
「無地のブラウスは場所を選ばないから便利よね」
「美夏の言う通り、無難がピッタリよ」
「そうかしら、夕子、私はあまり賛成出来ないわ」
「じゃあ、紫は何がいいのかしら」
「と言うより、ブラウスってヘビロテ感がある気がするわよ」
「確かに無難だから、気付くと毎日同じパターンね」
三人は、東富士見町駅前に出て、空腹を覚えた。
「昨夜、飲み過ぎた割には食欲があるわ」
星乃紫の言葉に朝霧美夏が反応する。
「じゃあ、まだ時間もあるから、そこの喫茶店で軽食を食べましょうか」
「夕子に、賛成」
星乃紫が同意して、朝霧美夏も従う。
前世の双子の姉妹の星乃紫と朝霧美夏は意見がピッタリ合う。
昼間夕子が二人を先導して駅前のスーパーにある[プレリュード]と言う名前の喫茶店に移動した。
「夕子、まだ待ち合わせには時間があるわね」
夕子は、念のためにスマホの時刻を確認した。
「正午、ちょっと過ぎだから、余裕よ、美夏」
星乃紫は、喫茶店の入り口脇のおすすめメニューを見ている。
平日ならランチタイムの時間で混雑しているお店も休日で人の姿が少ない。
スーパーの出入り口は対照的に人の出入りが多かった。
「夕子、軽く食べたらすぐに移動するから、私はサンドイッチにするわ」
「紫、私もそうする」
隣で朝霧美夏が親指を立てて賛成した。
三人は、プレリュードで軽食を済ませて東富士見町駅に向かう。
夕子、朝霧美夏、星乃紫の三人は、駅の自動改札に通勤定期をタッチして二番線から電車に乗車した。
隣の神聖学園前駅にはあっと言う間に到着。
星乃紫と朝霧美夏が、夕子に御手洗いに行くことを告げ、昼間夕子も付き合うことになった。
「コーヒーは失敗ね」
「利尿作用を度外視していたわ」
星乃紫と朝霧美夏が反省しているが昼間夕子も同じだった。
「じゃあ、仕切り直しして、待ち合わせ場所に移動するわよ」
「夕子、気合い入りすぎじゃない」
「美夏、そんなことないわ。雨天順延なのだから」
「そうよ、美夏、雨天順延ね」
「紫まで」
朝霧美夏は、言葉遊びを楽しんでいる。
「みんな、聞いて、念のため、隠語禁止よ」
未来である昼間夕子が朝霧美夏と星乃紫に注意した。
神聖学園前駅から伸びる大通り脇の左側の歩道を三人は並んで進んだ。
書店の入り口があるビルはすぐだ。
「昼間先生、今、何時!」
「だいたい、待ち合わせの十五分前くらいよ。朝霧先生」
「じゃあ、間に合うわね」
「余裕で、セーフよね」
夢乃兄妹の妹の真夏と兄の神姫が昼間夕子の後ろから声を掛けて来た。
「先生!先生!」
昼間夕子が振り向く。
「あら、真夏っちゃんとヒメ」
「昼間先生、こんにちは。
ーー先生たちの後ろ姿が見えて、尾行していたのよ」
「こら、あまりおいたはしちゃいけないわね」
「朝霧先生、怖い」
星乃も朝霧に同意している。
「まあ、先生たち、生徒の悪戯ですから、その辺で」
五人は、無駄口を叩いているうちに書店入り口に到着。
日向黒子が文庫本を片手に持って昼間先生を待っている。
「日向、早いなあ」
「昼間先生、こんにちは」
「書店、寄っていたから」
「そうか、日向は本が好きだね。
ーー そうだ、みんな悪いけど、ちょっと先生、本を見に行ってもいいかな?」
「先生構わないよ」
「じゃあ先生、ちょっとだけ、中を覗いて来るから」
朝霧先生と星乃先生は、昼間先生の魂胆を知っていたから苦笑いしている。
「先生たち、なに笑っているの」
「ヒメ、ちょっと思い出しただけよ」
「そうなんですかね。怪しいな」
「子供は、あまり詮索なんて覚えちゃダメよ」
「そうだよ、ヒメ兄、詮索はよくないわよ」
日向黒子は、マイペースで手にしている文庫本を読んでいる。
「日向さん、何読んでいるの」
「星乃先生も知っている、ベストセラー作家の黒猫探偵物語の最新作です。
ーー やっと文庫本になって購入しました」
「黒猫探偵のシリーズって、面白くて人前で読むと吹き出さない」
「ええ、笑いを堪えるのに苦労する時があるわ。
ーー だから、ある意味、禁書レベルです」
日向黒子は、珍しく笑っている。
その頃、昼間夕子は、いつもの古典コーナーで、実店舗のエゴサをしていた。
ステルス作家、朝霧美夏夕子の顔を知っているのは、ごく僅かだった。
「先生、ここで何されていますか?」
「あら、酒田さん、偶然ね」
「酒田さんこそ、ここで何をされていますか?」
「先生、ご挨拶ですね。僕は仕事で此処に来ています」
「じゃあ、時間ないわね」
「いいえ、仕事はもう終わりました」
「これからね、生徒たちと神社に参拝するんだけど、良かったら来られますか。
ーー 但し、私のペンネームは秘密よ」
月影ノベルズの酒田昇二十四歳は|昼間夕子《夕子》の担当者だった。
背丈は百七十五くらいでスリムな体型に切れ長の大きな目が特徴で髪の毛は黒茶、一般に言うイケメン顔だ。
昼間夕子は入り口で待っている生徒と同僚に酒田を紹介した。
「さっき、偶然出逢った、昔の知り合いの酒田さんです」
「はい、酒田昇です。神社までお付き合いさせていただきますが、
ーー みなさん、よろしいでしょうか?」
星乃紫先生が珍しく酒田昇に言葉をかける。
「酒田さん、よろしくお願いします」
星乃先生の珍しい対応に朝霧先生と昼間先生は顔を見合わせた。
「真夏ちゃん、さあ、行こうか」
夕子の声に、七人は神社への道を歩き出した。
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三日月未来




