第二十一話 もうひとりの三日月は同じ棲み家に
昼間夕子は神社の境内で声を聞いた。
その時、また風が吹き、目の前の星乃先生の長い髪がはためく。
夕子は、星乃の首筋にできた痣をキスマークと思った。
朝霧美夏は、痣を見逃さなかった。
「星乃先生、そのうなじの痣は?」
「朝霧先生、キスマークとよく誤解されるのですが」
「いいえ、誤解していませんわ」
「生まれた時からあるのーー この神社も夢で見て寄ってみてのよ」
夕子が朝霧先生と自分の痣のことを星乃先生の耳元で話した。
「星乃先生、良かったら、このあと私たちとご一緒してもらえませんか」
「ええ、今日は、時間あるからご一緒しますわ」
夕子たちは、神社で参拝を済ませたあと、夢乃真夏を神聖学園前駅に届け見送った。
さすがに生徒の前で話せる内容ではなかった。
三人は何処に行くか考えあぐねていた時、星乃先生が提案する。
「先生たち、良かったら、私の自宅は如何ですか?」
「先生の自宅?お邪魔じゃないかしら?」
「構いませんわ」
三人は電車に乗り東富士見町駅で下車をする。
「あら、先生、私たちと同じ駅じゃないですか」
夕子と美夏の直感が[まさか]を感じる。
「星乃先生、まさか、あの建物ですか」
「そうだけど、まさかってなんですか?」
「実は、私たちも今日分かったのですが」
夕子が美夏の言葉に驚く。
「え、朝霧先生も、このマンションなの?」
「昼間先生に言いそびれちゃって」
星乃先生が夕子と美夏に尋ねた。
「ちなみに先生たちは何階ですか」
「私は、四階よ」
「じゃあ、昼間先生はエレベーターねーー 朝霧先生は?」
「私は、二階だからいつも階段よ」
「なるほど、すれ違いね」
「星乃先生は、何階ですか」
「私は、一階よ」
夕子と美夏は顔を見合わせながら、星乃先生の部屋に入る。
美夏が口を開き星乃先生に痣を見せながら説明した。
「星乃先生の痣と似ているわね」
「私は痣があることは知っていますが、自分じゃ見えない位置なの」
美夏と夕子がコンパクトを取り出して合わせ鏡をして星乃紫に見せた。
「星乃先生、携帯貸してください」
「何するの?」
「お写真をお撮りしますーー そして、見て頂きたいの」
朝霧がシャッター押し、星乃先生に見せた。
「あら、そっくりね」
「星乃先生、偶然じゃないわーー 前世の契りの跡なの」
星乃紫は言葉を失う。
「・・・・・・」
「実は、最近、変な声をよく耳にするようになったの」
夕子が尋ねた。
「まさか、見つけてですか」
「ええそうよ」
「それだけじゃないの?」
美夏が口挟む。
「三日月と未来のお話ですね」
「朝霧先生、なんでわかるの」
「私たちが、三日月と未来だからです」




