第十九話 かぐや姫と三日月
そうだ、三日月の会話をイメージして暴走させれば、ヒントがあるかもしれない。
夕子はパソコンの前でうとうとしながら眠りに落ちた。
「お姉さま、三日月でございます」
「三日月、何かご用か」
「いいえ、ご用はないのですが」
「じゃあ、なんじゃ」
「お姉さまの、ご様子が心配で・・・・・・」
「心配することはありませんわ」
「でも、お食事を食べておられないのは」
「食べたい気分ではなかったのじゃ」
「三日月は、お姉さまのーー お傍にいたいと思いますの」
「三日月、好きにすればいい・・・・・・」
双子の妹の三日月は、この日を境にかぐや姫の従者となった。
三日月妹の従者には、未来がいた。
かぐや姫は、それから三十日後に息を引き取り、帝は箝口令を出した。
同時に作家を呼び御伽噺を書かせる。
その作家の名前が三日月妹の従者の未来だった。
夕子は眠りから目覚めて、今見ていた大昔の夢を思い出し、原稿を完成させた。
翌日、昼間夕子は、同僚の教師朝霧美夏を自宅に呼ぶ。
ドアがノックされて夕子は美夏を部屋に入れた。
「お邪魔します」
「美夏、素敵な色のワンピースね」
「あまり、ワンピースは着ないの。
ーー どちらかと言うとパンツ派よ」
「今日は、ポニーテールじゃないのね」
「シャワー浴びてーー 時間なかったから、セミロングのままにしたのよ」
美夏は、ピンヒールの靴を脱ぎながら、薄い水色のワンピースの裾を翻した。
「それでね、昨夜、原稿の下書きを書いて見たのよ、美夏」
「それを見せてくれるのね」
夕子は、テーブルの上に置いたノートパソコンを開いて美夏に見せた。
三日月の顔色がどんどん変わってくる。
「これ、どうしたの?」
「書き始めて、すぐにうたた寝して夢を見たの」
「半眠状態の覚醒夢ね。
ーー つまり潜在意識とのコンタクトとしたら、凄いわよ」
「よく分からないけど、その夢の中では、かぐや姫、三日月、未来がいて
ーー かぐや姫の双子の妹は従者だったの、そして三日月の従者は未来だったの」
「夕子、二人の従者の謎解きと御伽噺の発端も解けたわね」
「美夏、でも、かぐや姫の転生者は、まだ見つかっていないのよ」
「結局、そこがミステリーになるわね」
「神聖学園の生徒の中にいる気がすると思うの」
「じゃあ、二人で探しましょう」
「美夏、どうやって・・・・・・」
美夏は、夕子が出したアイスティーを飲みながら、夕子の部屋を眺めた。
「夕子、あのイラストは?」
「父が漫画の依頼を受けて書いていた時の下書きのイラストよ」
「その絵の神社は、何処かしら」
「モデルは、陰陽師の子孫がいる神社よ」
「ここから近い?」
「学校から近いわ」
「じゃあ、夕子、私をそこに連れて行ってくれる・・・・・・」
「美夏、着替えるから、ちょっと待ってくれる」
昼間夕子は薄紫色のワンピース姿になった。
「夕子、常世の国を連想しそうな素敵な色ね」




