第十七話 かぐや姫の真実
三日月、どうしても分からないことがあるの?
それは、朝霧先生の声と三日月の声が一致しないことなの。
昼間夕子は朝霧美夏の瞳の奥をじっと見つめながら話している。
「声ですか・・・・・・よく分からないけど、
ーー あれじゃないかしら」
「あれって・・・・・・」
「つまり、もう一人の自分じゃないかしら
ーー 前世の意識があるように、内なる声が聞こえても不思議じゃないでしょう」
「ん、眠くなって、眠りに落ちる前に、聞こえる
ーー あれかしら」
「そうね、似ているけど、外れよ
ーー だって、はっきり覚醒しているのに聞こえるわけでしょう」
「もしかして、精霊?」
「夕子、精霊は、無いと思うわ」
朝霧は、夕子を未来と呼びながら否定した。
夕子も三日月と呼び返す。
「美夏、これから私たち、どうなるのかしら」
「夕子、まだまだ、知らないことが沢山あるわ」
「知らないことですか」
「ええ、そうよ。知らないことよ」
「かぐや姫の契りのことですか」
「それもあるわ
ーー もっと大事なことを夕子は知っていると思うの」
夕子は、思考を巡らせてみた。
「もしかして、かぐや姫のこと」
「そうね・・・・・・」
「まさか、三日月とかぐや姫のこと」
「うん、いい線かもね・・・・・・」
「夕子は、小説の中で書いているじゃない?」
「かぐや姫の真実のこと」
「それよ・・・・・・」
「でも、あれは、小説よ」
「夕子の無意識が書かされていたと考えると
ーー どうなるかしら」
「そんなこと、考えても見なかったわ」
「地上を闊歩している人間の意識だけの世界じゃないと思うわ」
「三日月、よく分からないわ」
「空間には、現世から消えてしまった魂の意識が生きているのよ」
「・・・・・・」
「その意識が悪さして人に憑依する話を聞いたことある?」
「ええ・・・・・・」
「そして、その逆もあるのよ」
「逆ですか」
「空間にいる意識が憑依せずにコンタクトを取るのね」
「なるほどーー チャネリングに似ているわ」
「チャネリングは特殊な才能だけど、誰でも空間からヒントをもらうことがあるわね」
「ひらめきのことですか」
「そうね、ひらめきの正体は・・・・・・。
ーー 前世の自分だったり、来世の自分だったりの場合と・・・・・・」
「自分が自分を助けるわけ?」
「元々、時間も生死も人間が考えた概念ですから、
ーー さまざまな矛盾が起こるのよ」
「それで、小説かぐや姫のことが・・・・・・」
「夕子は、空間から沢山のかぐや姫の情報を受けているはずよ」
「確かにペンが勝手に暴走する時が、何度かあったの
ーー 一字も書けない時とは対象的に」
「夕子は、かぐや姫の真実を知っているわね」
「私がコンタクトを受けて書かされているということ」
「真実は、その中にあるわーー きっと・・・・・・」