第十五話 昼間夕子と朝霧美夏
文芸部部長の日向黒子がプールサイドに立ち、腰を落とし足に水をかけた。
日向の様子を見て、副部長の白石が続き、真夏も真似をした。
「川神さん、山白さん、気持ちいいよ」
「真夏、ありがとう」
川神だった。
昼間夕子と朝霧美夏も足に水をかけている。
「気持ちいいね。朝霧先生」
「そうね、今日はお天気良くて良かったですね」
神聖学園の五十メートルプールは八コースある公認プールだった。
入れ替えたばかりの水は透明でキラキラと日光を反射している。
二人の教師は、足湯ならずの足水をしながら生徒を見ていた。
ヒメは、プールサイドに横になって日焼けをしている。
妹の真夏がやって来た。
「ヒメちゃん、水が気持ちいいよ」
「真夏の気持ちいいよわねーー分からん」
「そんなことないよ」
夕子がやって来た。
「ヒメ、プールに入らないのか」
「先生、まだ、日光浴していたいので」
「プールサイドは、日焼けオイル禁止になっているからな」
「先生、そんなの持って来ていませんよ」
ヒメはうつ伏せになりながら、夕子を見上げた。
「先生も、横になると気持ちいいですよ」
「私は、リクライニングのが似合っているからな」
夕子は、ヒメの二の腕の裏側を見ていた。
[私の痣は左腕で、同じなら、そのあたりか?]
と心の中で呟く。
[変だな・・・・・・ヒメじゃあないのか]
傍にいた真夏を見てみたが痣は見当たらない。
[日向か?]
朝霧先生が、プールサイドで声を掛けている。
「みんな、ちょっとプールサイドに上がって休憩よ」
夕子が呟く。
「なるほど、休憩があるんだ」
朝霧先生は、ストップウオッチで時間を管理していた。
日向黒子がプールサイドに上がり、夕子の前に座った。
背中越しに日向の二の腕を見るが白い肌が見えるだけだった。
夕子の思惑は、悉く外れた。
「じゃあ、みんな、またプールに入ってもいいわよ」
ヒメは真夏に背中を押され、渋々と水に足を入れる。
「真夏、冷たいじゃあないか」
「だから、気持ちいいでしょう」
「そうだけど・・・・・・」
朝霧先生が管理している水浴び会は、あっという間に時間になった。
「みなさん、物足りないかも知れませんが、もう時間なので、上がってください」
朝霧先生は、全員がいることを確認した。
「全員いるわね。じゃあ忘れ物無ければ
ーー シャワーを浴びて更衣室に戻って着替えてください」
夕子が横から声を掛けている。
「お前たち、パンツの履き忘れをするなよ」
「先生、そんな人いませんわよ」
日向だった。
「先生の時代には、よくあってな、先生が教室で
ーー これは、誰のだとよく叫んでいたぞ」
「中学時代、聞いたことあります、先生」
「そうだろう、ヒメ」
「じゃあ、みなさん、シャワー浴びて、更衣室に戻って着替えてください」
昼間夕子は、朝霧先生のあとを追いかけた。