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第十一話 契りは未来の中に

「ところで、かぐや姫のことだが」


「お前たちは、夢とかで見ることないのかな」

「ヒメちゃんは、よくうなされているよね」


「真夏に言われると、考えるな・・・・・・。

ーー でもあれは関係ないよ」

「アレって、アレか」


「そうです、この間の(みかど)の夢ですが」

「うん、それは、ひっかっかるな」


(みかど)は、なんか言っていたか覚えているか」

「いや、言葉は聞いていないんです」


「そうか、残念だな」

「先生、何か探していますか」

真夏が言う。



「先生は、ちょっと伝説めいたことに興味があるんだよ」

「もしかして、三日月未来の小説みたいなお話?」

真夏が言うと日向黒子も口を(はさ)む。


「三日月未来のかぐや姫ですか」

「私も、あれを読むと古典の竹取物語の方に乖離(かいり)矛盾(むじゅん)を感じます」


「そうね。黒子の言う通りね。

ーー かぐや姫が月に帰るなんて、

ーー 矛盾もいいところね」


「まあ、御伽噺(おとぎばなし)ですから、

ーー 小説と同じように嘘であっても本当はないわよ」


「先生、かぐや姫には姉妹がいなかったんでしょうか」

「ヒメ、何でそう思うの」


「ふと、(ひらめ)きが走ったんですが」

「そうね、双子がいて、片方が帰れなくなっていたら、ミステリーね」


「双子とは考え無かったわ」

「竹取にある(ちぎ)りが怪しいわね」



 真夏が黒子にその契りを質問して黒子が説明する。


「長き契りはね、かぐや姫との前世の繋がりのお話なのよ。

ーー かぐや姫に前世からの契りが無いから(とど)まれないという話ね」


 昼間夕子は、何でそんな単純で当たり前のことを忘れていたのかと心の中で(なげ)く。

黒子のお陰で契りの声の意味が通じたと思った。


「先生、その契りがかぐや姫の運命を変えたのですか」

「ヒメの言う通りかもしれない・・・・・・」


「かぐや姫に前世の契りが無かったのが最大のウイークポイントになっているわね」


「先生、つまり、かぐや姫に契りがあれば、

ーー 月に戻る必要が消えるのですね」

「その場合、かぐや姫は、不老不死を手放して死ぬわけですが・・・・・・」


「ヒメの言う通りね。

ーー その場合は、かぐや姫も人間の様に転生するのかしら」



 夕子の中で見えていなかった、かぐや姫の契りと転生が鮮やかに浮かび上がる。

でも、契りをどうやって見つけるのかしらと夕子は自問自答していた。


夕子は、頭の中で三日月に話掛けた。

「三日月、契りが必要なの」


しばらくして

「未来、契りは、未来の中にあるわ」

「三日月、私の中なの」


「未来、契りはあなたの中にあるわ」

夕子は、生徒たちの話を上の空で聞き流しながら、三日月とテレパシーをしていた。



「先生、どうかされましたか」

「真夏ちゃん、ありがとうね。

ーー ちょっと、先生疲れているみたいだから心配ないから大丈夫よ」


「先生、お外との温度差ですね」

ヒメが言う。


「そうよ、お外との温度差かもね」

真夏だった。

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