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第参ノ巻 騒がしい昼食と放課後の緊張

まさかの高速更新・・・・・個人的な分け合ってですのでいつまで続くかわかりません

今朝の二度にわたる猛ダッシュで昌享は登校後のホームルームをダウンした状態で迎えるも何とか回復、午前中に行われた数学の小テストを無事に終えた。

そして昼休みには咲と別のクラスである鈴と共に食堂で昼食をとっていた。

天学の食堂は購買部と併設されているためとても広く家からの弁当持参者もよく訪れ、学食組と共に席について談笑していた。

もちろん三人も例に漏れることなく食堂の一角、窓側にある席について昼食をとっていたちなみに昌享と咲は弁当組、鈴は学食組である。


「マー君、咲ちゃん!今日のテストどうだった?」


そう言いながら鈴は天学食堂名物の天丼、通称『天学丼』をおいしそうに口へと運ぶ。天学丼の具は普通の天丼と何ら変わりないが上に乗っている天ぷらを『天』の字に置いてあり男子でも少し怯む程のボリュームがあるのだがそんなことはお構いなしにパクパクと箸を進めている。


「私はちょっと……陽野君は?」


「まぁ、思ったよりもできたかな?それと鈴、マー君は止めてくれ」


咲は自信がないらしく困った表情で昌享にテストのことを聞いた。

一方、昌享はムスッとした表情で鈴に自分の呼び方を注意しながら弁当のおかずで好物でもある卵焼きを口に運ぶ。

鈴は二人の話を聞いて腕を組み、箸をくわえながら「ムム……」と唸る。


「咲ちゃんは微妙でマー君がまぁまぁ、か……」


「………………」


「お、落ち着いて陽野君!お箸折れちゃうよ!」


『マー君』という単語を聞いて額に青筋を浮かべ、ミシミシと音をたて箸を折らんばかりに握りしめる昌享を咲は必死になだめ、鈴の方を見る。

初めのころは咲も鈴にその呼び方を止めるように言っていたのだが全く変わらないので最近は注意しなくなったが必死に止めさせようとする昌享を見るとやっぱり注意した方がいいのではと思っている。


「あの信濃さん……」


「うんっ!まだ間に合う!」


今回は注意しようと咲が話しかけるが全く聞いておらず。

それ遮り鈴は高らかに声を上げる。


「今から頑張るぞー!」


その大声は賑わう食堂で談話をしていた学生のほとんどが談笑をやめ振り返るほどだった。

多数の視線を受けながらも全く気にすることなく残っていた天学丼を口にかき込み水と共に胃に流し込むと。


「じゃ、勉強するから先に戻るね〜!」


それだけ言うと鈴は空になったどんぶりを片づけ食堂を出て行った。

昌享と咲の二人は茫然とその様子を見ていることしかできなった。

しばし固まっていた二人だが周りの生徒が片づけ始めたのを見てあわてて弁当の残りに手をつける。


「そう言えば今日は伊勢君、学校に来ていなかったけどどうしたのかしら?」


そう言って咲はデザートのイチゴを口に入れる。

咲のいう伊勢君とは昌享と咲のクラスメイト、伊勢いせ ただしでこの学校に来て昌享が初めて話した友人で信濃とは中学が一緒であった。

咲が来てからは四人でよく昼食をとっているのだが今日は学校に来ていなかった。


「さぁ?先生は家庭の都合でとしか言っていなかったし……」


昌享は訝しながら持ってきたマイボトルのお茶に口をつける。


「忠はお姉さんが通り魔に襲われたから来なかったんだよ~」


「ぶっ!!」


「信濃さん!」


まさかの闖入者ちんにゅうしゃに昌享はお茶を吹き出しかけ咲もいきなりのことで目を丸くする。


「ゲホッ、ケホッ……なんだよ鈴、教室に戻ったんじゃなかったのか?」


「いや~、財布忘れちゃって~」


笑顔で頭をかきながら先ほどまで自分が座っていた席の隣に置いてあった財布を手に取る。

財布を忘れるなよと呟きながらも耳を傾ける昌享の隣で咲は鈴に話しかけた。


「伊勢君のお姉さんが襲われたの?」


「うん。何でも昨日の夜中コンビニから帰るときに背後から襲われたんだって、命には別条ないみたいだけどまだ意識が戻ってないみたい」


あまり見せない神妙な面持ちで語る鈴からそこまで聞くと昌享と咲は不安な顔をした。

回数こそ少ないものの昌享は伊勢の姉とは面識があり気が強いがとても優しかった印象があり咲は髪の長さがほぼ同じなので髪の手入れについて話したこともあった。

沈みこんでしまった三人はチャイムによって現実に引き戻された。

鈴は先ほどよりもさらに速いスピードで食堂を後にし、昌享と咲も弁当を急いで片づけ教室へと本日三度目となる猛ダッシュをした。




その後、五時間目の後にテストの報告をしにやってきた鈴の強襲(?)により再び顔面を強打するという被害を被るも何とかクラスへ強制送還し午後の授業をなんとか終えた昌享と咲は弓道部の部活動がある鈴と別れ学園を後にした。

天学の部活は強制入部なので二人は一応、とある部活に入っているのだがそれは自質、帰宅部であるのと変わらない部活なのでそのまま朝来た道を戻る形で二人は道草を食わずにまっすぐ帰宅の途へとついた。

しかし、二人がそのまま寄り道せずに帰ったのにはわけがあった。

部活動をしている学生がまだいないためさほど混んでいない電車に揺られ金堀に着き家へと足を運ぶ。

そして閑静な住宅街でも特に目を引く白塗りの昌享の家の塀が見えると二人は足を止めた。


「多分、今日はあるのよね?」


「うん、ソウがおじいちゃんに呼ばれたんだから何かある……」


二人は今朝何とも不思議な生き物であるソウを昌享の祖父が呼んでいたのを思い出していた。

昌享のここ二ヵ月の経験からいえば二人が何か話し合った当日もしくは翌日の帰宅時の家の前の道は危険であるとういうことだった。


「堺さんは先に帰っていていいよ。俺は後で行くから」


危険な目に咲を合わせるわけにはいかないので先に帰るように促す。

少なくとも危険なのは昌享だけなので咲が一人で通る分には問題ない。


「……気をつけてね」


「うん」


少し悩んだのち咲はそう言い昌享が頷くと心配しながら一人、門の方へと駆けて行った。

咲が無事に門を通ったのを確認すると昌享は気を引き締める。

ここからは一人だけだ……いや待てよ。

そう思った昌享は後ろをちらりと見るが誰もいない。


「やっぱ、ここも一人でやれってことか……」


そう呟き大きく落胆する昌享は意を決して一歩を踏み出す。

その瞬間、先ほどまで昌享の耳に響いていた住宅街の喧騒がなくなり現在昌享がいる塀の前から門のところまでが昨夜張られていたのと同じ類いの結界に覆われた。

つまりこれから起こることはそれ相応の危険が付きまとうということだ。

大きく深呼吸すると昌享は慎重、且つ素早く足を進める。

今手元には己の力を補助・増幅する数珠もそれそのものが力を持つ呪符も何もない、あるのは己の力とそのことに関する知識だけだ。

何が起きてもすぐに対応できるように刀印を結び、足を進める。

しばらく進むと不審な気配が出ている場所があることに気づいた。


「もしかして……」


嫌な予感を覚えた昌享は注意しながら足元にあった小石を不審な場所に投げ込む。

トンと小石がその場所に落ちると一瞬にして燃え上がった。


「アハハハ……洒落にならないな」


小石が黒焦げになるのを目の当たりにした昌享は乾いた笑みを浮かべ突っこむ。

要はもし気付かずにあのば場所を歩いたら先ほどの小石と同じように焼かれるわけだ……確かに昌享のいうとおり正直言って洒落にならない。

再び足を進めると今度は先ほどとは若干違う危険な気配が道を塞ぐようにあった。

試しに小石を投げ込むと今度はまるで水に沈むかのように消えた。


「……やっぱり」


その様子を見た昌享はあることに気付いた。

しかし、それがわかったとしても今すぐに周囲の気配をどうにかできるものではなかった。

昌享は刀印をいったん解き深呼吸をし目の前の気配がするところを見据え胸の前で柏手かしわでを打つ。

すると気配が少しだけ動いた。


伊吹いぶきよ、いまはらいたまえ」


祝詞のりとを唱え柏手を二度打つ。

今度は先ほどよりも大きく気配が動く、いや気配が遠のく。


「わが身はわが身にあらじ」


今度は柏手を三度打つ。

打つたびに周囲にあった他の気配も遠のいて行く。


「わが身は伊吹を身にまとい従えるものなり!」


最後とばかりに昌享は一度だけ大きく柏手を鳴らした。

すると道を遮っていた気配が消え何事もなく歩ける状態になった。

ふう、と息をつく昌享だが消えたはずの気配がまた徐々に広がってきたのを感じ急いでその場を通った。

その後昌享は危険な気配がする場所で避けられる場合は極力避けて歩き、無理な場合は簡易浄化を行い何とか門の前へとたどり着いた。

門に何も仕掛けがない事を確認すると昌享はホッと胸をなでおろし門に手をかけ開く。


「ただいm……!!」


ただいまといおうとしたその瞬間、昌享は咄嗟に飛びのいた。

一拍、置いて先ほどまで昌享がいた場所に白い物体が落ちてきた。


「おっ!? さすがに学習したか」


落ちてきた白い物体、それは昨夜昌享を回しげりで夢の世界へといざなったソウであった。ソウはのんきにそんなことを言っているが石畳が敷かれた場所に直径20センチほどの穴をあけていた。

当たっていればまず死んでいただろう、運が良くても瀕死の状態にはなりそうだ。


「俺を殺す気か!」


「殺すも何も敵が怪我だけで済ませるわけないだろ、殺す気で来ているんだからこちらもそれ相応の態度をとってないとすぐに死ぬぞ」


確かに、昌享が修行していることの最終地点はるかられるかの世界である。

確かに、昌享が修行している世界はるかられるかの世界である。

相手が殺す気で来るならそれ相応の覚悟と度胸が必要である。


「だからと言ってここまですることh……痛゛ッ!!」


ソウに更に噛みつこうとする昌享の頭に鈍い衝撃が走った。

昨夜のソウの蹴りほどではないが星が見えた気がした。


「隙があり過ぎじゃの〜昌享」


ひょうひょうとした声の方へ昌享が頭を押さえながら振り返るとそこには着物を着て杖を手にした老人が立っていた。

腰が少し曲がっているもののその様子は元気そのものである。


「おじいちゃん……」


「ほっほっほ、昌享やお前さん結界が解けとらんのに気が付いておらんかったじゃろ」


ほがらかに笑うこの老人こそ、昌享の祖父にして師匠である陽野ひの 昌朗まさろうその人である。

顔で笑いながらも昌享に向ける眼光は鋭い。


「結界が解けるまでは気を抜くなっていつも言っているのにな〜」


ソウの言葉に昌享は何も言えなくなる。

昌享たちが結界を張るのは第一に一般人へ影響を与えないためであるが他に相手を逃がさない為でもある。こちらが結界を張ったなら相手を倒すまで解く事はないし、相手が仕掛けて来たならば自分たちを倒すまではまず解かれる事はない。

つまり結界の有無は全体の状況を知る上で重要なことであるのだ。

その事をすっかり忘れていた昌享は反論出来ずただうつむいていた。

その様子を見ていた昌朗はソウへと目線を向けた。

向けられたソウは片目でチラリと昌享が反省しているのを確認するとそっと頷いた。

笑みを浮かべた昌朗は手を叩いて反省している昌享の気を引いた。


「とりあえず今日はここまでじゃ」


そう言うと地面を杖で三度突く。すると張られていた結界が音もなく解かれ住宅街の喧騒が戻ってきた。


「話があるから着替えた後でおじいちゃんの部屋に来なさい」


頭の上にポンと手を乗せ優しく叩くと昌朗は杖をついてそのまま玄関から家の中に入って行った。

昌享は叩かれた場所に手をあて去って行った玄関を唖然と見つめていた。


「何で呼ばれたのかわからないっていった顔だな」


考えていたことを言い当てられた昌享は足下へと視線を移すとソウが砂埃すなぼこりを払うためか犬の様に体を振るわせ砂埃を払っていた。

一通り払って気が済んだのかソウの紺色の瞳が昌享を見上げニヤリと楽しそうに笑った。


「そろそろ三度目の満月だからな」

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