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カエルの王子様 4

「カエルですって!?」


カエルになれと言い放ったアスケラ嬢にベルナが目を見開いて驚く。

アスケラ嬢の手の平が一瞬、光り輝き、ベルナは眩しさに目を瞑った。

眩暈と吐き気がして立っていられなくなり地面にベルナは座り込んだ。

この感覚は覚えがある。

サイア姫に幼い子供にさせられた時と同じだ。

嫌な予感がしつつベルナは吐き気が酷く立ち上がることも目を開けることもできずうずくまった。


「ベルナ!」


ディートリッヒの声が聞こえて薄く目を開けると、アスケラ嬢の両手を後ろ手にして拘束しているのが見えた。

心配そうな顔をしてベルナを見つめているディートリッヒに片手を上げて大丈夫だと伝えようとするが持ち上げた手が小さい気がしてじっと見つめる。


「私、どうなっています?カエルにはなっていないですよね」


不安な気持ちになりながらアスケラ嬢を拘束しているディートリッヒを見上げると彼は一瞬喜びの笑みを浮かべて慌てて顔をしかめた。


「小さくなっている」


「小さくなっている…」


ディートリッヒの言葉を繰り返してベルナはゆっくりと自分の体を見下ろす。

ぺったんこの胸に小さな手足は少し前に散々みた小さくなった自分の体だ。

カエルにはならなかったが小さくなっている自分の体に絶望をして呆然としているベルナの耳にカエルの鳴き声とベイカーの大きな声が聞こえた。


「お前かー!」

「ゲコー!」


二人の叫び声を聞きてディートリッヒは無表情でアスケラ嬢の締め上げている腕に力を加えた。


「お前がカエル王子にしたのか」


「痛いわよー!折れちゃうわよ!やめて。顔に似合わず酷い人ね!」


涙を浮かべながら叫ぶアスケラ嬢にディートリッヒはますます腕を締め上げる。


「本当に腕が折れてしまうのではないですか?大丈夫ですか?」


あまりにも痛がり、2度目に締め上げられたアスケラ嬢は痛みで声すらあげなくなったのを見て心配になったベイカーが声を掛ける。

ディートリッヒは無表情にベイカーを見た。


「折れても構わないだろう。両腕が使えなくなればもう妙な術を使うことも無いだろう」


「いやぁぁぁ、信じられない。誰か助けて!」


腕を折られるかもしれない恐怖にアスケラ嬢が大声を出すと城から騎士が飛び出してきて集まってきた。

ドレス姿の女性を締め上げているディートリッヒと小さい子供姿のベルナを見てなんて言葉を掛ければいいかと悩んでいる騎士達の間を割ってレナード王子が飛び出してきた。


「なにを騒いでいるんだ!女性の悲鳴が城で聞こえたから大騒ぎだよ。それもディートが女性を捕まえているって…」


レナード王子はアスケラ嬢を締め上げているディートリッヒと小さい姿のベルナを見て額に手を置いた。


「ちょっと待って、僕は幻を見ているのか?ベルナちゃん小さくない?目の錯覚?」


隣に居る若い護衛騎士に言うレナード王子が問う。


「小さいですね」


若い騎士も信じられないと言う顔をして小さくなっているベルナを見つめた。

レナード王子はもう一度ゆっくりと聞いた。


「なにがあったの?」


「この女が妙な術を使ってベルナを小さくした。王子をカエルにしたのもこの女だ。トニーこの女を拘束してくれ」


無表情に言うディートリッヒは駆けつけてきたレナード王子の若い護衛騎士に視線を向けた。

トニーと呼ばれた若い騎士は嫌そうな顔をしながらディートリッヒに近づいてアスケラ嬢の手を掴んで拘束した。


「そのお嬢様から話を聞かないといけないから連れて行って。術師が来るまで手は拘束しておいてね。間違いなくカエルか何かにさせられるから」


レナード王子は後から駆けつけてきた険しい顔をした騎士に命令をした。

騎士達は頷いてトニーと共に城へとアスケラ嬢を連れて行く。


「ベルナ、大丈夫か」


いつも無表情のディートリッヒは心なしか嬉しそうに見えてベルナは白い目を向ける。


「私が小さくなって嬉しそうですね」


「……そんなことは無い」


ぶかぶかになった侍女服に埋もれるように座っている小さいベルナの体を見下ろしているディートリッヒの口元が微かに微笑んでいるのを見てベルナは睨みつけた。


「私を見て笑みが抑えきれないようですけれど」


「…小さいベルナにもう一度会えるのが嬉しい」


観念したようにディートリッヒは呟いて愛おしそうにベルナを見つめる。

小さなベルナの体が見えないように侍女服で包むようにして抱き上げた。


「この小さな体が可愛い。二度と小さなベルナに会うことができないと思っていたから思わず喜んでしまった。すまない。」


心の制限が取れているディートリッヒの素直な言葉にベルナはため息をついた。


「大きな私より、小さい私の方がいいのではないですか?」


「…それは無いと誓おう。どのベルナも愛している」


ベルナを見つめて微笑んでいるディートリッヒの色気に、何があったのかと城から出てきた侍女達からため息が漏れる。

ディートリッヒの色気に沸いていた女性達だったが、チラホラと小声で噂話をしているのが聞こえる。


「やっぱりディートリッヒ様、幼女趣味なのよ。ちょっとねぇ…ガッカリよね」


「ちょっとね…。でもあの二人の間に入ろうとは思わないわね。どんな理由でも愛されていればいいじゃない」


女性達の声を聞いてディートリッヒの笑みが固まった。


「ほら、幼女趣味だって言われていますよ」


小声で言うベルナにディートリッヒは何度か瞬きをする。


「…幼女趣味ではないが、言いたい奴には言わせておけばいい」


そう言ってベルナを抱いて歩き出した。

ディートリッヒとベルナの様子を見ていたレナード王子も手を叩いて集まっている人に声を掛ける。


「はいはい、一応事件解決したから解散。通常の仕事を再開してね」


カエル王子とお付きのベイカーに視線を向ける。


「カエル王子じゃなかった、アンドレ王子申し訳ないのですがアスケラ嬢について詳しくお話をお伺いしたいのですが」


「わかりました」


カエル王子の通訳をしてベイカーが頷いた。




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