0.プロローグ
――――瞳を抉り取られるユメを見た。
足は動かず、
手は震えて、
身体は全力で逃げろと訴えている。
視界が開かない、
暗闇の中に、
アタシがなくなっていく恐怖、
片っ端から『正常』が塗り替えられていく。
それは所謂、『生物としての在り方』の頂点。
頂点にして原点と言える、とても昔に見た、絵本の中の悪魔のような存在。
非現実的な暴力の極みを前に、頬は引きつり、笑いが起きてしまう。
「――――つくりばなし、でしょ。コレ」
ぽつりと、死の間際で言葉をこぼす。
鮮明に聞こえてくる心臓音。詳細に理解できてしまう敗北感。
大気の音は無駄にうるさく聞こえる。
邪悪に笑う声はどこか遠く、耳障りで。
肌に感じる痛みだけが、まだかろうじて、自身の生命が在り続けていることを示してくれいていた。
やだなぁ。
ひりひりするし、いたいしつらい。
なにもかもあきらめて、伏していたい。
「――――は、」
恐怖を植え付けられた。
眼球の代わりに、目にはもうソレが注がれている。
見えない。
し、見ても怖い。
だったらいっそ、見えないままのほうが幸せだろうか。
鐘みたいな音がごんごんと頭の中で鳴り響く。
幻聴だ。
けれど助かめる術はない。
何にせよ完全に崖っぷち。
死、以外に、進む道は閉ざされている。
「それ、でも……。アタシは……ッ」
アタシは、折れないんだ。
それだけは、気持ちが悪いから。
じゃり。と、塵のような瓦礫を掴む。
風が傷口に当たって、痛気持ちいい。
それでいい。闘志に火が灯る。
口の中の砂を、乱雑に吐き出す。
ソレは見えない。
剣をがしりと、しっかりと握りなおす。
ソレは見えない。
ぽつぽつと雨が降り出した。
ソレは見えない――――分かっている。
「それでも……、アタシは……ッ!」
起き上がると同時。暗闇へと手を伸ばす。
ぶんっと剣を振ってみるも、何かに当たる気配はない。
そこには何も見えていない。
それでは何も掴めない。
そうして何も得ることは無い。
ただそれでも。
闘う意思だけは残さなきゃ。
だからここで、己が命は終わってしまうのだろう。
けれどそれがレゾンデートル。
アタシはアタシを曲げることだけはできないし、許されない。
――――そうして、己が身体は一秒後には四散する。
そんな悪夢を垣間見た。
「……………………はっ、」
呼吸が荒く、背筋は冷たく、天井は高く、瞳は在る。
「は…………、はは」
それは笑いか、息を整えるための強がりか。
そのままベッドから起き上がり、枕元の眼帯を慣れた手つきで左目に巻いた。
右目だけで見た明け方の空は。
今日も憎たらしいほど晴れている。
「――――生きてる」
生きていたいという本能だけは、捨ててはいけない最後の一線だ。
ぎゅ、ぎゅ、と、拳をにぎるって確認する。
命が今日も、アタシを呼んでる。
窓を開け放つ。
彩溢れるこの世界が、しっかり目の中に入ってきた。
「今日も光がまぶしいねぇ」
さてさて。
今日も楽しい一日が――――、
はじまるよん☆
第二章、ここより開始いたします!
本日8月10日の朝8時より、二章の一話から毎日更新致します。
またなにとぞお付き合いいただけますと嬉しいです!
「でこ好きメイジと力強き女戦士」シリーズを、何卒よろしくお願い致します!




