魔王と勇者 そして敗北
数年前に百合の世界に目覚めて、たくさんの作品と触れ合う中で一番感じたことが!
本屋に行って売り場を見てもBLはドーンって感じなのに百合はひっそりと売られている!
ワタシは悲しい、そこで自分の中の世界を形にしてみようと思ったのです。
今作は公の場に出すと言う意味だと処女作になります、楽しく書いて行こうと思うので読んでくれたら嬉しいです!
御意見、御感想もお待ちしてます!
※あまり辛口の感想だと泣いちゃうかもなので、お手柔らかにお願いします。
静寂に包まれる大広間、その玉座に一人の女性が腰をかけている。
魔王である。
複数の足音が聞こえてきた、音は次第に大きくなり近づいているようだ。
魔王は目を閉じたまま、その足音を聞いていた。
すると不意に足音が止んだ。
「魔王、貴様を倒して世界を救ってみせる」
正義感と威圧感で満ち溢れた声がそう告げた。
魔王は、ゆっくりと目を開き声の方に視線をやる。
そこには、いかにもな鎧を装備し又いかにもな剣先をこちらに向けた勇者だろうと思われる男が立っていた。
周りには仲間の魔術師や弓使い、大きな斧を構えた人間がいる。
「お前たちだけで私を倒す?」
「随分と舐められたものだな」
つまらない冗談を聞かされ嘲笑う気すらおきない。
嘲笑いの代わりに殺気を込めた鋭い眼光を贈り、玉座からゆっくりと立ち上がり左手を前に魔法陣を展開する。
魔法陣へ手を入れ、武器を選定する。
選んだのは大剣、これまで玉座に攻め込んだ人間を一番多く葬って来た愛用の武器だ。
「人間、私はお前たちに名乗った方が良いか?」
歴代、この地にたどり着いた人間は今後の名声を確たる物にするために魔王の名を聞いてきた。
[ただ、魔王を倒した]より[魔王サタンを倒した]の方が効果的であるからだ。
だから今回もと思い問いかけたのだ。
まぁ、聞かれはしたけど答えてはないんだけどね。
人間に、指図されるのは気分が悪いからな。
当然名乗れと言ってくると思っていた魔王だったが返って来た答えは予想とは違った。
「名前など、聞いてどうなる!」
魔王は一瞬呆気にとられキョトンとした目を見せてしまった。
予想と違う反応に不覚にも笑ってしまった。
「ッ···プッ····アハハハ」
「何が可笑しい!」
魔王を見た勇者が問いかけた。
「いや、なに、これまでここに来た連中は皆一応に私の名を聞いてきてな、私を打倒した後に名を知らねば意味がないとか何とか、言っていたから···ついな」
笑いを堪えながら何故か説明をした魔王は今の己の発言に内心驚いた。
何故なら、人間の問いに素直に答えた事など一度も無かったからである。
勇者は気を許す事なく剣を構え鋭い視線を変えない。
魔王は、そんな勇者を他所に話を続ける。
「面白い人間よ、まあ、聞いておけ我が名を」
「我が名はユリシス、ユリシス=パズズ=サタン」
勇者一行は戦闘態勢を維持し魔王の名を聞いていた。
「さあ、命尽きるまで闘争の限りをつくそうではないか」
魔王はそう言い放ち数多の魔方陣を展開し魔法による一斉射を始めた。
どれだけ時が流れたか、激戦を繰り広げ、広間は荒れ壁は所々崩れている。
立っているのは魔王と勇者だけであった。
勇者にはもう殆ど力は残っていない、息は荒れ立っているのがやっとと言った状態である。
「此度の宴も終いか···」
魔王は少し寂しそうに呟いき、視線を落とした。
「うおおおお!」
勇者が最後の力を振り絞り突撃してきた。
距離はまだある魔王は左手を前に魔法を唱える。
「うおおおおおおッ!ユリシスゥゥウッ!」
魔法を唱えていた魔王の口が急に止まった、またも予想していない事が起こったのだ。
それは、勇者が自分の名を叫んだ事だ、今までなら[魔王]と声をあげながら突撃してくる者しか居なかった。
魔王はその瞬間、今まで感じたことのない感情と出会い動揺した。
動揺を押さえ、我に返り視線を前に向ける。
勇者を見て悟った魔王は左手を下ろし、勇者の剣にその身を貫かれ倒れた。
「私の···負け···ね」
意識が遠退いて行く中で『私は誰かに名前を呼んで欲しかったのかもしれない、産まれてからずっと呼ばれた事がなかったから···』
『ああ、負けたのに、もう···死んでしまうのに···』
『もし···叶うなら、次に生まれ変われたなら、人として···生きてみたい』
『今度は、もっと、名前を····』
真っ暗闇の中、感覚が徐々に消えていき意識は完全に消滅した。
この時、魔王は死んだ。
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一話?一章?を書き終えて、すみません(泣)
次章ではちゃんとヒロインと出会いますのでお待ちください。
せっかく読んで貰える場なので楽しい気持ちが一人善がりにならないようにしていきたいと強く思いました。
この後もお楽しみに!