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その八 出会いの正式イベント

くっそ可愛いんだけど……ん?

 ソニア襲撃から二日が経った。


 その間これといって僕とクレアは進展もなにもなかった。と、いうかマトモに喋っても無いけどね。

 ニーナは用事があるとかでどこかに行ってしまったので、久しぶりに図書室で読書でもと思い目的地へと向かった、BLジャンルあるといいなぁ、初級中級部用の図書室は童話と資料しかないし、去年は慣れるのに必死で資料探しでしか図書室を訪れていなかったから、ゆっくり過ごしに行くのは初めてになるなぁ。


 そんな淡い期待を胸に図書室へと到着。


「改めて見ると初級中級用の図書室より遥かに大きいな、全然違うじゃないか、これならひょっとするとひょっとするぞ」


 まずはそれっぽいタイトルが無いかを探す。

 案外タイトルには法則性があって、それらしいタイトルと言うのはあるものだ。簡単に言えば〇〇殺人事件みたいなものだ。

 〇〇殺人事件で恋愛小説だったら嫌でしょ? まあ無いとは言い切れないけど、あったらそれ確実に愛憎劇だよ。

 さーて、僕としては無垢な美少年同士がいつのまにか流れでキャッキャウフフするタイプがいいんだけど。

 おっと! 僕は今は男だった、まだ少し中の人基準の趣味が残っているな。


 そんなことを考えつつ面白そうなタイトルがないかを探していると、一番上の段の本を取ろうとして背伸びをしているクレアの姿を見つけた。中々ベタだけど可愛いシチュエーションだね。


「うーん、あと少しで届くのに」


 僕はクレアの指先にあった本を取ってあげることにした。少し指が左右に震えていたから、これでよかったのかな?

『エリクソン伯爵家の惨劇』というタイトル、サスペンス物かなこれ? エリクソン伯爵家の惨劇を手に取りクレアに渡す。


「やあ、クレアこれを取ろうとしてたのかな?」


 本を手にした僕を見るとクレアがニコリと微笑みかける。クッソマジ可愛いんですけど!


「こんにちは、カナード王子。ありがとうございます、ですが申し訳ありませんその本の右隣りの本だったんです」


 どうやら違ったようだ。

 僕はクレアに言われたほうの本を取る、『岡っ引き平蔵捕り物帖』というタイトルの本であった……おい、なんか世界観おかしいだろ? 中世ヨーロッパっぽい世界観に岡っ引き平蔵って、しかしクレアの趣味も渋いなおい。


「こっちでいいのかな?」


 僕は平蔵捕り物帖を渡すと、クレアは再び微笑み受け取ってくれた。


「ありがとうございます、カナード王子」

「ミステリー好きなの?」

「え? あ、はい」


 クレアの趣味の情報をゲットだぜ!


「なるほど、僕もミステリーは結構読むよ」

「本当ですか! どんな本を読んでるんです?」


 クレアは目をキラキラさせて僕を見た、そんな目で見られるとBL読んでましたとか言えないな。


「あー、えーっと。新宿中〇公園殺人事件とか?」

「聞いたことない本です」

「そうか、昔読んだ珍しい本だったからね」


 当然嘘である、昔フ〇ミコンであったゲームのタイトルだったりする。僕は安住祥子時代に友人から借りてやったことがあるだけだった。

 そしてクレアと昔読んだ本の話をして、楽しいひと時を過ごすことになった。


「カナード王子ってかなりの読書家なんですね」

「はは、最近は読んでないけどね」


 ほぼ生前に読んでた作品の話です。はい、この世界には無いタイトルばかりです。

 それでもクレアは楽しそうに僕の話を聞いてくれる。

 あまり話したことのない相手なのに、ここまで僕が話が出来るなんてクレアは聞き上手の話し上手なんだ、こういった部分も好かれる所なんだろう。

 おそるべし乙女ゲーの主人公!


「うちは騎士といっても裕福ではなかったので、本のような娯楽はあまりできなかったんですよ」

「クレアさんの行っていた学園に図書室はなかったのかい?」

「あるにはありましたが、自由に使うことが出来なかったので……」

「そうか」


 この世界は本が異常に高く、小説なんてモノは貴族や裕福層の娯楽となっていた。

 なんか印刷技術の問題だとかなんとか、紙も高級品なんだよね。

 騎士と言えば格好いいが、よほどの功績を上げた騎士でなければ、下手すればそこらの商人より貧しい生活の者もいる栄誉職でしかない。


「確かに本は高級品だからね、うちの学園は王立なのでそれなりの数は本があるが、確かに他の学園では図書室の本もここよりは少ないかも」

「そうですね、以前の所より倍は大きな図書室で驚きましたよ」

「はは、それは良かった」


 しかし、ここまでの会話……記憶にないということはこれがカナードとクレアの出会いのイベントなのかな? しかし僕は自分の意志で会話をしている、これがゲームのイベントだとそうは思いたくないな、そう思ってしまうほどにこの時間に充実感を覚えている。

 なるほどなあ、この娘とならこれからもこんな時間があってもいいかなぁと僕は思った。


「あ、すいませんカナード様。もうこんな時間ですので帰らないといけません」

「ん? あ、あぁ。そうか楽しい時間を過ごすことができたよ」


 僕も時計を確認すると確かに割と時間が経っていったようだ。

 名残惜しくはあるが流石に帰るべきだろう。


「では、家まで送っていこうか?」

「いえ、私は今この学園の寮に住んでいますのですぐそこなんです」

「そっか、ではまたねクレアさん」


 僕がそう言うと、クレアは笑顔で僕に挨拶をしてくれた。


「はい! それではまた明日お会いしましょう」


 そしてクレアはお辞儀をすると図書室を出ていった。

 今日一日で随分進展したのかな? 僕はそんな事を考えていた。


次回は明日のお昼にでも

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