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その二十九 ニーナ・イネス

クライマックスだわさ

 メイド達が集めてくれた証拠をすべて提出し終わる頃には、ホプキンスの方は諦めムードになっていた、がソニアにいたっては謎の言い訳をし続けていた、しかしその言い訳も既に意味を成しておらず、ソニアは完全に孤立していた。

 ソニアに援助を受けていた、貴族たちですらもはやソニアにヤジを飛ばす始末だ。


「ボバボバババ」


 こうなっては父親のエレンツ侯爵ですら娘をかばうことはできない。

 僕は最後に父親にむかって宣言する。


「父上、いや国王。僕はソニアとの婚約をここで破棄することを宣言します。そしてソニア・エレンツを国外追放処分することを進言します!」


 僕の言葉に国王は考える。


「エレンツ侯爵、我が息子のカナードはこう申しているが、何か意見はあるかね?」


 国王はソニアの父親であるエレンツ侯爵に尋ねた、尋ねはしたがここで娘を庇うことは出来ないだろう、ここで庇ってしまえば侯爵家が共謀したような扱いになってしまう。


「……私も王子の意見に賛成です。我が娘を甘やかせすぎた結果が、このような事になってしまったのです。国外追放処分にすることに私も賛成します、娘の計画に気付けなかった私も罰を受けましょう」

「ボバ、お父様! 何故ですか? 何故そのような刑を私が受けねばならないのですか?」


 ソニアはなおも食い下がるがエレンツ侯爵が睨みつけ怒鳴った。


「バカもん! 巫女候補への攻撃だけでも国外追放モノだぞ! それをあんな恐ろしい計画まで企んでおいて! 本来なら斬首でもおかしくない所を王子の恩情で国外追放だけで済んだのだ、感謝せぬか!」


 巫女候補への攻撃や嫌がらせってそこまで罪が重かったのね……罪なのは知ってたけど禁固刑程度だと思ってました。

 父親にそう言われたソニは唇をかみしめてプルプルと震えていた。

 そして懐に手を入れると、その手にはフリントロックピストルが握られていた。


「カナード! お前さえいなければ計画は成功してたはずなのに!」


 凄まじい形相で睨みつけ、銃口を僕に向けた。

 これはヤバイかも、ソニアの近くには衛兵もおらずクレアと先代巫女に司祭しかいなかった。

 ただその銃口がクレアや先代巫女達に向いておらず僕に向いてたのだけが救いだ。


「お前も道連れだ!」


 ソニアが叫び引き金を引いた、僕は目を瞑り両腕を交差させた。

 視界が真っ暗になった瞬間に乾いた音が鳴った……

 僕は何の衝撃も来なかったことに驚き目を開く、そこには血濡れのニーナが横たわっていた。

 時間が止まったように思えた……しかし、動かねばならない! 僕はすぐにニーナを抱き起す。


「ニーナ!」

「……ふっふっふ、うぐ、王子……お怪我はありませんね?」

「僕の事なんてどうでもいい! しっかりするんだ!」


 やめてくれよ、ようやく僕は自分の本当の気持ちに気付いたってのに。まだニーナに告白もしてないのに、これで終わりとか言わないでくれよ!


「あ、あぁ、うん……お怪我はないようですね。王子のお綺麗な顔に、傷でもついたら……大変ですものね、うん、私は役に立ちましたね……」


 ニーナはそう言い終えると目を閉じてしまった。


「誰か! ニーナに治療を、お願いだニーナを助けてくれ!」


 僕が叫ぶと数名の兵士が来て、ニーナを大切に抱え上げると別の部屋に連れていく。


「衛兵! そこのブタ面を拘束しろ! 絶対に逃がすな!」


 衛兵たちがソニアを拘束する、そしてホプキンスも拘束をし連れて行った。

 僕はそれを確認すると走ってニーナの連れていかれた部屋へと向かった。


 ――

 ――――


 応急手当を施し、施療院へと運ばれることになったニーナ。

 そして施療院での治療が始まった、この世界にも魔法はあるがそこまで万能とは言えないものでありゲームのように一気に回復させるような魔法もアイテムもない。

 銃による傷は体内にある弾を抜き出してからの魔法治療となる。


「カナード落ち着いたらどうだ、そうしててもニーナ君の治療が終わるわけでもないんだ」

「だが、兄さん!」

「落ち着くんだ」


 兄のハインツに言われ少し落ち着きを取り戻す、確かに僕がこううろうろしていても邪魔なだけだろう。

 そして更に時間が経つと、中から治療を担当していた治療術師が出てきた。


「なんとか、弾は取り出し治療には成功しました。今は眠っておりますので彼女次第になるでしょう」

「あぁ、ありがとう、ありがとう」


 僕は半泣きで治療術師の手を取りお礼を言った。


「兄さん、行ってきて。後の事は俺とハインツ兄さんでやっておくから」

「ニーナ君のそばにいてやれ」

「二人ともありがとう」


 僕は兄と弟に礼を言うとニーナのいる部屋へ入っていった。

 治療の手伝いをしてくれていた人たちが二名いたが、僕が入ってくると察してくれたのか、何かあったら呼んでほしいと言い部屋を出ていった。

 僕は二人にもお礼を言って了解したと伝えた。


 ニーナはすやすやと眠っていた、僕はベッドのそばにあった椅子に座るとニーナの手を握った。


「僕のためなんかにバカなことをして、君に何かあったらと思うと恐ろしくなるよ」

「君と出会ってもう十年が経つんだね……」


 僕は眠るニーナの前でニーナとの思い出を呟き続けていた、しばらく時間が過ぎると少し眠くなってきたのかうとうととし、さらに少ししたところで僕は耐えられず眠りについてしまった……


次回で最終話となります。

最終話とエピローグを2話投稿となります。

明日の夜公開予定。

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