その二十八 選定の日
ハハ、ボバ
ついに決戦の時が来た。
あの後流石に何事もなく選定の日を迎えることになった、この日は学園は休みとなる。
ソニアとクレアは必ず神殿へと向かわなければならない。後は先代の巫女と水の精霊の司祭、王族に貴族たちくらいなものだ。
一般人への公開はされていない。
僕とニーナ、そしていつものアイツ等も神殿に来ていた。
「王子、ついに今日で決着がつきますね」
「あぁ、なんとか皆のおかげでクレアも無事にこの日を迎える事が出来たよ」
僕がニーナに答えると、耳障りな笑い声が聞こえてきた、ほんとアイツ笑ってからじゃないと喋れないのか?
「ボバハハハ、見なさい。この私を称えるために集まった人々を」
「そうですな」
ソニアの近くに立つ男、彼がホプキンスかな?
ソニアは笑っているがホプキンスの表情は険しい、どうやらこないだの襲撃から連絡が無いのを心配してるようだ、ソニアは笑っているので危機感は無しってとこだな。
「兄さん、アイツまるで自分が巫女に決まったと思ったような態度だね」
「ソニアは気にしてないようだが、ホプキンスの方はそうでもないみたいだね」
「クレアさんは助かってるのを知らないようだね」
僕とアルが話していると、クレアが入ってきた、しかも何故か愛想笑いを浮かべながらへこへこ頭を下げながら入ってきた……今から宴会芸でも始めようとしている万年課長のようだった。
しかし、そのクレアを見た瞬間ソニアが固まった、そしてホプキンスはやはりといった表情だ。
「ボバハ? ホプキンスどういうことですかこれは?」
ソニアがホプキンスに尋ねている、というか割と大声何だが……
ホプキンスは静かにするように言ってから、小声で何かを話している。
ソニアは忌々しそうにクレアを睨んでいた。
そして、次々と人が集まってくる、先代の巫女と司祭がクレアとソニアを呼ぶ。
「残った候補者二名はこちらへ」
老齢の司祭が声をかけると、クレアとソニアが前に出た。
二人を見ると司祭は頷き次の指示を出す。
「では二人とも、巫女の証である印を掲げよ」
二人は印のある手の甲を上に掲げた、掲げたまま少し時間が経った。
「ボ、ボバ……ハハ」
ソニアの手がプルプル震えていた。いや、流石に挙げた手の限界来るの早くない?
司祭が時計に目をやり時間を確認すると二人に向かい告げた。
「さあ、選定の時間です」
僕たちはその言葉に息を飲み、クレアが選ばれるように祈った。
……どれだけの時間が経ったのだろう? 一瞬だったのか? 一時間だったのか? そう思える時間だった。
「ボバハハ? ボバ!? 何故? イカサマだ!」
沈黙を破ったのはソニアの声であった、ソニアの言葉を聞きソニアの手を見る、するとソニアの手にあった印が消えていた。
クレアの手にはしっかりと印が残っていた。
「何がイカサマですか?」
先代の水の巫女が言った。先代の巫女とは言うが水の巫女の期間は三年程度なので、巫女はまだまだ若い、この人もまだ二〇代前半であるが貫禄というか凄味があってもう少し上に見える。
「ボバ……」
流石のソニアもあの先代巫女の強烈な眼光の前には恐縮していた、僕なら泣くね。
それでもなお食い下がろうとする、しかし醜き悪鬼に鉄槌を下すため僕は声を張り上げる。
「よろしいでしょうか!」
僕の声に全ての視線が集まってくる、僕はごくりと喉を鳴らす、そして額を汗が流れてくる。
やはりここまで注目されると緊張するな、僕の中にある安住祥子も頑張ってくれよ。
「そこにいるソニア嬢は神聖なる巫女選定について、色々と他の巫女候補の妨害工作及びとても恐ろしい計画を企てておりました!」
僕は大きな声でそう告げる、すると周りがざわついた。
それはそうだろうこのようなことは前代未聞、僕はここでソニアを公開処刑するつもりだ、何もこんなところでと思うかもしれないが、こういった場所だからこそソニアを完全に潰すことができる。
「どういうことだ?」
「アレは確かカナード第二王子?」
「確か彼はソニア様の許嫁であったような?」
色々と言われてるが知ったことじゃない、僕はここで悪を討つ!
「そこにいるソニアはホプキンスなる者と、この国を乗っ取ろうと計画をしておりました!」
僕は証拠の計画書を提示する、慌てて兵士がこれを受け取り読み上げた。
そこにはソニアが水の巫女になってから貴族を抱え込み、僕との結婚を機に国を我が物にする恐ろしい計画が記されていた。
これには僕の父である国王に第一王子である兄のハインツも驚きを隠せない。
「エレンツ侯爵! これは誠か! そなたほどの者がそのようなことを許しておるとは!」
国王の一括に侯爵も背筋を伸ばす。
「い、いえ。そのようなことは決して。私もいま初めて知った所であります!」
「本当か?」
国王の言葉に僕が答える。
「父上、侯爵の言ってることは本当でしょう。ソニアとホプキンスの独断であると思います」
「カナードも何故そのことに気付いたのだ?」
国王の次の質問にも、僕はよどみなく答える。
「ソニアの行った、他の水の巫女候補への嫌がらせと攻撃があったからです」
「なんだと?」
そうだ、本来は他の巫女への嫌がらせ自体が禁止行為なのだ、ソニアは慌てて否定する。
「い、いや、私はそんなことはしていません! クレアさんともカレンさんとも良くさせてもらっていました」
ソニアのその言葉にアルが反論した、割と憎しみ籠ってます。
「嘘だ! その女の執拗な嫌がらせで、巫女候補だったカレンは精神をやられています! ありもしない噂を流すのは当たり前、自分に従う貴族を使っても嫌がらせを繰り返していただろうが!」
「誤解です!」
「僕からも、ソニアはクレアの父親に濡れ衣を着せ、クレアに精神的な攻撃を仕掛けたこともありました」
騎士団の調書を提出する、もはやこの場は選定の場でなくソニアに対する裁判であった。
僕とアル、いつの間にかライネスにユリアーナも加わって、ソニアの悪事をバラしていく、集めた資料もあって、ソニアはどんどんと顔を青ざめさせて下を向いていた。
さあ、トドメといこうか。
次回は27日!




