第一章:現代最期の日…
「今日もだいぶ疲れたな......」
気が付くといつも通り終電の時間を迎えていた。別に意識して終電に間に合わせようとしていたわけではないが、体に染み付いているのか、終電の時間に合わせていつもピッタリ駅に着く。社畜ながらの職業病みたいなものだ……
「はぁ、早く帰って寝よ」
そう呟きながら駅を駆け上がる。
その日は週末前ということもあり、疲れがたまっていたのか少し目眩がした。
(そろそろ身体もしっかり労わらないと、いつか壊しそうだな)
駅のホームに着き、到着する電車を待っていると目眩が強くなり、同時に激しい頭痛に襲われた。
(痛い......なんだこの痛みは!)
立っているのも辛くなった澤村は端の方へ歩き、座り込んだ。すると何やら遠くから女の子の声が聞こえてきた気がした。
「この地は……穢れに満ちている……王都ディネロの命によってこの世に終わりを告げる……」
(一体何を言っているんだ?遂に俺も頭がおかしくなっちまったのか? いや、でも確かに遠くで微かに聞こえたような……)
澤村はその女の子の声にやたらと違和感を覚え、その声に耳を傾ける。
(王都ディネロ...⁈ 何を言ってるんだ? 確かにこの国は穢れているが、この世に終わりを告げる?)
目眩と頭痛が治まり、右手奥から電車が見えてきた。
しかし、その電車は何かいつもと雰囲気が違ったように感じた……
プシュー......――電車の扉が開く音ーー
澤村は何か違和感を感じながらもその電車に乗り込んだ。
(なんか今日は疲れているのかな。早く帰って今日は寝ないとな)
ちょうど電車の扉が閉まる瞬間、澤村はある異変に気が付いた。
電車に誰も乗っていない……
(あれ? 間違えて回送電車に乗っちゃったのか? いや、そんなことはないはずだ。終電のこの時間に回送電車が来るはずがない)
澤村はこの状況がどういったことなのか、全く見当が付かなかった。
その状況に少し怖くなり澤村は必死に非常停止ボタンを探した。
「誰かー!助けてくれ!間違えて乗ってしまったみたいなんだ‼︎」
ふとホームの方に視線をやるとこっちを見ている人?いや、まるっと小太りなハンプティダンプティのような男が手を振っていた。
澤村が覚えているのはその光景が最後だった。
(あのハンプティダンプティみたいな男は一体何だったのだろう......)
澤村は誰もいない電車の中でパタンと倒れ、意識が遠のいていき、深い眠りについてしまったのであった。