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マネーパワー  作者: タロイモ
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紙切れと金属片と化したその先にあるもの

ジリリリ...


ジリリリ...


午前五時。まだ辺りは薄暗く、鳥のさえずりさえ聞こえてこない中、目覚ましの音が鳴り響く。


寝ぼけ眼のまま洗面所に行き、顔を洗って俺の一週間がまた始まる......退屈で苦痛に満ちた日々が。


周りの奴らはみんな八時半頃に出社してくるが、俺は毎日早めに出社し、誰かしらに頼まれる残業を億劫ながらもこなしている。


もちろんこの早出勤はプラスαで給与が支払われることはない。会社自体の規模はある程度大きいが、自分は出世とは程遠い所にいる気がする。この先自分はどうなっていくのだろう。


結婚は?

家は?

老後の生活は?

一生このままの生活を送って終わっていくのか?


そんなことを考えてると嗚咽が押し寄せてくる。


いわゆるブラック企業というやつに俺は身を投じて馬車馬のように働いて早十年。社内ではいつしかバキューマーと呼ばれていた。NOと言えない性格のせいで社内の面倒な仕事を一手に引き受けているからである。


何度か転職を考えたこともあり、友人にも体調や将来を心配されることも多々あったが、自分のこの性格上、今の会社を辞めて新たな生活に踏み出すことが出来なかったのだ。


いわゆる、お人好しで損をするタイプだ。


就業時間になって上司の斎藤が怒号をあげる。


「おい!澤村!資料は仕上がってるんか!?早よ会議始めるぞー」


毎朝この怒号にビクついてる自分が情けなくて仕方がない。


「はい!資料ですが、今作り終えて印刷かけてるところです!もうすぐに仕上がります……」


「ワイが来るまでに仕上げとかんかボケー!!!」


「すみません......すぐパウチして持っていきます......」


澤村はこんな日々を送りながら年収にして四百そこそこでこきをつかわれている。


(一体俺は何の為に働いてるんだろうか。毎日毎日働き詰めのせいか給料は少ないながらも貯金は溜まってはいく......)


澤村の給与は手取りにして三十弱。世間的にはそこまで悪くはないのかもしれないが、月の残業代を加味すると時給がおかしなことになる。


俺の唯一の楽しみは、そう。家でお菓子と炭酸飲料を買い揃えて、オンラインゲームに没頭すること。


誰にも邪魔されない至福の時である。平日は社畜を全うし、バキューマーとしての生活を送る。週末の二日間は廃人の如く部屋にこもりオンラインの世界に入り浸るのだ。


(もしも生活するのにお金が必要でなければあんな社畜生活今すぐやめてやるのに。俺は特に際立った才能があるわけでもない為、年齢的に今更転職を望んでも安定的に就職先が見つかる保証はない。それに転職できたとしても、新たな人間関係を作り上げられる自信もない。)


また鳴り響く斎藤の怒号


「おい!澤村!ちょっとこの資料今日中に仕上げとき!それとこのリストも全部目通して、修正かけといてー」


(またこうやって面倒な仕事は俺に回すのかよ......これ全部今日中って...残業確定じゃん。)


心の中で会社や上司に対しての不満を押し殺しながら、いつも通りの業務を終電間近に終え、帰路へ向かった。俺の人生史上、いや、全人類の運命に天変地異が起こるとも知らずに......

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