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光が収縮し、全ての世界の時間が動き出す……___
私は、とっくに決めてた覚悟を、しっかりと口にする。
そうすることで、より強固な意思となり、覚悟になる様な気がするからだ。
「黒曜、あの世界の中心に連れて行って…。王都より先、森に囲まれ先にある湖の底…、そこに、三馬鹿に意思を植え付けられた…星の素が居る…。らしいよ。」
私は夢か幻か、世界から聞いた場所を伝える。まぁ、本当にあるのかどうかは、私にはサッパリ分からないけど。
黒曜は私の手を取り、優しく力強く微笑むと、行こうと促してくれる。
「我の力もあ奴の力も、真琴の好きに使うが良い。我はどんな時でも真琴の味方だ。」
黒曜は、私の目を力強くみつめ、私の不安を全て取り除いてくれる。
だから、私は確信出来るのだ。
あぁ、きっと大丈夫。
みんな幸せになれる。って。
黒曜の笑顔を見て、これが必然だし運命だったんだと思う。
「ねぇ黒曜、私達スタートはハプニングだったけど、今は結構良い経過を辿ってると思うのだけど、どう?」
私の問を聞き、黒曜は一度ビックリした後、ニヤリと笑い、
「我等は世界も次元も超越した、最高の夫婦だと思うぞ。」
黒曜は、私の欲しい言葉をくれる。
うん!お金は稼ぐの好きだけど、頑張れば何とかなるのよね。けど、愛情って、私一人頑張っても得られないものなのよね…。
それを、黒曜は与えてくれる。
お母さんは、注いでくれる。
ベルツ様は、受入れてくれた。
親方は、笑ってくれる。
なら私は、この環境をくれた世界に恩返しをしてやろう。
世界は世界自身を救って欲しかったみたいだが、私もちゃっかり救われたのだ。
そして、何も言わずに側に居てくれた黒曜にも救われたのだ。
なら、黒曜がやらなきゃならない事を、嫁の私がやるのは当然だし、寧ろ、役に立てるのは喜ばしい事じゃないか。
◇
自分語りをさせて欲しい。そして、私の中のトラウマともおさらばするのだ。
私が育った家庭環境は、決して良いものでは無かった。
母は私を産んで直ぐ亡くなり、最愛の人を亡くした父は徐々に狂っていった。
それでも、私が幼少期はまだマシだった。
夜な夜な、母が恋しいと泣くだけの害のない、可哀想な人だったのだから。
だが、歳を重ね、母に似てきた私を、母と間違えるようになった父は、私のことを「真沙子」と呼び、いつしか「真琴」と呼ばなくなった。
そんな父は、本格的に壊れ狂っていった。
私の事を完全に母だと思う様になっていったのだろう、私と常に居たがるようになる。
「真沙子、一緒に寝よう。」
「真沙子、側に居てくれ…。」
それは、男が好きな女を誘う言い方だった。
あぁ、もう駄目だ。こうなってしまっては、側には居れない。
私は、逃げる様に全寮制の学校に入り、そのまま、家族にも中々会えない様な職につく事になる。
そう、私の今までは、「真琴」として生きて来れなかった。
だからこそ、「金」に執着した。
金は、感情という、不確かなモノでは揺らがない。
感情があるから、父は狂い、見たくない現実から逃げたのだ。
ならば、私は揺らがないモノに縋ろうと思ったのだ。
だから、父から離れた世界に来たとしても、いつ不安定な立場になるか、見捨てられるか怖くて、金に縋った。
だけど、どうだ?
ここに来てから、私は前程金に執着しなくなっていた。
実際、黒曜は私に、金に執着するならすれば良い。自分はサポートに徹し、私を守ると言うではないか。そして、それは実行されてきている。
いつか、気持ちが変わるかもしれない。
けど、それでも、今「私」が「私」で居られるのも、大切な人達が増えて来たのも、全て受入れてくれた黒曜が居たからではないか?
そして、私のこの心の中に生まれた感情は、「愛」ではないか?
そう思ったら、伝えたく為ったのだ。
きっと、黒曜は嬉しそうに微笑んでくれると分かっていたから。
◇
出掛けると聞き、準備を初めていた黒曜の腕に触れる。
黒曜は、そんな私の行動に喜びを笑みに乗せ、頭を撫でてくる。
「黒曜、私今とっても幸せよ?私の大切な宝物を自分で守れるんだもの。」
「なら我は、そんな真琴の心を守ろう。好きにやるが良い。」
ほら、黒曜は何時でも私の事優先。嬉しくなって、黒曜に微笑みかける。
「うふふ。なら、白曜に挨拶して、サッサと終わらせましょう。終わったら、皆でハイキングでもしましょ。」
「ふむ、楽しみが後に待ってると思うとヤル気が出るな。」
私達は、部屋を出て白曜の所へ向かう。
さぁ、壊れかけた世界を救ってやろう。
私には、皆の優しい気持ちで出来た力があるのだから。
「白曜、私と黒曜はちょっくら、世界救ってくるわ。」
ニヤリと不敵に笑い、白曜に告げる。
うん、今の私、最高にかっこいいわ!




