24.5+α
我の花嫁は、実に行動力に溢れ、そして、とても繊細だ。
人の機微に敏感で、我が気付けないような事にも容易に気付く。きっと、それは真琴の半生に関わってくるのだろう。
いつも笑顔を絶やさない真琴の、一線を引いた部分からも窺い知れる。
初めに比べ、真琴も我を受入れてくれてるのは感じる。だが、本当に弱い部分には立ち入らせないのだ。
我は、真琴の事が愛おしいのだと思う。
真琴に頼られるだけで、飛び上がりそうなほど嬉しくなるし、真琴が、我以外に触れてれば、とても辛く感じるのだから。
だから我は、真琴が本当の意味で、我の花嫁に為ってくれた時、真琴に真琴の弱い部分を聞きたいと思っていたのだ。
居たのだ…。本当に。
「なぁ、黒龍。お前の嫁御は何だ?」
「何だとは何だ?」
真琴が、女神達を人へと降格し、神界から追放した直後に再度倒れ、創世神の勧めもあり、寝台のある創世神の社へと移動していた。
慣れない力を使い、精根尽き果てた真琴が心配ではあったが、我が居たら、気配で落ち着かないかも知れないと思い、真琴をゆっくりと休ませてやろうと、ジークやオウも連れ、応接間で創世神へ今迄の事を話していた。
其処でコレだ。
「アレは異質だ。唯の人の身でありながら、黒龍と俺、そして精霊の加護を承け、尚且つ使いこなすとは…ありえん。ましてや、神を人の身に変えるなんぞ、俺でもお前でも不可能だ。」
それは、我も思ったが、真琴だからきっと上手くいくと信じてた。
真琴は、何か確信めいたものを抱いていた。だからこそ、創世神の加護も欲しいと言ったのだろう。
「真琴は、人の身で在りながら我の花嫁でもある。あれ位は出来るんじゃないか?」
「出来るわけないだろ!?元々形ある物を変異させるには、素から創り直す必要がある。なのに、あの嫁御は言葉一つでやってのけた。由々しき事態だぞ?」
こやつは、我の真琴を全否定か?ん?
『真琴は星に呼ばれたからだにゃ』
『真琴は救う為に呼ばれた』
「「救う…?」」
ジークとオウは、創世神に創り出されてから、あの星でずっと星の、世界の異変や改変を側で感じていたのだ。
我等より、より星に近しい。そして、何より、精霊とは自然そのものだ。世界の思惑もより間近で感じていたのだろう。
『元々、星は歪みを正せる力を持つ者を呼んでいたにゃ。けど皆、それぞれ心に抱えるものがあるにゃ。だから、応えられなかった…にゃ』
『私達の声も聞けず、力の使い方も分からない…。だから、焦った星は干渉を初めたの』
ふむ。世界が本気で干渉を初めてしまえば、我の様に総量で観てる神には気付け無い。
『真琴には、内緒。真琴には触りしか話してない。』
「少し覗いたが、あの嫁御、心に傷を負いすぎてる。自分を受け入れられてない。それの影響か、嫁御が少しでも好意を持ってる奴に頼まれたら断れないのだろ。自分で作り出した自分を固定するためにな。」
『更に星は、真琴のトラウマ?を弄ったみたいにゃ…自分自身を真琴の浄化の力で0にしてもらう為に。』
「そんな事は、星は出来ないだろ!?」
創世神が驚愕の声を上げる。勿論、我も驚いては居る。
『あの世界は、女神達によって意思を与えられてる…。女神達が楽に統治する為に。』
ふむ…、我が知らぬ所で女神達の干渉があったのだな…。
確かに、同じ神位にあるものが力を行使していれば、我にも感知できぬ部分が出てくる。
「…あの世界は、我等の管理下だったものから、一つの生命体へと進化を遂げたのだな…。ふむ。黒龍よ、どう見る?」
創世神が、我に意見を求める。答えなんぞ分かってるだろうに…。
「真琴の好きな様に…。全て真琴に任せると決めてる。我は真琴のサポートをする。星が、例え真琴を傷付けたとしても、真琴が許すのであれば、我も星を許す。」
そう、それはガルバ殿と話した時から決めていたのだ。
真琴は、母君やベルツ殿、ガルバ殿が居る今の世界を守りたいのだ。だとしたら、我に出来ることは、真琴がなるべく傷付かぬようサポートをする事だ。
「我は、真琴を信じるよ。」
我は、創世神にそう答えた。決まっているのだ、我の中では。
「黒龍がそう決めたなら、俺も嫁御のサポートに回ろう。可愛い娘の為だし、何よりあの女神達に任せてしまった負い目もある…。」
『創世神様…真琴には伝えたの、世界を救ってって…』
『女神様達の降した神託により、世界に魔王が生まれるにゃ…。人の恐怖や悪意で出来た魔王が…。もう星は、世界では魔王化を止められない…にゃ。』
人の恐怖や悪意とは際限がない。その矛先は、本来であれば魔王に仕立てられた我であった筈…。が、我が神気を纏っているが故、負の感情が向かう矛先が無くなってしまった。
故に、あの世界に溢れてしまった気持ちをぶつける為の、依代が必要…。
それに選ばれるのは………
「魔王になるのは、異世界からの人間か。」
「星が助けを求めて召喚し、助けてくれなかった…星からしたら裏切り者が、矛先候補…とはね。黒龍、嫁御は自身の同郷者を全て把握してるのか?」
「していない。そもそも召喚自体、ランダムみたいだからな…。」
今、あの世界にはどの程度異世界人が居るのか…。早急なる対応が必要だな。
「創世神、水鏡の準備を頼めるか?」
「勿論。俺も探そう!」
創世神は自身の側使えに指示し、通常より大きな水鏡の準備をさせる。確かに、2柱で覗くのなら大きい方が、探しやすくはある。
「よし、探そう」
2柱で水鏡を覗き込む作業がはじまった。




