表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/42

10


 席に案内され、黒曜から優雅なエスコートを受け、全力でテンパった私。勿論、致命的なダメージを受けたわよ!

 第一、席についてから、黒曜は私から目を逸らさない!蕩けそうな笑顔を標準装備で見てくる。


 軽く拷問よね…。


 私は、居た堪れなくて店内に視線を泳がす。ついでに情報収集。情報がなければ対策も練れない。っていうか、見てこないで…!

 



 しかし、暫く周りの会話を聞いてると違和感を感じた。


 会話の内容は、ほぼ異性の話や流行の話、どこそれのお家問題…。王都に住まう人達は暢気なのか、魔物に被害を受けた事がないだけなのか、もしくは騎士団に信頼を寄せてるのか…

 …ってか、本当に魔王なんか出たの?魔物の「ま」の字も出て来ないけど…。喫茶店より酒場のが良かったかしら?


「黒曜、なんか周りの話を聞いてると、魔王が出現した割には魔物の数は別に増えてないみたいよ?会話の内容が軒並み世間話…」


 周りに聞こえない程度の声量で、コソッと黒曜に伝える。


「だろうな…。」


「だろうって…。何か知ってるの?」


「ふむ…。ここは人が多い。戻ってから話そう」


 黒曜は何かを知ってるみたいね。ただ、ソレを此処では話せないって事はかなり重要な事なのだろうと思う。


 なら、ここでの仕事は喫茶店のオススメを食べる事!それに尽きる!!!



「ん〜、このお茶とパンケーキみたいなの美味しい!!!」



 黒曜は私の様子を見て気になったのか、パンケーキを一口食べると、また一口また一口と、あっという間に皿を空にしてしまう。


 うむ、ドラゴンの口にも合ったらしい。


「我はこんな甘いパン食べた事ないぞ」


「まぁ、だろうねぇ。私イメージのドラゴンは生肉が主食だわ。」


「いや、我は食べなくても死なぬ故、基本物を食べた事自体数える程しかない。」


 何それ勿体無い!!!美味しい物を食べてないって、それだけで人生損してるわよ!ってか、ドラゴンだからドラゴン生かしら?


「黒曜…宿に帰るわよ…。」


「ん?何故だ?」


「貴方に、食べるという事がどれだけ尊いか教えてやらねばならぬようだ…」


「ま、真琴…?」


「さっさと帰宅準備!」


 パンケーキを黙々と私は食べると、美味しかったわーと感想を伝えさっさと会計して帰宅した。


 全てはこのドラゴンに、食とは何かを教えるためだ。


 そもそも私は、金の亡者でもあるけど、食の亡者でもある。給料の1/3は食費に費やしていた位には食に五月蝿い。


 現代社会の若者たちにも、声高々に言いたい!伝えたい!

 食事とは生きるという事であると!良質な睡眠と良質な食事、適度な運動は最高のパフォーマンスを発揮するには必要不可欠である…と!









「ただ今帰りました!」


 いそいそと宿に戻ると、おか…お母さんが奥から顔を出してくれた。


「あらあらまぁまぁ、もっとゆっくりして来て良かったのよ?まだ日も暮れてないし」


「お母さん重要な仕事が出来たの、厨房貸して下さい…。この黒いのに食事とは何ぞやという事を一から教育する必要があります。」


 目が座ってしまっている私を、あらあらまぁまぁと言いながら厨房まで案内してくれる優しき母君。


「此処ですよ。好きに使ってね。ただ、もう少ししたら夜の仕込みをするから、全部は使えなくなっちゃうかも…」


「ありがとうございます!大丈夫です。さっさか作るので!」


 先程購入した物の中にある、抱合せで購入した品々を黒曜に出してもらう。

 その中にある物からパッパッと選ぶと、宣言してやる。


「黒曜、さっきのパンケーキみたいな物より数段美味しいパンケーキをお見舞いしてやるわ!それを食べて美味しかったら、食事を蔑ろにしない事ね!」


「あ、あぁ…」


 目の色が変わってる私を、若干引きつつ同意したであろう黒曜を放って、私はひたすら卵白を混ぜる混ぜる。


 途中、砂糖みたいな奴を投入し、更に混ぜる混ぜる。すると、角が立つので、小麦とバター、卵黄、少量のミルクを混ぜた中に半分に分けた卵白というか、メレンゲを投入。

 2回目はサックリと混ぜ合わせたら、陶器の器にお湯を入れ、鍋にのせて焼いていく。


 

「よしっ!黒曜お皿頂戴!」


 黒曜からお皿を受け取ると、パンケーキと木苺みたいな果物を潰したペーストを横に添える。


「有り合わせだけど、真琴特性スフレ風パンケーキよ!」


 辺りにフワンっと甘い匂いが満ちる。

 それに釣られ、従業員や女将…お母さんも厨房に集まってきた。


「さぁ、黒曜食べなさい!スフレ風だからすぐ萎むわよ!」


「あぁ…、いただきます…。ん、んん!」


 黒曜は、一口含むと、其処からはまさにガツガツといった感じに食べ始めた。


 お母さん達も興味津々みたいなので、次々と焼いていく。

 


「あらあらまぁまぁ、こんなにフワフワで、口で溶けるパンケーキなんて初めてだわ」


「本当ですね、初めての食感です!」


 んふふ〜、中々好評ね!ただ、スフレ風だから直ぐ食べないとペシャンコになるのよね。スフレ系は時間との勝負だから、宿のデザートには使えないなぁ…。


「真琴、我はこんなに美味しい物は初めてだぞ!」


「でしょ〜?美味しい物を食べると身体が幸せ〜って訴えて来るでしょ?それが大事なのよ!最高のパフォーマンスを引き出す秘訣よ!」


 そんな会話をしてたら、お母さんがちょいちょいと私を呼ぶ。


「真琴ちゃん、また今度このパンケーキ食べたいわ」


「喜んで!」


 お母さんが、凄い幸せそうに笑うから、私もニコニコしながら了承した。やっぱり、美味しいは正義だわ!






 暫くすると、スフレ風パンケーキを食べた人達は、ニコニコしながら夜の仕込みをやり始めた。

 私達2人はお母さんに連れられ、奥の従業員部屋に通される。


「急遽用意したからアレかも知れないけどね、ここが2人のお部屋よ。必要な物があれば教えてね。」


 そこは寝室と、居間の2部屋で、そこそこの広さがある。

 室内は、純和風で馴染み深い感じである。私、この部屋好き!落ち着く…!


「お母さん、こんな広い部屋良いの…?」


「良いのよ、私もね前の経営者から引き継いだ時は此処に居たのよ。私のお古のお部屋だけど良かったら…ね?」


 お母さんの優しさに涙。何この人…尊い…。


「お母さん、ありがとう」


 んふふ〜と笑うと、お母さんは宿の仕事をするため、表へもどっていった。


 お母さん、本当優しい…。絶対幸せにする…!




後日、女将サイドの閑話をあげます。と、宣言して自分を追い込むスタイル

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ