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女将がお茶を人数分用意して、茶菓子まで出してくれた。
湯呑みまで再現するとは、女将中々の日本通ね。
「お気遣いなく」
「あらあら、若い子が遠慮なんかしないのよ。」
なんか凄いお母さん感。むず痒い…
「あの、女将はどうして此方の世界に?」
「うふふ、まぁまぁ焦らないの。取り敢えずお茶にしましょうね。」
女将はマイペース。この感じ、大学時代周りに聞いた帰省した時のお母さんと同じじゃない?
こう、何故か逆らえない空気感とか、良くいうオカンパワーだよね?わー!初体験感動!って、言うか!!
む、むず痒い…
しかし私以外に此方の世界に居る人って、どの程度いるのかしら?
全員が全員飛ばされた訳じゃないとは思うけど…。うーん…世界は広いわ。
「あらあら難しい顔して、真琴さんは真面目ねぇ」
「真琴は常に真剣だぞ」
黒曜、そこツッコむとこ違うから…。まったく…
「真面目と言いますか、此方に来てまだ日も浅いので色々な事でいっぱいいっぱいなんですよ…」
力なく笑うと、女将は驚いた顔をし、苦笑いしながら私の頭をポンポンしてくる。なんか、もうその瞳には困った子ねぇって感じの愛が込められてる気がした。
むず痒いし、なんかこみ上げてくるものがあるな…
「真琴ちゃん頑張ったね…知らない所来て不安だったねぇ…良いんだよ、ここでは力を抜きなさい。ね?頑張り過ぎたら疲れちゃうよ」
女将が私を心配してくれる。あぁ、「お母さん」ってこんな感じなんだろうな。
私は女将を見て、微笑む。大丈夫だよって思いを込めて。
「女将、私は幸せですよ。大変ですし、ハプニングで結婚したりしましたけど…女将に出逢えましたもん。」
「あらあらまぁまぁ、嬉しい事言うねぇ。真琴ちゃん、良ければ私の事はこっちでのお母さんとでも思いなさい。ここに来る子達はね皆疲れた顔して心配なんだよ…。それにね、同じ同郷なんだもの、気兼ねなく過ごして欲しいわ。」
「そ、そんな申し訳無いですよ!」
「うふふ、良いのよ〜。私もね、真琴ちゃんみたいな可愛い子が娘だったらぴょんぴょん跳ねて喜ぶわ〜。そうそう、私がこっちに来た時の事ね、真琴ちゃんの参考になるか分からないけど…」
女将は色々教えてくれた。私は、女将の話を聞いてどれ程苦労したのか、どれ程の別れを経験したのか考えると、過去を聞いて泣いてしまいそうになった。
女将が此方の世界に来たのは日本に大飢饉が来て間もない頃だった。その日食べるものを確保するのも大変だった。備蓄なんて、あってないようなもので、泥水をすすり、雑草を食べた事もある。
「余りにも貧しくて、口減らしの為に親に山奥に連れてかれ其れっきりだった。だけどね、神様は見てたんだろうね、気が付けば餓死寸前の私はこっちに来てたんだ。夢だと思ったよ…。」
そこで出会った貧民街の人達は優しく、餓死寸前だった女将に腹一杯ご飯を与え、この世界での暮らし方を教えた。
貧民街とはいえ、大飢饉の混乱期にある日本に比べれば全然裕福だった。
「けど、ある時おかしいな?って、当時同い年だった子よりも私の成長が遅いな…とは思ったのよ?だからね、怪しまれる前に色々な街に移動して、また何年かしたら移動してを繰り返してたの。だけどね、私は何十年経ってもおばあちゃんにならなかったのよ。」
そこから、女将さんはもう気が付いたら100歳超えてるのにまだこんなにピチピチよ?と私に笑顔で言ってきた。
「だからね、何か困った事があれば私に言いなさいね?若い子が、遠慮なんかしないのよ?」
「なんで、そんなに優しいんですか?」
「何でかしらねぇ、もう私も疲れてたのね。ここで旅館を営み始めて20年…、ずっと独り身でね、もう此処から移動しないといけないは分かってたんだけどね…。もう新しい所で頑張る元気がないのよ」
女将は、優しく悲しく微笑んでる。この優しい人の為に「私」は何ができるんだろう。
黒曜と出会い、ハプニング結婚をして、タイミングよく王都に入り込め、そこで騎士団長のベルツ様の優しさに触れ、何十件も宿屋は断られたけど、こんなに素敵で優しい女将に出会えて…なんて…なんて、「私」は幸せなんだろう。
「真琴よ、好きに生きろ。お主は我の妻だ。何でもお前の思い通りになる。大丈夫だ、真琴は間違えない、間違えても我がいる。」
「黒曜、私…、私に優しくしてくれた人達に幸せになってもらいたい。私が幸せにしたい。」
「あい分かった。」
私の願いを聞き届けた黒曜が私の手を取る。
あぁ、そうだこの人は黒龍で神だったなぁなんて、ぼんやりと思っていると、私の手の甲に黒曜が唇を落とす。
途端に、私の手の甲が光り輝く。
「さぁ真琴、これでお前は我の力も使える様になった。好きな様にするがいいぞ我、妻よ」
「だっからさぁぁぁぁぁ、こういう気障な事はやめてって!!!」
真っ赤になって怒ってる私は、恥ずかしいのか照れてるのか怒ってるのか最早分からないけど、女将がお腹を押さえて笑ってるから…まぁ、良いか。
「真琴ちゃんも、黒曜ちゃんもおっかしいねぇ。本当に、私の子に為って欲しい位よ」
「その提案、喜んで!!!今日から私は、ただの「真琴」として女将さんの娘になりまぁぁぁす!」
だってさ、こんな優しい人一人にしておけないし、私こんなお母さんなら大歓迎だからね!




