陽炎の騎士
すみません、自己紹介は次回に致します。
「とりあえず、このままやり過ごすぞ」
ヴァルドレッドとロウは、すぐ隣にあった樽の後ろへ隠れていた。
しかし、元から小柄なロウはともかく、全身煌びやかかつ岩のようにゴツゴツな鎧を纏ったヴァルドレッドには、隠れる樽があまりにも小さすぎる。
故に、店の前に並んでいた樽四つ前に並べて、ようやくその姿を隠していた。
二人は樽と樽の隙間から、通り過ぎていくかつての同胞を見据え、人混みで見えなくなるまで、じっとその場でやり過ごした。
「……よし、もういいだろう」
サッと立ち上がるヴァルドレッドとロウ。
そしてすぐさま、自分達の宿へ走り去っていくのだった。
……
かつて、ヴァルドレッドは王国に反逆する際、少しでも敵の戦力が落ちるようにと、一人の騎士が遠出に出るように仕向け、その隙をねらって王国に攻め入った。
その騎士がレイスである。
「もう生きてるってバレたんでしょうか?」
自室のドアを閉めながら、ロウは言う。
「そんな筈はねぇ、一応それなりの偽装工作はしてきたつもりだ」
ベッドにあぐらをかいて、ヴァルドレッドは言う。
彼女の言う偽装工作とは、足跡を残さず歩いたり、敵の目の前で瀕死の重傷を負った風に見せかけたりなど。
目についた者に、もう助からないだろうと思わせる方法だ。
実際は、横たわって動かなくなった民草の血液を自分の鎧に塗って、おぼつかない足取りで剣を杖代わりに立っていただけなのだが。
しかし、そのおかげで敵の指揮者はそう遠くまで歩けないだろうと思い込み、ヴァルドレッドはなんとか一命を取り留めた。
ロウが彼女を拾った時、既に瀕死のダメージを負っていたが、それでもその状態でそのような行動ができる辺り、やはり大騎士だと言わざるを得ないだろう。
「じゃあ、ただの偶然……ですか」
だろうなぁとヴァルドレッドは返す。
頭をかきながら眉を顰める彼女は、とても面倒なヤツに遭遇してしまった、といった感じだ。
よっぽど会いたくなかったのだろう。
しかし、それは無理もない。
故郷が一大事だというのに、自分はなんの助けにもなれないというのは、なんとも歯がゆい。
騎士としてもこの上ない恥だ。
きっと、その原因を作ったヴァルドレッドを恨んでいるに違いない。
「まぁ……これも因果だな」
もしも、お気にましたのであれば、ブックマークなどしていただけると幸いです。
皆さまの心に響くような、作品が書けるまで私は執筆していきます!




