森の中は危険ばかり。異世界果実は甘くなさそう。
さらに1日中崖下の森を歩いて、
異世界8日目の夜。崖下の森3日目の夜だ。
この森はステータスを開いていると虫が寄ってくる。
崖の上の森が異常だったんだな。この世界にも虫はいた。
羽虫を不快に感じるが、笑みがこぼれる。
俺は光源であるステータスを閉じた。
静かな森の中で、虫の音色を聞きながら、周囲を観察する。
光源がなくとも《暗闇慣れ》を発動しているのと十分見える。
水が、消費MP5になったおかげで、水不足に悩まされることはなくなった。
500mlポットボトルの量をイメージして、兜で飲んでいく。
熟練度は規定値以上になっていてもカウントされる。
ひょっとしたらさらに貯めることで特典がある可能性がある。俄然、やる気が出るな。
それと、回復ポーション初級の味も見てみようと一回出してみた。
これも100mlで出したのだが、臭いも味も完全に青汁だった。
濃縮された青汁は、青臭くてとても飲みづらい。これも、何の気なしに飲めるものじゃないな。
回復ポーションは説明であったように、傷口にかける形で使いたいな。
水を、色々な出し方を試したりしていると、夜は更けていった。
翌朝、異世界9日目
今日も、日の出とともに、活動を始める。
といっても、森は霧のようなもので、日の光が半減してかなり薄暗い雰囲気だ。
MPの残りをチェックする。
MP47/50
・水:消費MP5 熟練度28
・汚水:消費MP5 熟練度13
・回復ポーション初級:消費MP15 熟練度4/25
・魔力ポーション初級:消費MP15 熟練度8/25
・毒ポーション初級:消費MP15 熟練度0/25
・痺れポーション初級:消費MP15 熟練度0/25
《反復行動》と《勤勉》《魔法知識》のおかげで、1回の発動で4の熟練度を得ることができる。
地道な作業をこなしていくのが好きな俺は、小さく微笑んだ。
ゲーム感覚で、コレクションを増やすような気持ちで、熟練度規定値を目指していく。
崖があった場所と、反対方向に進む。森の中で方向をどれだけ維持できるかが大切だ。
《歩行術》で角度がぶれないように歩けるのはありがたい。
《暗闇慣れ》と《観察》が頼りだ。早く動くより見逃さず動く方に意識をおいて置く。
10分ほど歩いて、明るさを取り戻してきた森の中。そこで、俺ははっと気がついて立ち止まる。
数歩先に突如として現れた、朝露がついて姿を現す、巨大クモの巣。
直径2mはありそうなクモの巣は、
足元だけに注視していると何の気なしに通りそうな、木と木の間に設置されている
大型動物でも仕留めるつもりなのか、と思われる大きさ。地球ではまずないだろう。
あたりを見渡すと、なんだか違和感を覚える場所が。
そこに大蜘蛛が居るのだろう。
どうもスキルで擬態しているか、《観察》で注視しても輪郭がわからない。
《観察》で看破できないということは
魔物もスキルを使ってくるということ。俺の《隠密行動》も絶対視しないほうがいいだろう。
スキルのレベルによって、抵抗する、される、となんてことがあるということだ
《観察》のレベルが低かったらこの違和感も感じず、くもの巣に絡み取られていた。
スキルだけに頼らず、少しの違和感も逃さないように目や匂い、五感を使って、警戒しないと。
静かに後退し、大回りして、足場の悪いルートを通り、
クモの巣がある地帯を乗り越えた。
朝露のおかげだ。夕方に通っていたら、あっさり引っかかっていた可能性が高い。
途中、果物と思われる実をつける木を見つけた。
黄色い果実で、梨にも柑橘類のようにも見える。
匂いがしないが、木を登らずとも、手が届く高さに生っている。
しかし、ここで無警戒で地球の経験を元に、食べてはいけないと《冷静》に考える。
甘い果実は鳥などに種を運んでもらうために甘くなる。
うっそうと茂る森林では遠くに種を運んでもらいたいがため、実が甘いものも多い。
毒がある実は害獣から身を守るための自衛のためだ。
魔物というものがあるこの世界で、自衛は必須。
毒のある食べ物は必然的に多くなる。
この場合両方が当てはまるので、どちらとも可能性は高いという結論に至る。つまりわからない。
目の前にある食べ物は食べられない。毒、ということにしておこう。
狐も言った、手の届かない葡萄はきっと酸っぱい。
毒ポーションの熟練度をあげれば解毒ポーションが手に入りそうだが。
しばらくは毒ポーションに回すMPがない。
まずは、魔力回復ポーションが早く貯まるため、そちらの熟練度を規定値までためたい。
最終的には平均的にあげるのだけれど、俺は上がりやすいものからやる。
十人十色あると思うけど、ここは性格が出るところだ。
さらに歩くこと1時間ほど、日が完全に昇りきった頃。それが居た。
動くモノが足元に居る・・・!
足が当たるかと思うほど至近距離っ!
この距離になるまで気がつかないとは、
気配遮断系スキルか!
《冷静》に後退。
重心を低くし、解体用ナイフに手を置いて、戦闘態勢をとる。
どんな魔物か!?
擬態等を警戒して、
入念に《観察》をする。
それは、こちらを見て、一鳴きした。
「ヴエエェェェェエ」
変な泣き声のアルマジロっぽい生き物?だった。