出会い
今日もまた、過酷な現場での憂鬱な1日が始まる。
昨夜も遅くまでプレイした、オンラインゲームの影響で寝不足な体を引きずりながら。朝礼に向かう。
「おい!上地遅ぇよ!」
田山がいつも通りの甲高い叫び声を発した。
「えー、おはようございます。今日の入庫は5本、出庫は、、、、」いやいやいや、朝礼は8時15分。俺が来たのは15分、遅れてなどいない。
こう言う理不尽なパワハラには本当にイライラする。
「と言う訳なんで、安全には十分に気を、、、」
田山の薄っぺらい安全危機管理の戯言も耳に入らず、俺は深いため息を吐き出した。
「えー今日から1階に入ってもらう」
田山が隣に居るゴツい人を促した。
「はい!青野です、宜しくお願いします❗」
これが青野さんとの出会いだった
口ひげと顎ひげを生やし。
噂に聞いていた、肉体的に過酷な食肉の現場に居ただけあって、胸板は厚く。
身長は俺と同じ180位。
見た目は40歳よりも若く見え、30歳でも通用しそうで。
この人は、怒らせたらヤバそうだなって言うのが第一印象だった。
「以上です!今日も1日ご安全に!」
「じゃぁ、青野さん行きますよ!」
田山がムカつくニヤケ顔で。やる気に満ち溢れて見える青野さんを引き連れ、偉そうに1階に降りて行った。
「あいつ大丈夫かよ?」
「えっ?青野さんっすか?」
「いや、田山だよ」
太った体に似合わない長髪。この現場の主、前川が。訝しげな表情を浮かべ話し掛けて来た。
「いや、実はさぁ、、、」