始まり
青野さんは
短気で
涙もろくて
ギャンブルとオカルトが好きで
裏表が無く
20歳年下にも頭が下げれる
何事にも一生懸命で熱い人でした
「おい、上地」
「なんすか?」
「明日から新人来るぞ、いきなりだよ面倒臭ぇよ」
現場長の田山が、相変わらずのウザい笑顔で。昼休憩終わりの事務所前、タバコを吸いながら話し掛けて来た。
「どんな人なんすか?」
「食肉の現場で現場長やってた、40近いオッサンらしいぞ」
「そうなんすか、人足りてないから良いんじゃないすか」
「いや、面倒臭ぇだろ」
俺より4歳上の田山は、面倒臭そうにタバコを吹かしながら。ため息混じりに、煙を吐き出した。
「お前、明日から面倒見ろよ」
「はぁ?嫌っすよ。フォークは乗れるんですか?」
「監督の話だと外フォークで乗ってるらしいよ」
「なら、大丈夫じゃないすか。何階やらせるんすか?」
「1階で良いんじゃねぇの?そうすりゃ俺、フリーに動けるだろ」
面倒な事はすぐ人に押し付ける田山の提案に、自分は楽なポジションに行くつもりだと。直感的に感じた。
「いきなり1階はキツイんじゃないすか?田山さんが1階入ってまだ半年位っすよね?」
「だって、佐藤さんと上田さんは動かせねぇし。前川さんに階代われって言ったら、あの人また休むぞ」
一番キャリアがありながら、自分の仕事しかせず。文句ばかり言って何事も正当化する前川さんの顔が浮かんだ。
「あぁ、確かに。うーん、あの人は無いすね」
「だろ!?」
田山がムカつくどや顔で同調を求めて来た。
「じゃぁ、1階で良いんじゃないすか?田山さん、頑張って下さい」
「なんだよそれ、皆で面倒みんだよ!」
田山の甲高い声にイライラしつつ、自分の受け持つ2階に向かうエレベーターに乗り込んだ。
「良いか!明日から来るかんな!」
これから始まる午後の仕事の憂鬱さと、明日から来る年上の新人に少し興味を抱きつつ。俺はエレベーターのボタンを押した。