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カンティニ編6





「ふー。危なかった。」



 男が死んだ直後ダンジョンが揺れ始めたので急いで少女を回収し、転移魔法で拠点に帰った。



 ここは有り余るお金で買った屋敷。カンティニの中でも中心から遠く離れた人気のない場所にぽつんと建っている。


 築90年とかなり古い建物と言うのもあり広さに対してかなり安かった。



 その屋敷の中でも一番綺麗な部屋のベットに少女を寝かせた。



〈じゃあこの子が寝てる間に済ませちゃったら?〉



 そういう訳で今は少女、ノアの付けてる隷属の首輪やら手枷やらを取っているところだ。


 基本、隷属の首輪は主人以外は取れないがその主人が不在の今ならただの鉄製の首輪と化す。



 一通り外し終わり手足の火傷と服からはみ出て見える拷問により出来たであろう無数の傷の治療にあたろうとした時に気付いた。



 「…爛れが治りかけている。」



〈凄いね。みるみるうちに消えていくよ。手足の穴も塞がっていってる。〉



 だが、その治り方に違和感がある。普通の光魔法によるものでは無い。それに、爛れがあった場所には恐らく元々あったのであろう拷問傷が出てきた。


 光魔法ならこの傷も無くなるはず。これはまるで、そう、まるで時間を戻しているようだった。



 聞いたことも無い治癒法。エクストラスキルか何かだろうかと思案しているとノアと目が合った。目覚めたようだ。




「「………………」」




 いや、なにも言わねぇのかよ!

 目覚めたら急に知らないところにいたら何かしら反応するもんじゃねえのか?

 なにか言うかなって思って結構待ってたんだけど。


 脳内でツッコんでいるとノアは無表情のまま口を開いた。



「……ご主人様は」


「ああ、あいつね。

 あれなら俺が殺したよ。」



「…承知致しました。」



 そう言うとノアは素早くベットから下り、俺を正面にして跪いた。



「"ノア"の所有権は貴方様に移りました。

 権利は貴方様が死亡なさるか放棄した場合のみ破棄されます。」



 ノアは淡々と告げる。


 まるでこのやり取りを何十回何百回と続け来たように流暢に。まるで人間の皮膚や仕草を完璧に再現した機械のように無表情で。



〈やっぱりかなりキテるね〜。〉



 奴隷は今まで何百人と見てきたがここまで染み付いているやつは初めてだ。


 見る限り歳は13、14ってとこか。


 10年やそこらでこうなったって事は、まあ世間一般に悲劇と呼ばれるくらいの境遇だったであろうことを想像するのは容易かった。



〈僕はノアちゃんのステータスが気になるなー。称号を見れば大まかな出来事も分かるかもだし。〉



「…取り敢えず顔を上げてベットに座れ。」



「はい。」



「お前のステータスを見せてくれ。」



「…はい。

 大変申し訳ありませんが私でも詳細を見ることが出来ないものがいくつか御座います。ご了承くださいませ。」



 そして俺達はまたもや驚かされた。



-----------

名前:ノア

種族:人族

Lv127

体力:15000/15000

魔力:10000/10000

物攻:3200

物防:5200

魔攻:9400

速度:3000

精神:7000

スキル

魔法:闇魔法Lv9

武術:合気道Lv9

特殊:偽証

並行思考

エクストラスキル

隠蔽師 破壊魔法 催眠術 時間再生

称号

忌み子 怨嗟を聴く者 憎悪し者

守りし者

-----------


合気道:Lv9

相手の力を利用して投げ技や固め技を決める武術。

攻撃力は相手の物攻に依存。尚、相手にダメージが入らないようにも出来る。


隠蔽師:EX

あらゆるものを隠蔽する。

相手が対になるスキル[看破EX]を持ち、精神のステータスが上回っている場合のみ見破られる。


破壊魔法:EX

対象を分子レベルにまで分解する。

対象の魔力が自分の2倍以上ある場合、無属性魔法と同じ効果になる。


催眠術:SS

相手と目を5秒以上合わせることで催眠をかけることが出来る。

自分の精神の値以下の相手にのみ有効


時間再生:EX

詳細不明


怨嗟を聴く者…この世に生きるもの全ての怨嗟の声が聞こえる

特典:憎しみを持つものの場所や考えていることが分かる。憎しみが強いほど見つけやすい。聴こえなくすることも出来る。




 Lv127だと?!しかも俺のものとなんら遜色のない程強力なスキルの数々。



〈特に破壊魔法っていうのが段違いだねー!これ、魔力が自分の2倍以下なら無条件で破壊できるってことでしょ?エグイなあ。

 催眠術も僕達まあまあ危なかったね。〉



 間違いなく今まで見てきた人族のなかじゃトップクラスの強さだな。

 ひとつ異彩を放ってるやつがあるが。



〈時間再生かー。時間操作系ってこと?それってもう最強というかチートじゃん。なんで戦った時につかってこなかったんだろ。〉



 ともかくこのステータスでより疑問が大きくなったな。



〈うん。なんでこんな子が奴隷なんかにされてるか、だよね。〉



 ああ。境遇に関しては本人から聞いた方が早いだろう。



〈でも辛いんじゃない?称号見る限りろくな事がなかったでしょ。〉



 それは、そうだな。 無理に聞かないでおくか。

 


「ノア。この[時間再生]について何か知っているか?」



「はい。私が把握している限りではこのスキルは常時発動されているタイプのスキルで御座います。


 …効果は、身体をベースとなっている状態に保つ。というものだと思われます。」



「ほう?」



「現在は今の身体の状態がベースとなっておりますので、この身体が傷つくと時間が巻き戻るようにして傷が治ります。

 その代わり一部の傷はベースになった時には既にあったものなのでそれが癒えることはありません。」




〈なるほどねー。ある意味、諸刃の剣みたいなスキルだ。

 今見えてるのは腕の傷だけだけど、それでさえ痛々しいし。

 この様子じゃ常に身体中に痛みが走ってそうだね……〉



 ノアは一瞬、ほんの一瞬何か考える素振りをした。



「……そして、このスキルによって老いることも無くなりました。」



「!老いすらもか。」



「はい。」



「つまりお前は見た目以上に長い月日を過ごしているということか。」



「…はい。老いなくなったのはもう数―――」



「…!おい。」



「…はい。どうかいたしましたか?」



〈フロー?どうしたの?〉



 気づかなかったか?こいつ今、目が虚ろになったぞ。



〈え?急に何さ?〉



「…ノア。直ぐに偽証を解け。それと痩せ我慢もやめろ。」



「…………。」



「早く。」



「…はい。もうしわけ、ありませ…ん―――」



「おっと。」



 そう言った瞬間。ノアの体が前のめりに傾く。


 俺はそれをキャッチし再びベットに寝かせる。



 ヒューヒューと苦しそうな呼吸をし、汗が滲み出て顔色が悪くなっていく。

 額に手を当てると、どんどん熱くなっていくのが感じ取れる。



〈これ、どういうこと?〉



 もう1回ステータスを見てみるか。


-----------

名前:ノア

種族:人族

Lv127

体力:200/15000

-----------



〈これって……〉


 ノアは今までの経験からだろうな。体の異常を外見や行動に出さないよう癖付いているようだ。

 ご丁寧に偽証までして悟られないようにしてたみたいだな。



〈なんで…〉



 さあ?どうせ今までのご主人様とやらがなにか仕込んだんじゃねえのか?


 俺が抑えないよう命令を出したから蓄積されたものが一気にきたようだな。



〈…………〉



 怒るなとは言わないけどな。とにかく今は治療に専念するぞ。



〈…そだね〉




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