6、
しばらく私が行動に迷っていると、少女が言った。
「先生。
家の中に入って。
窓を閉めてください」
「君は……君も、中に……」
「言わないでください」
少女は首を振った。
「わたしを中に、招かないでください」
「……」
私はなおも迷ったが、結局は言う通りに家の中に戻った。
一階に降りると、いつも少女と言葉を交わす場所、板を打ち付けた窓の前に立った。
少女の声が言った。
「やはり、わたしは怪物になってしまったようです。
先生の姿を見たとき、わたしの心は、先生を襲うことしか考えられなかった」
「……」
「先生をわたしたちの仲間にすることは、先生に音楽を捨てさせることなのに。
それだけは、したくないのに」
「……」
「……」
「……」
「先生、お願いです。賛美歌を、弾いてください」
「分かった」
私はピアノの前に座り、一心不乱に弾いた。
しばらくして、フルートの音色が聞こえてきた。
どのような奇跡なのだろうか、その音色は美しかった。少女の耳は人間の音楽を不快に思っていたはずだし、その楽器はつい先ほど吸血鬼の心臓を突き刺すために乱暴に扱われたばかりのはずだが、それでもなお。
美しかった。
私は考えるのを止め、弾き続けた。
一晩中。
私のピアノと少女のフルートの音楽が、私の世界を満たしていた。
その夜、私は疲れることを知らなかった。
ほとんど休憩も取らず、弾き続けた。
だがやがて、気づいた。
夜が明け始めている。
なのに。
フルートの音が続いていた。
天窓から入る光は、ついには太陽の光を内包し始めていた。なのに、少女のフルートの音が続いていた。
私は愕然として、ピアノを弾くのを中断し、板を打ち付けた窓に駆け寄った。板に手を叩きつけ、言った。
「おい、やめろ!
吸血鬼は日光の中では死ぬはずだろう。
いつまでそこにいる!」
フルートのメロディが、ためらうように少しの間、弱くなった。
だが、すぐ意を決したように強くなった。
毅然として、賛美歌のメロディを奏で続けた。
「誰も君を責める者などいない!
何も愛し続ける必要などないんだ!
愛せなくなったなら、別の愛を探すのが自然だ。愛し続けることなど、結局は不自然なんだ。死んでまで愛する必要は、君にはない! やめろ!」
私がいくら言葉を続けても、フルートのメロディが止むことはなかった。
やがて、メロディが乱れ始めた。音に苦痛が混じった。
唐突に止まったかと思えば、弱々しく再開して、また止んで、また弱々しく再開した。
私は、はっとして、ピアノの前に駆け戻った。
それから、私は弾いた。
弱々しく消えていく彼女のメロディを、最後まで支えるために。
彼女の愛を、肯定するために。
そして、彼女の音楽は消えた。
その後も数時間ほど弾き続けてから、私は鍵盤から指を離し、よろよろと床に伏して眠りに落ちた。
昼の光の中で目覚めた後、私はためらったが、ようやく決心して二階に上り、出入り口にしている窓から外へ出た。
彼女がいたはずの場所には。
異質な灰の塊と、その中に埋もれて、銀のフルート。
私は灰を見つめ、言った。
「君は最後まで音楽を愛していたよ。
私などよりもずっと」
少女の灰とフルートを、私はピアノの位置から一番近い窓のすぐ外の地面に埋めた。