アサミヤ・コウタの身の丈に合わない思想
一月某日――
辺りはすでに静寂に包まれている
窓から覗いた暗闇はそれを証明する
明るさを一段階無くした古い型のライトは少し頼りなく光っている
部屋に聞こえるのは音を抑えたラジオから誰だか分からないパーソナリティーの声とシャーペンを動かす音だけ
「んー 疲れたぁ…」
肩の疲れを癒すように軽く伸びをする
時間にしたら大して たっていないと思うが勉強というものはどうにも時の流れが遅く感じる
「意味あるのかなぁ… こんなことやって…」
前から疑問になっていたことを思わず口に出してしまう このまま勉強して受験に挑んで仮に高校に受かったとしてそのまま大学とか就職とかしてその先に残っているのは……多分平凡かそれ以下の人生だろう
はっきり言ってそれは絶対に嫌だ
たった一度きりの人生なのに平凡に過ごすなんて死ぬほど嫌だ…いやむしろラノベの異世界ものみたいに転生したい
だけど
こんなのはワガママで勉強をしないための言い訳だ
「はぁぁぁぁぁあ」
これから先に待つ 嫌なことでも楽しさを見つけていかないといけない にため息をつかずにいられない…
「まぁ 考えてても仕方無いか」
気分転換するためにリビングに向かう
家族…といっても父親の一人だけだが もう寝ているようだ
息子が勉強しているのになんて薄情だ
と怒りかけたが父が仕事しているときも先に寝ているので許すことにした
一応起こさないように音量を抑えてテレビをつける
映るのはニュースを読むアナウンサー
番組表を確認するもあるのはニュースだけ
時間も時間だししょうがないか
録画してあるバラエティ番組を見ることも考えたが見たまま戻れなくなりそうなのでやめておいた
『――それでは次のニュースです 昨日………』
無機質に流れる映像を無関心で眺める
心なしか最近は暗いものが多い気がする…テロや殺人や放火…etc. 明るいニュースといえば芸能人の結婚くらいだ だけど興味のない人にとっては心の底から どうでもいい
適当にチャンネルを切り替える
あるチャンネルでふと指が止まる
魔法―― 建国――
画面には見慣れないそんな言葉が写っていた
興味本位でテレビを凝視する
簡単にまとめると世界で唯一魔法を研究していた島が国連加盟国による建国をしたそうだ
「これだ…!」
思わず口にして立ち上がっていた