皆で修行
俺達は冒険者ギルドから出て宿屋に向かう。これからの事を相談しようと思ってるし、しばらくこの町に滞在することになるだろうからな。ブランに言うにはゾランさんの所に泊まればいいと言われたがなんか気を使いそうだからやめておくことにした。
宿屋に行くと宿の人は暇そうにしていた。そりゃ泊る商人や、冒険者がいないんだもんな。その事を考えても宿屋に泊まった方が宿屋の人も助かるだろう。
今回も3人部屋と2人部屋を取ってアリアとシータに3人部屋の方に来てもらった。
「さて、じゃあこれからの話をしようか。」
「ダイゴ様本当に【アンデットカースドラゴン】を倒すおつもりですか?」
アリアがやれやれっと言った感じで俺に言ってきた。
「当たり前だろ。こんな状況だったら倒そうと思うだろ。」
「そりゃダイゴ様はブランさんとその弟さんの為っていうモチベーションがおありでしょうけどね。」
「何をいってるのかな?ちみは。」
「はいはい、分かってるのでもう言いません。しかし本当に私達だけで倒せるんでしょうか?」
「と言うか勇者である俺が倒せなかったら後はS級の冒険者が来ないと無理なんじゃないか。」
「そうじゃな、恐らく倒せるとしたらそれぐらいの力を持っておらんと無理じゃろうな。」
俺の言葉にブランも賛同してくれる。
「俺は倒すだけだと何とかなるとは思ってる。」
「そうなんですの?」
「まぁ最高位の魔法をぶち当てたらちりも残さず消し去ることは出来ると思うんだけどね。」
「それはまた・・・。」
「ただ問題はそいつが鉱山にいるってことなんだよな。そんなとこで魔法ぶっぱなしたら、周りにも甚大な被害が出るだろうな。もしかしたらもう採掘できなくなるかもしれないし。流石にそうなると目的が変わってくると思う。
でもそう言えば【アンデットカースドラゴン】を倒しても、もしかしたらもう魔素がなくなって魔石とか取れなくなったりするのかな?」
「どうじゃろうか、それは倒してみない事にはわかりませんな。しかし倒さない限り採掘も出来ないから同じ話でしょうな。」
ブランの言葉を俺も考える。そうだよな、結局【アンデットカースドラゴン】がいる限り鉱山には入れないんだし、倒す以外の選択肢はないか。後はどう倒すか、だよな。
「どうやって倒したら一番いいんだろうな。その【アンデットカースドラゴン】の核の玉だけを狙って攻撃出来たら一番いいんだけど、当然そこの守りは厳重にしてるだろうし。その核がどこにあるかわからないから狙い撃つのも難しいかな。気配とかあったら調べられるんだろうけど、難しいな。」
レントゲンみたいに体を透視できたらいいんだけど、そんなスキルはないし。
「後は【アンデットカースドラゴン】がどんな攻撃をしてくるかだよな。
【ガイアドラゴン】の力を取り込んでいるんなら土魔法は使ってくるだろうけど他の攻撃もどんなのがあるかわからない。イメージ的に毒吐いたり、呪い掛けたりしてきそうなんだけど。」
「どうでしょうか。わしも残念ながら【アンデットカースドラゴン】とは戦ったことがありませんからな。」
「でも毒吐こうが、呪い掛けてこようが支援魔法で防いでいたら問題ないとは思うんだけどね。
やっぱり体を地道に削って核の玉が見えたらそれを攻撃するって事しかないかな。」
「そうだろうな。」
ガイも俺の案に賛成らしい。
「とりあえずしばらくは戦い方を考えつつ色々修練積んでいこうか。アリアとシータもレベル上げたり、新しいスキルを会得して、力を付けた方がいいだろう。俺もその間にどう戦うか考えておくから。」
「わかりましたわ、もう決まったことですものね。」
「シータも頑張る。」
「俺ももう少し必殺技とやらを作ろうと思う。」
「わしも土魔法以外の戦い方を考えようかのう。」
俺の言葉に皆が答えてくれる。当面は力を付けることを考えよう。
まずはアリアとシータの武器でも見に行くか。
「じゃあとりあえずアリアとシータの武器でも見に行ってみるか。あっ、でも最近鉱山にいけていないんだったら、この町で武器を作ったりもしてないのかな?」
「どうでしょうか。以前に作ったことがあるものもあるでしょうし、とりあえず覗きに行ってもいいと思いますがの。」
ブランがそう言ってくれたので折角だしどっかの武具店に行ってみるか。
俺達は話をまとめて宿屋から出た。ブランはこの町に詳しいみたいだし、お勧めの武具店に行ってみることにした。
町中をしばらく歩き1つの店の前に到着する。店構えはゾランさんの所とそう変わりはない感じだった。
「ここがこの町で一番大きな武具店ですじゃ。」
ブランがそう言って中に入って行った。俺達も続いて入って行く。店の中もゾランさんと同じところぐらいしかないんだけど。もしかして?そう思ったらブランは下に降りる階段の方に行って、そのまま階段を下りて行った。やっぱり地下に売り場があるみたいだな。俺達も続く。
地下に降りるとかなり広い空間が広がっていた。そしてそこには多種多様な武器や防具が所狭しと並べられていた。
うわ~、壮観だな。まだこんなに武器とかって売ってあるんだ。なんだか目移りしそう。
「とりあえずアリアとシータは自分が使いたい武器を選んでくれ。俺達はどうしようか?武器を買い替える?」
「それもいいかもしれませんが、【アンデットカースドラゴン】を倒してから材料を持ち込んで職人に作ってもらうっていうのも良いかもしれませんぞ。」
ブランがそう答えた。オーダーメイドか。それもいいな。今のところ剣はあまり使ってないし、自分専用の武器を作ってもらえるんだったらそれの方がいいかも。
「俺は少し考えてることがあるから見て回ることにする。」
ガイがそう言った。ガイも剣以外も一応使えるし、何かあるのかもしれないし放っておこう。
とりあえず俺はアリア達と一緒に動くかな。俺が教えるんだったら俺も同じ種類の武器を買わないといけないしな。
そう言う事で店の中を俺達はそれぞれ自由に見て回った。
「私これが良いですわ。」
しばらく店の中をウロウロしてアリアが手に取ったのは鞭だった。しかも先がトゲトゲしてるやつ。
「鞭を選ぶって・・・。」
「ダイゴ様何をお考えですか?あえて詳しくは聞きませんが。
鞭って優秀って聞きますわよ。離れていても攻撃出来ますし、広範囲に振るったり、相手に巻き付かせて動きも封じたりも出来ますしね。」
「相手に捕まれて引きずり倒されたりしないか?」
「あら、私ちゃんと考えがありますの。」
「へぇ~、まぁアリアがそれでいいって言うんなら別に俺がとやかく言う事でもないしな。
確かスキルだと【操鞭術】って言うスキルで、俺も教えられるはず。」
「じゃあ決まりですわね。」
アリアは鞭を使う事を選んだ。そう言えばシータはどこに行ったんだろう。
そんなことを思っていたらガイがシータを連れて俺のところにやってきた。
「シータどこ行ってたんだ?」
「あのね、シータもどれ使うか決めたの。」
シータはそう言って両手に持ったナイフを俺に見せた。
「ナイフの二刀流ってこと?」
「そう、ガイと一緒。」
シータがそう言ったのでガイを見るといつものロングロード以外にもう一本短剣を持っていた。
「ガイも短剣との二刀流にするの?」
「あぁ、俺の場合は盾を持たないからな。剣も両手で持つことはないから片手が空いてるし。手数を増やしたり新しい技を作ったりできるかもしれんしな。」
ガイはそう答えた。なるほどね、ガイも剣術はレベル10だし、新しいこと始めてもすぐに憶えてもレベル上がるだろうしね。シータもナイフの二刀流か。スピードもあるしいいかもな。
後は防具か。
2人の使う武器も決まったので防具も一緒に見ることにした。
でも2人の体に合いそうな防具が見当たらなかった。2人共結構小さいしな。みんな大人向けの大きさだし。ドワーフ向けで小さ目の装備もあったけどゴテゴテした鎧だったし2人の戦闘スタイルにはあわなさそうだったのでやめた。防具も自分にあったやつ作ってもらえるんだろうか。
アリアとシータの武器とガイの短剣、同じ種類の一番安い武器を俺も合わせて購入して今回の買い物は終わりにした。【アンデットカースドラゴン】を倒してから新しい武器や防具の事は考えよう。打算的だけど【アンデットカースドラゴン】を倒したってことで安くで作ってくれるところがあるかも知れない。
次の日から俺達は本格的に修行をしだした。
ガイはまずは二刀流のスキルを憶えてからレベルアップを目指しつつ必殺技を編み出していた。今でも結構な数の必殺技を作っていた。ほとんど俺が言ってみたことを試してそのまま必殺技にしてるんだけどな。ホントに色々出来るもんだ。剣を当てた所が爆発するとか、刺突で岩を貫通するとか。割とめちゃくちゃな事を言ったんだけど全部ものにしてるのが凄いと思う。
後は新しいスキルを使える様になったりした。【瞬行】と言うスキルだ。目に見える範囲に一瞬で移動するスキルでヒットアンドウェイが簡単に出来るようになる。思ったんだが憶えれたのって持ってるスキルがレベル10だからじゃないのかなって思った。前の世界でゲームでもあったんだがあるスキルがレベルマックスになると新しいスキルを憶えるとかいう、あんな感じ。あるスキルとあるスキルを極めるとこのスキルを使えるようになりますって言うのがある気がする。そうやって憶えるスキルもあるような気がするし、また検証してみたいな。
そんな感じでガイはまた一段と強くなった。
アリアは鞭の使い方、回復、支援、水魔法のレベルアップを重点的にやっている。
魔法はひたすら使いまくったりしている。アリアは【MP高速回復】や【魔素吸収】を早い段階で憶えた。だからMPはそんなに高くないが回復が早いので今までよりも使う回数や、使える魔法のレベルが上がっているので効率よく魔法を練習できる感じだ。魔法は得意の様でもしかしたら【無詠唱】も使えるようになるかもしれない。
鞭の方も俺と一緒に練習したり、モンスターを狩りに行って順調に使えるようになっていた。
買う時に言っていた話だが、鞭を相手に捕まれたらどうするのかと言うのを水魔法で解決できないか俺に聞いてきた。なんでも鞭の周りに水魔法で膜を作っておいて鞭を掴まれても、その水の膜を動かして鞭を逃がせるように出来るんじゃないかって言われた。面白いと思ったので俺は【魔法作成】でその水魔法を作って教えた。ただ少し強力にして鞭の周りに水の層を作って、その層を高速で動かして触れたものを切り裂いたりできる様にしたり。鞭を水魔法で覆っているので魔力で好きなように動かせるようにした。名前は【水の女王】にした。俺の趣味丸出しだな。
シータは風魔法は適当にレベルが上がっていきそうだし、精霊魔法の方が使い勝手がいいので武器に関して集中的に修行した。
2本のナイフを使うってことで俺は悩んだけどアサシンスタイルで教えることにした。シータは【気配遮断】を持っていたし、基本ナイフって近づかないといけないから気配を殺して近づいて一撃で敵に大ダメージを与える方がいいかなって思ったんだ。シータもノリノリで俺の真似をして気配を殺してモンスターに近づいて一撃必殺を繰り返していた。その内【隠匿】とかも憶えそうな勢いだった。【暗殺術】のスキルは憶えだしたみたいだし。その内性格まで変わったらどうしよう。
「覚めることのない夢の中へ送ってあげる」とか言って相手倒し出したら・・・、俺じゃないしそんな事にはならないか。俺もそんなこと言わないけどな。口に出しては。
とまぁシータはなんだか思っていたのと違う方向に進んでいた。エルフっぽく弓を使ったり遠距離で精霊魔法を使って戦ったりすると思ってたんだけどな。1人のアサシンが完成しそうだ。
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