ドワーフの町 ザール
俺達は宿を引き払ってザールへ出発した。
この町を出れば後1日ぐらいで到着できる。特に急ぐ必要もないので歩いて俺達は町を出た。
しかし楽しみだな。ブランの弟さんに会うのも楽しみだし、何よりドワーフの町って所がまた興味が沸く。どんな街並みなんだろうか。洞窟の様な所にあったりしないのかな。
ブランには町の詳しいことは聞いていない。やっぱり初めて見て驚きを感じたいしな。
俺達の行程は順調だった。特にモンスターとも遭遇もなくやってこれた。
ブランがシータにねだられて人形を作って貰って、その人形に肩車をして貰ったりしていた。それを見たアリアが楽できると思って同じ様な人形を作って貰って肩の上に乗ってたがかなり揺れがあったみたいで気分が悪くなったりしていた。そうなんだよな、なかなか足代わりに人形使うって難しいんだよな。
「【水の駆け馬】」
俺はオリジナルの魔法を唱える。水の魔法で【水龍演武】をヒントを得て作った魔法だ。馬の形を水で作って使役する魔法だ。俺達の近くに結構な大きさの水の馬が出来上がる。水の龍を作れるくらいなんだから他の動物も俺がイメージできれば作れるだろうと思って作ってみた。身近な動物だと動きやフォルムが分かっているから作りやすいし、動かしやすい。どんな動物でも作れると思うけど他の動物作ってもそんなに意味はないしな。その動物を使って何かした方が色々と楽だ。この魔法も作って動かしている間結構なMPを消費し続ける。結構なレベルとMPがないと使い続けることは出来ない魔法だ。
「アリア、疲れてるんだったら、そいつに乗ったらいいよ。」
「まぁお優しいんですね。後で何かお礼を求めたりされませんか?」
「しないから。あんまりゆっくり進んでいると町に着く前に日が落ちるだろ。
アリアも頑張ればそいつ位なら作れるようになると思うぞ。」
「そうなんですわね。でもどう乗ればよろしいんでしょうか?」
そう言えば俺の作った水の馬には鞍や鐙の様なものはない。
俺が手を振ると作った水の馬の背中から、水のロープの様な物が伸びて来てアリアの腰回りに巻き付く。そしてそのまま水のロープはアリアを持ち上げある。
「きゃっ。」
アリアが声を上げる。水のロープはアリアの体を持ち上げて、水の馬の背中までアリアと運ぶ。アリアが馬の背中に乗るとスルスルと水のロープは馬の中に戻っていった。
「この乗り方はどうかと思うのですが・・・。」
アリアが何とも言えない顔していった。そう言われてもな。これが一番簡単に乗れると思ったんだけどな。
「シータも、シータも乗る!」
今の光景を見てシータも目を輝かせる。だからシータも同じように水の馬に乗せてやった。
2人を乗せた水の馬が歩き出す。俺が命令しているので手綱を引く必要はない。乗ってる2人が濡れてしまうことない様に表面も魔力で覆っている。しかも普通の鞍に乗るよりも尻も痛くなったりすることもないだろう。水で出来ているんだからかなりクッションが効いている。乗りやすい様に背中の形も少し変えてあるからな、上から落っこちたりすることもないだろう。
「これでしたら旅は楽ですわね。」
「でもそんなの乗ってたら目立つだろうけどね。」
「そうですわね、こんな馬に乗ってる人は見たことありませんわね。」
「アリアも使えるようになっても使うかは考えもんだと思うけど。変な通り名とかつくかもしれないぞ。」
「私でしたら『水の聖女』とか呼ばれるんでしょうか?」
「自分で良く聖女とか言えるよな。」
「まぁこの世界には聖人がいらっしゃるんですから、いいんじゃありませんか?」
「あぁそう言えば宗教国フランドベルドには聖人がいるんだっけ?」
「そうですわね、ホントに聖なる人かどうかは怪しいものですけど。」
「なんかトゲがあるね。やっぱりレスティア教とは何かあるの?」
「えぇ、あちらは私共のレスティア教の教示を真っ向から否定されていますからね。レスティア様もですね。ですのでレスティア教とは犬猿の仲と申しますか。そう言えばダイゴ様もお気を付けくださいね。」
「何が?」
「勇者様はあちらからするとレスティア様がこの世界に呼んだ人となってますから、色々と良くないことを思われているかもしれませんわよ。」
「そうなのか?俺は勝手に召喚されただけなんだけどな。しかも召喚したのはグラントの国王だと思うけどな。」
「私も良くは知りませんが、フランベルトでは勇者様の事をあまりよく思ってらっしゃらないみたいですよ。」
「そうなんだ、じゃあ俺はあの国いけなのかな。」
「まぁ、行きたいのですか?」
「折角だしね。この世界のいろんな国には行ってみたいと思ってはいるけどね。」
「行かれるんでしたら、勇者の事は隠しておいた方がよろしいかと思いますわ。それでも行きたいのでしたら行ってみても良いかと思います。」
「またやることなくなったら考えるよ。」
「勇者様がやることなくなったら世界が救われた後でしょうね。」
「救うことになるのかね~。」
ザールに向かいながらそんな話をした。アリアが仲間になってからガイやブランとは違った話が聞ける。この世界でも色々とあるもんだ。みんな同じ考えをしてるって訳ないもんな。
俺もまだ2つの国しか行ってない。元の世界でもそんな国を行き来していた訳でもないからこうして色んな所に行っていろんなものを見るのは楽しい。いろんな人や物があるんだし楽しんで旅したいな。魔王とかサクッと倒せたりしないかな。ってまだその魔王の影みたいなものも聞いても見てもないんだけどホントにいるのかな。いるんだったら何でこんなに静かにしてるのが不気味なんだよな。戦いの準備を整えてるとかなんだろうか。俺も強くなるしかないか。ザールでいい武器とか手に入れられたらいいんだけど。伝説の武器とかないのかな~。
そんなことを考えながら順調に進んでいく。途中昼ご飯を食べたり、休憩を挟んで進む。足が遅目のアリアとシータも水の馬に乗ってるしかなりのハイペースで進んでこれた。
「もうちょっとで着きますぞ。」
ブランがそう言った。俺は【水の駆け馬】を解除してみんなで歩く。少し向こうに山が見える、そんな丘の上にザールはあった。町の規模は遠くから見るとエデバラぐらいに見えた。そんなに大きくなさそうだな。なんか武器とか魔法具作ったりして、冒険者も良く来るって行ってたからもっと大きな町を想像してたんだけど。
「そこまでの大きさはないんだね。」
「あぁ、行けばわかりますのじゃ。」
ブランは俺の言葉にそう答えた。何かあるってことかな。
ザールの町も他の町と変わらず外周には壁があった。ただ他の町とは違って周りには何体もの人形が町を取り囲んでいた。防衛の為に配置しているんだろう。こういう所が違うんだな。なかなかに立派な人形だな。
門まで進むと門番の人は普通の人だった。ドワーフがいるかと思ったんだけど。俺達はいつも通り冒険者用の入口に進んでチェックを受けた。そこでは特に問題なく通れた。ドキドキしながら町の中に入ってみた。
町に中を見てみるがあまり他の町と変わらない気がする。それよりも少し人の数が少ないような気もする。そう思ってブランを見ると、ブランも難しい顔していた。
「えっと、とりあえず弟さん所に行ってみる?」
俺は難しい顔して黙っているブランに聞いた。
「そうですな、町の様子もおかしいですし。詳しく話を聞きたいところですしのう。」
ブランが答えた。やっぱり町の様子おかしいんだ。なんか活気がないんだよな。
俺達は人の少ない町をブランの先導で歩いた。歩きながら町の雰囲気を見るけど、どうも暗い印象を受ける。
ブランはある一軒の家の前で止まった。キースの所の様に店をやってるみたいで、ゾランの店という看板が出ていた。ブランはそのまま店の中に入って行った。俺達も続いて店の中に入った。店の雰囲気もキースの所の店に似ていた。ただ目線の高さとか少し低く設定している様な棚だったり陳列の仕方だった。置いてある品はぱっと見何かわからない。【鑑定眼】で見て初めて魔法具だと分かった。ブランの弟さんは魔法具を作ってるのかもしれない。
店のカウンターにはブランと似たドワーフが座って暇そうにしていた。
しかしブランの姿を見てびっくりしたように声を上げた。
「兄貴、兄貴じゃないか。」
そう言ってカウンターから飛び出してきてブランに抱き着いた。とても微笑ましい光景だ。
「お前も変わりないようだな、ゾラン。」
ブランはそう言いながら抱き着いてきたゾランさんを身体から離した。
「兄貴も無事でよかった。ずっと前に手紙が来なくなって心配してたんだぞ。」
「すまんかったな、わしも色々あったんじゃ。」
「でもよかった、ホントに良かった。」
ゾランさんは少し涙ぐみながらそう言った。
「男が簡単に泣くもんじゃないぞ。それにお前には聞きたい事や話したいことがある。
お前に紹介しておこう、こちらがわしの主とパーティの仲間たちじゃ。」
ブランはそう言って俺達を紹介してくれた。
「初めまして。俺はブランと一緒に旅をしている冒険者のダイゴです。ブランには色々とお世話になっています。」
俺はそう言ってゾランさんに挨拶した。
「あっ、俺はブランの弟のゾランと言います。この町で魔法具を作ってます。兄貴がお世話になってます。」
ゾランさんも丁寧に頭を下げて挨拶してくれた。
ゾランさんの見た目はブランとそっくりだ。双子と言っても通じそうだな。少し髪と髭の形が違うくらいでそこまで見分けがつかない。体の方は冒険者をやってるブランの方が少し大きいかな。ちゃんと俺には区別がつくがな。
「でも兄貴、主って?」
「うむ、その事も話す。落ち着いて話せるところはあるか?」
「あぁ。じゃあ皆さんもついて来て下さい。」
ゾランさんはそう言って一旦店の前まで行って準備中の札を出して戻ってきた。そしてカウンターの横の扉を開けて階段を下りて行った。地下があるようだ。
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