デモノプラント2
俺達は木々の間をすり抜け、森と呼べるほどの木々が生えている場所までやってきた。もう少しで【デモノプラント】も見えてくるだろう。とりあえずどんな奴かわからないから久々に【鑑定眼】でちゃんとステータスでも見ておくか。
そんなことを考えながら進むと少し開けた場所に一本の大きな木があった。ただ木と呼べるかどうか、幹はまるで花の茎の様だった。ただその茎は直径1m程ある。そこから何十本もの蔦が生えている。茎の一番上には花が咲いている。こちらも直径3mはあろうかと言う見たこともない花だった。色合いも赤とオレンジ、黄色を一緒くたに混ぜた様な奇妙な色の花だった。周りには枯れた木が何本も転がっていた。【デモノプラント】がこの辺に根を張ったから、他の植物は枯れてしまったのかもしれない。今は。【デモノプラント】に動きはない。アリアとシータには支援魔法を使っているし、俺達も気配を消すことは出来るからこちらには気付いていないみたいだ。
今のうちにステータスでも見ておくか。
名前:デモノプラント
種族:プラント族
レベル:62
HP:2788/2788
MP:2412/2412
STR:1152
INT:83
AGI:280
DEX:1642
スキル:
【幻影花粉 LV.7】
【縛り上げ LV.6】
【消化液 LV.4】
【増殖 LV.3】
称号:惑わす者 食人花
ステータスを見てみたけどあんまりよくわからないな。ステータスの値も当てにならないしな。AGIがなんのスピードかわからないもんな。花粉を撒くスピードなのか、広がっていくスピードなのか、蔦を振るスピードなのかとか。HPも蔦をいくら攻撃しても倒せるとは思えないし、本体攻撃したら一気に倒せるだろう。やっぱりこの世界はステータス値は当てにならないな。でもまぁスキルも大体こんな攻撃してくるだろうなっていう予測ぐらいでしかわからないか。まぁわからないよりはどういう攻撃を持ってるかわからるから対処は出来るぐらいか。考えたら俺は【八百万のスキル】を持ってるからモンスターが使うスキルも使えるんだよな。【幻影花粉】とか使ったらどうなるんだろう。他の使えないスキルと同じように何の効果も出ないんだろうけども。とても俺の体から花粉が飛ぶイメージが出来ない。もう今後【鑑定眼】で確認するときはレベルとスキル位確認したらいいか。
とりあえずこちらから仕掛けてみるか。
俺は【念話】を使ってガイとブランに指示を出す。とりあえず2人に突っ込んでもらって出方を見よう。俺の後ろにはアリアとシータがいる。何かあったら俺はこの2人を守らないといけないのでまだ動かないでおく。
ザッとガイとブランが木陰から出て【デモノプラント】へ向かっていく。
【デモノプラント】も2人に気付いたようで、蔦をくねらせ花から黄色い花粉を周囲に撒き始めた。結構な量と勢いで花粉が辺りを漂い出すが、支援魔法が掛かっているガイ達には通じない。同じ速度で【デモノプラント】に迫る。
【デモノプラント】も花粉に効果がないことが分かったのか、蔦をガイ達に向かって伸ばし始めた。それを見たガイ達は二手に分かれて伸びてきた蔦を剣と斧で切り裂いていく。蔦は固くはないようで簡単にガイとブランに斬られる。だが長さがあって少し切っただけではまだまだなくなりそうもない。斬ったそばから再生するとかはないみたいだけど。何本もの蔦が2人を襲う。花粉を無効化にしても蔦が厄介だな。
ガイ達はそれでも蔦を切り裂きながら徐々にだが【デモノプラント】の方に近づいていく。【デモノプラント】もいろんな方向から同時に2人に蔦を伸ばすが、ガイ達もかわしながらその蔦を斬る。
【デモノプラント】は焦れたのか自分の茎の後ろにあった蔦もこちらに伸ばしてきた。その蔦の先には蛇の口の様なものが付いていた。
あれってまさか。
俺がそう思ったらその蛇の口の様なものから液体が吐き出される。それを見たブランとガイが一旦後ろに下がる。ガイとブランのいたところにはその吐き出された液体が落ちて広がり音と煙を立てていた。あれが消化液か。
ブランとガイの後ろにはいつの間にか蔦が伸びていた。今の消化液で2人の気を逸らして蔦を伸ばしていたんだろう。そこまで知恵が回るとは思わなかった。でもBランクの魔獣だもんな。それぐらいのことはしてくるのか。
蛇の口が付いた蔦が何本も出てくる。あの本数から一気に消化液を吐かれたら避けきれないな。すると俺が思った通り【デモノプラント】は何本もの蔦から消化液をガイ達に向かって吐き掛けた。
「【水の壁】」
とっさに俺は水の壁をガイ達の前に張る。消化液は水の壁に当たり音と煙を出す。消化液でも流石に水を溶かすってことは出来ないだろう。そして俺も隠れていたところから姿を現す。今ので俺の事がバレただろう、魔法を使うと魔素に動きが出るから、魔素を感知できる魔獣には俺がいる場所がわかったはずだ。ここにいたらアリアやシータまで一緒に攻撃される恐れもあるから俺も【デモノプラント】の方に行って気を引いた方がいいだろう。
「主、助かりました。」
ブランが【念話】で俺にお礼を言ってきた。
「2人共蔦を対処しながら少し後ろに下がって。俺が蔦の動きを止める。」
俺も【念話】でガイとブランに伝える。
そして【倉庫持ち】から水を出しながら魔法を使う。
「【凍れる槍】」
何本もの氷の槍が【デモノプラント】へ向かっていく。その氷の槍を防ごうと蔦を伸ばすが、氷の槍に触れた所から凍りついて動かなくなる。俺は何十本もの氷の槍を連続して放つ。ホントは【凍てつく庭園】とか使った方が楽かもしれないけど、準備に時間がかかるしこういった開けた場所はなかなか範囲設定が難しい。仕方ないので【凍れる槍】をこれでもかって連射する。【デモノプラント】が消化液を吐こうが氷の槍が当たって凍り付き地面に落ちる。俺に脅威を感じた【デモノプラント】が周りから俺の方へ蔦を伸ばすが、ガイとブランが俺のところに来る前に処理してくれる。100本近く氷の槍を放ってやっと【デモノプラント】の蔦がほとんどなくなった。
「ブラン、人形で【デモノプラント】の本体を地中から引きずり出してくれ。」
「あい、わかった。」
俺の言葉でブランは岩の人形を一体作り上げる。3m位の岩の人形が【デモノプラント】へ向かって走り出す。地面には凍り付いた蔦なんかがあったが岩の人形はお構いなしに踏み砕いて進む。そして【デモノプラント】の元まで辿り着くと、その茎に手を回して抱き着く。それから力を入れて地面から引き抜くように茎を引っ張る。【デモノプラント】は抵抗して、蔦を岩の人形へ伸ばすが気にしない様子の岩の人形は更に踏ん張る。ブチブチブチと言う音を響かせて【デモノプラント】の本体である球根の様なものが地面から出てきた。大きさは直径3m位で、玉ねぎの様な形をしていた。
「シータ、あれを壊せるか?」
俺は大声を上げてシータに言う。
「うん、ププお願い。」
シータの声がしたと思ったら周りの気圧が下がったような気がした。
そしてシュッっという音がしたかと思ったら岩の人形が持ち上げてた【デモノプラント】の本体が上下真っ二つになって、下の部分が地面に落ちた。
マジか・・・。俺が前に使った風の上位魔法【烈風の死神】並みの威力があったな。しかも【デモノプラント】を持ち上げていた岩の人形は無事の様だ。俺が同じ事をしようとしたら多分岩の人形も半分になってただろう。あれだけの威力を狙った狭い範囲にだけ使えるって凄いな。精霊魔法ってホントに強いんだな。
本体を真っ二つにされた【デモノプラント】はしばらくもがくように動いていたが、その内くたっと力なく茎を曲げた。【鑑定眼】で確認したがちゃんと倒せたみたいだな。
「アリアとシータ、倒せたみたいだから出てきていいぞ。」
俺は2人にそう声を掛けた。2人に使っている【天狗の隠れ蓑】も解いた。
「はぁ、やっぱり皆さん凄いものですね。」
アリアがそう言いながら俺の方に来た。
「そうだな、しかしシータの精霊魔法には驚いた。」
俺もそう答える。
「いえ、それ以外もですわ。今の戦闘ほとんど訳が分かりませんでしたもの。」
「そうか?あれ、シータは?」
アリアと話をしたが、シータの姿が見えなかった。
「もじゃもじゃの人凄い。」
声を聞いて振り返ってみたら、シータはブランが作った岩の人形の周りをグルグル回っていた。
「もじゃもじゃじゃなくてブランだからな。」
「そうだ、ブラン凄い。」
ブランの作った岩の人形に驚いたのかキラキラした目でブランの事を見ていた。そうだな、凄いな。
ブランも人形を作ることに慣れて大分高性能のを作れるようになっている。俺の場合は趣味の部分が入ってしまって関節部とかを適当に作ってしまうんだけど、ブランはちゃんと考えて作っている。俺は魔力で何とか動くようにしてるが、ブランはあまりMPを込めなくても俺が作るのと同じくらいの人形を作れる。土魔法は同じレベルだけどこういう所に差が出るんだよな。今は多分俺の作る人形よりブランの作る人形の方が強いんじゃないだろうか。流石はブランだ。
「そうだぞ、ブランは凄いんだ。」
うんうん、と頷きながら俺もブランを褒める。
「シータもあんなの欲しい、作りたい。」
「う、う~ん、それはどうかな。土魔法と風魔法は確か相性があんまりよくなかったと思うんだけど。」
「そうじゃな、恐らくシータは土魔法は使えんじゃろ。」
俺の言葉にブランも同意する。
「えぇ~、そうなのか。」
がっかりするシータ。
「ただわしは人形を作れるが精霊魔法は使えん。
シータには人形は作れんじゃろうがププがおるじゃろ。」
ブランがそう言う。
いつの間にかシータの横にいたププが小さい体をシータの頬にすり寄せる。
「そっか、シータにはププがいるもんね。」
「そうじゃ、また人形が見たかったらいつでも作ってやる。」
「うん、ありがとう、ブラン。」
2人の会話を聞いていると孫とおじいちゃんの会話を思い出すな。ブランも意外に小さい子をあやすのが上手いんだな。良いおじいちゃんになりそうだな。その内結婚して子供作って家庭を持つのかな・・・。
「何黄昏ていらっしゃるんですか?」
そんなことを考えていたらアリアが言った。
「別に、何でもない。」
「ブランさんがいいおじいちゃんになりそうとか、そんなこと考えられたんでしょう?そしてその家庭へと至る過程を想像されたんでしょう?」
「上手いこと言った、ってことにはならないからな。」
「あら、手厳しいお言葉。」
ホントにアリアは読心のスキルを持ってないのか?ことごとく考えが読まれてるんだけど。それとも俺が分かりやすいだけなんだろうか。
「そんなことはどうでもいいから後処理して町に戻ろうか。」
俺は頭を切り替えた。
そう言えば今回どこの部位を持って帰ったらいいんだろう?本体は真っ二つに斬っちゃったし、花とか花粉が付いたものを町に持って帰るのもどうかと思うんだけどな。俺はそう考えながら【デモノプラント】の方に近づいて行った。周りの凍った所も溶かし始めたし特に苦も無く【デモノプラント】所にいけた。それで気が付いた。【デモノプラント】の消化液を吐いた蔦は本体の後ろから出てきた。最初から出てこなかったのはなぜかと思って少しそちらの方に歩いてみた。すると嫌な光景が広がっていた。
蔦に絡まった人の死体。それがいくつも転がっていた。ほとんどの人間は白骨化していたが何人かはまだ人としての形を保っていた。恐らくだが【デモノプラント】は幻覚を見せた生物を蔦で縛って本体の近くまで引き寄せて、消化液を掛けて少しずつ溶かして栄養を吸収していたんだろう。何人か人の形を保っていた死体を見ると何となく見覚えのある服装だった。こいつらって確かシータをさらった奴らか。3人はあの後こっちに逃げて来て【デモノプラント】に捕まったのかもしれないな。今日の話だからまだ完全に骨になるまで溶かされていなかったんだろう。
とりあえずこの中にギルドの関係者もいるかもしれないし、俺はそう思って白骨になった死体のそばにあった装備品や装飾品を拾って【倉庫持ち】の中に入れて行った。それからみんなの所に戻った。
「どうされましたか?」
アリアが俺の姿を見付けて声を掛けてきた。
「いや、あっちにちょっと嫌な光景が広がってたから。」
「まぁ、そうでしたの。」
アリアは俺の言葉を聞いただけで大体の予想が付いたみたいだ。
「とりあえず今回は【デモノプラント】の部位は持ち帰らず全て燃やそうと思う。【増殖】ってスキルを持ってるのが分かった。どこか一部分が残っててまたそこから増えても厄介だしな。」
俺がそう言うと皆了承してくれた。
お読み頂きありがとうございます。




