お買い物 その2
「そう言えば言ってなかったけど俺は勇者なんだ。」
シータをパーティに迎えたんだから俺の事も説明しておかないと。
「勇者?」
シータは意味が分かっていない様子で聞き返してきた。
シータは勇者とかは知らないのか。
「そう、勇者。でもその事はあんまり人に言わない様にしてくれ。」
「わかった。」
知らないなら詳しく説明しなくてもいいか。
「そう言えばダイゴ。こいつってまた子供じゃないのか?」
ガイが俺に聞いてきた。そう言えば俺はステータス見て知ってるけど、ガイ達は知らないもんな。アリアみたいな例があるし。
「俺が答えていいかわからないけど、見た目通りの年齢みたいだよ。」
そうガイに答えた。シータの年齢は12歳とステータスにあった。ハーフエルフがどう成長するのかわからないから見た目=年齢ってことになるかどうかだよな。
「そう言えばシータって【精霊魔法】が使えるよな?」
「何?」
「あらっ」
俺の質問にブランとアリアが反応する。
「うん、使える。風の精霊とは友達。」
そう言ってシータが手をかざすとシータの周りに緑色した丸いふわふわの玉が出来た。その玉には顔が付いていた。丸い目と鼻、口どこか子犬の様な印象を受ける。これが風の精霊か。
【精霊魔法】は結構特別なスキルだ。契約した精霊の力を使うことが出来る。俺もスキルを付けることが出来るが契約している精霊がいないので、そのスキルの力を行使することが出来ない。精霊と契約するのも一種の才能で、余程精霊との相性が良くなければ契約は出来ない。俺自身精霊と契約できるかはわからないな。
そして【精霊魔法】は精霊に自身のMPを渡して魔法の様な現象を起こしてもらう。その為普通の魔法と違って詠唱は必要ない。その上魔法の威力は高レベルの魔法と同じ位ある。精霊自身が周りの魔素を使って現象を起こしてるらしい。少ないMPで高レベルの魔法を無詠唱で使えるのと一緒だ。そんな力を持ってるからこの大陸まで1人でこれたんだろう。かなり珍しいスキルかつ非常に強いスキルなのでブランとアリアが驚いたんだろう。
「ブランは土精霊の加護と持ってるけど、精霊魔法は使えないの?」
「いや、わしらドワーフは元々皆土精霊の加護は持って生まれてくるんじゃ。ただその加護も土魔法が使えるようになる程度の加護じゃしな。」
ブランに気になったことを聞いてみた。そうなんだ。ドワーフは種族として持ってるんだ。じゃあエルフは風の精霊の加護をみんな持ってるんだろうか。でも本で読んだけど精霊魔法使える人って世界にほとんどいないって書いてたけどな。もしかしてシータが特別なんだろうか。
「風の精霊に名前とかあるの?」
「うん、この子はププ。」
シータが答えると、その風の精霊ププはシータの頭に乗ってピョンピョンと跳ねた。いいな、なんか可愛い。
「なるほど、風の精霊魔法が使えたからここまでこれたんじゃの。」
ブランも納得したように言った。俺もそこまで精霊魔法に詳しくないけど、確か身を隠したり辺りの様子を伺ったりできるはずだ。でも薬で眠らされたらどうしようもないよな。だから人さらいにあったんだろうけど。
「そうだね、即戦力として申し分はないと思うけど、そう言えばこれからどうしようか。
さっきの街まで戻るか、先に進むかだけど。でもシータの服を何とかしたいよな。」
俺はそう言ってシータの姿を見た。ここに来るまでに大変な思いをしたんだろう。服も結構ボロボロな感じだった。
「そうですわね。昨日伺いましたがこれからザールの街に向かうんでしたわね?でしたら一度町に行って服などを調達した方がよろしいかと思いますわ。」
「そうしようか、そこら辺の事はアリアに任せるよ。」
少しだけアリアがいてよかったと思う。流石に女の子の服を選んだりは出来ない気がする。
「おう、よろしく。アリア。」
「そうですわね、でもシータさんも、もう少し言葉遣いを直された方が良いかと思われますわ。これからの事もありますし。」
「そうだね、ちゃんとした言葉使いは出来るようになってた方がいいかな。使う使わないは別として、ちゃんと使えるようになってた方がいいだろう。そこら辺もお願いするよ。」
「わかりましたわ。私の事お姉様とお呼び頂いてもよろしいですわよ。しっかりと色んなことをお教えしますね。」
「わかった、姉様。」
なんか違う方向に行ってないか?人選を間違えた気になるんだけど。でも他に選択肢はないしな~。
「ダイゴの事なんて呼べばいい?」
「ん?ダイゴでいいけど。」
「いや、奴隷と言うことにしておくんじゃったら主と呼ばせた方がいいじゃろう。」
俺の言葉にブランが答えた。そう言えばそういう事になるのか。名前呼ばれると怪しまれるかな。
「じゃあすまないけど主と呼んでもらってもいいかな?」
「わかった、主。」
「ガイとブランはそのまま呼ばれてもいいの?」
「別に気にしない。」
「わしもじゃ。」
「だってさ、あの2人はそのまま名前で呼んでいいって。」
「わかった。のっぽの方がガイで、もじゃもじゃの方がブランだな。憶えた。」
そう思ってたんだ。まぁ言葉使いもこれからだな。ってシータともいつまで一緒にいることになるんだろうか。
「なぁ、シータとはいつまで一緒にいることになるんだ?」
「それはわかりませんわ。天啓で得た光景がいつのものかわかりませんもの。」
小声でアリアに確かめるとそんな答えが返ってきた。そうなのか、よくよく考えてみたらおっさん2人に少女2人、若者1人のパーティって傍から見たらどう見てもロリコン趣味の男が無理やり少女を仲間に加えたように見えないのかな。変なあだ名とか付けられそうでやだな。でもしょうがないか、一応世界を救う為なんだから。なんか勇者っぽくなってきて嫌なんだけどな。まだまだ冒険者やってたいな。
「こんなところにずっといるのもあれだし、町に向かおうか。」
俺はそう声を掛けて片付けを始めた。
片付けを済ませて俺達は元来た道を歩いて町に向かった。
町に向かう中色々とシータから話を聞いた。どんな風にここまでやってきたかとかの話を。
基本的には人目を避けて森や林の中を進み、木の実やモンスターを倒して食べていたらしい。結構野生児っぽいな。まぁ精霊魔法を使えるんだからそこら辺のモンスターなんて敵じゃないし、見つかることも少ないだろう。大陸と大陸の間の海は、たまたま助けた商人に連れていって貰ったらしい。モンスターに襲われたところを助けて、こっちの大陸に渡りたいと言ったらその商人の知り合いの船に乗せて貰えたとのこと。そこは良い人に助けられたんだな。だから警戒心がなかったのかもしれないけど。
そんな話をしながら歩いていると街が近づいてきた。
シータには俺が【倉庫持ち】から出したフード付きのポンチョを着せている。旅用にと色々と事前に買っておいたものだ。そう言えばと思ってあるスキルを思い出す。
「シータ、ちょっといいか?」
俺はそう言ってシータを近くに呼ぶ。
「なんだ?主。」
「ちょっとだけじっとしてもらえるか。」
俺はそう言ってシータの頭に手を乗せる。それから【偽装】のスキルを使う。するとシータの髪の色がありふれた金髪に変わり、耳も人族のと変わらないものになった。
【偽装】もこの世界に来てからずっと使っているからもう慣れたものだ。スキルを付けてなくてもこのスキルを完璧に使えるようになっている。前にガイ達のギルドカードを偽装することが出来た。シータも俺と奴隷契約をしたから少しくらいなら【偽装】のスキルを使えると思ったけど問題なかったようだ。
「これで目立たなくて済むだろう。」
俺はそう言ってシータの頭から手をどけた。ステータスを見ることのできるスキルを持ってる人間以外にはシータがハーフエルフだってことはバレないだろう。
俺達はそのまま町の門まで行った。この町はそこまで大きくないから外壁も大したことはなかったが一応それでも門番がいて中に入る人をチェックしていた。
俺達は冒険者用の窓口に進んだ。そう言えばアリアは問題ないのか?と思って聞いたらレスティア教の神官だからそれ用の身元を証明できるものを持ってるとのことだった。
「この子は私の奴隷です。」
門番の所に行ってシータの説明をする。するとシータの体のどこに隷属紋があるか聞かれ、その場所を教えた。すると門番はいつもギルドカードなどを確認する為に使っている魔法具をシータの奴隷紋がある場所にかざした。すると魔法具は黄色に光った。
「確認できたので通ってもいいですよ。」
そして門番はそう言った。あの魔法具でそんなことも確認できるんだ。
そんなやり取りがあり俺達は無事町の中に入れた。
そこから移動して服屋へ行った。中にはアリアとシータだけを入れて俺達は外で待ってることにした。もちろんお金は結構渡してある。
「はぁ、なんか急に女の子2人も仲間になるとは思わなかったよ。」
待ってる間に俺はガイとブランに愚痴る。
「そうじゃの、それにその2人が神官とハーフエルフっていうのも普通では考えられんことじゃな。」
「やっぱりそう?」
ブランが俺の話を聞いてくれるみたいなんで、聞き返してみた。
「そうじゃな、神官は基本教会から出てこんし、ハーフエルフもエルフに比べて数は少ないしのう。」
「思ったんだけど、本当に2人は大丈夫なの?あの子たちと一緒で。」
「どういうことだ?」
ガイが聞いてきた。
「いやさ、あんな少女2人と旅をしてたら俺達少女趣味があるんじゃないかと思われたりしないのかなって。んでそういう目で見られるのが嫌じゃないのかなって思ったんだ。」
「そんな事か。別に俺は何とも思わないな。特にあの2人に思う事はない。」
ガイがこう答える。なんだろう朴念仁なのか、なんなのか。段々我が道を行くみたいになってきてる気がするな。
「そうじゃな、別に気にはならんじゃろ。この世界では年端の行かないものでも有用なスキルを持ってる者は冒険者とやっておる。あの2人もそれだけの実力派ありそうじゃしな。特に主と一緒になったんじゃし、これから確実に力が付くじゃろう。」
「2人には冒険者として登録してもらった方がいいのか。特にシータはギルドカードがあった方がいいだろうし。」
ブランの言葉に俺も納得する。
その後も3人で話をしていたが、なかなかアリアとシータは店から出てこなかった。女子の買い物って長いよね。とそんなことを考えていたらやっと2人が店から出てきた。
出てきた二人を見るとなぜかアリアの服も変わっていた。ちゃっかり自分の分も新しいの買ったな。良いんだけどさ。
以前のアリアの服はどちらかと言うと丈の長いスカートでシスター服に近かった。神官としての服だったのか、旅向きではないよな。今回は2人共パンツルックだった。それなりに動きやすそうな上下を選んでいた、アリアが選んだのにちゃんと旅向きなんだ。店の人と話して決めたのかもしれないけどな。
「どうでしょうか?」
アリアが俺達の前まで来てターンをして言った。
「はいはい、似合ってると思いますよ。」
「まぁ、女性に対してもう少し気の利いたことをおっしゃった方がよろしいかと思いますわ。」
そう言われてもねぇ。いう事なんて何にも浮かばない。
「似合ってるか?」
シータがアリアの真似をして一回転して聞いてくる。
「そうだな、似合ってると思うよ。」
俺の言葉を聞いて喜ぶシータ。俺もホントボキャブラリーがないな。でも変に褒めてガイやブランにこういう子が好きと思われたらたまったもんじゃないし。
「ガイ様やブラン様が新しい服を着られた時にはもっと褒めるんでしょう?」
「当たり前だろ、言葉がいくらでも沸いてくる。」
アリアが小声で俺に聞いてきた。俺の答えを聞いてぐふぐふと笑っている。
「何話してる?」
シータがそう聞いてきた。いけないいけない違う世界に行ってしまう所だった。
「いや、2人には冒険者ギルドに登録してもらうかと言う話。俺達は冒険者だからお金稼ぐのも依頼受けたりしてモンスター倒さないといけないしね。食い扶持2人も増えたことだしね。」
「私は問題ありませんわ。なかなか刺激的で楽しみですわ。」
「うん、シータも問題ない。モンスター倒してご飯食べる。」
2人はやる気の様だ。とりあえず冒険者ギルドに登録に行くか。その前に装備も買っておいた方がいいかな。
お読み頂きありがとうございます。




