ハーフエルフ
「はぁ?」
アリアの言った言葉に俺は驚いて声を上げてしまった。
「どういうことだ?この子を仲間にするって言ったか?」
「そうですわね、そう言いました。それが今回の一番の要です。
仲間にすればダイゴ様にとってのちのちプラスになります。仲間にしなかった場合にはわかりません。私が得た天啓とは別の道を行くことになりますので、どうなるかまでは私には判断付きませんわ。」
「そうなのか、しかしな。」
そう言って俺は悩む。昨日アリアがパーティに入ったばかりだし。また女の子、しかもハーフエルフの子を仲間にするっていうのは。俺の理想とするパーティと大分逸れていってる気がするんだけど。
「ダイゴ様の懸念も分かりますわ。何故この子なのか・・・。それは私も思います、もっとこう、ダイゴ様好み・・・。いえなんでもありませんわ。」
アリアに考えが読まれている!?ホントに何者だよ。読心のスキルとかは持ってないはずなんだけど。
「それに仲間にするかどうかは俺だけじゃなく、この子が決めることじゃないのか?」
俺は思ったことを言った。皆がハーフエルフの子に視線を集める。
「そうですわね、とりあえず今なぜこんな状況になったかお話を聞いた方がよろしいかと思いますわね。私の天啓でもそこまでの事はわかっておりませんし。」
アリアがそう言った。
「えっと、とりあえず話しを聞いてもいいかな?俺は旅の冒険者でダイゴって言うんだ。君の名前は?」
「シータ。」
「そうか、シータって言うんだ。シータはなんで男達にさらわれたんだ?」
「さらわれた?」
「そう、さっき男にそこの袋に入れられて担がれてたんだけど、憶えてないの?」
「昨日ご飯食べたとこまでしか覚えてない。」
「ご飯に薬でも盛られたんだろうか・・・。」
「恐らくそうでしょうね。」
シータの言葉に俺とアリアが同じ考えを持ったようだ。
「シータさん、恐らくなんですが昨日食べたご飯の中に眠ってしまう薬を入れれていたんだと思います。そしてその薬と入れた男達がシータさんの事を奴隷商にでも売ろうとされたんだと思いますよ。そこをこちらのダイゴさんが助けられたんです。」
アリアが説明する。恐らくそういう事なんだろう。エルフや、人とエルフの間に生まれたハーフエルフは容姿端麗な人が多い。その為さらってきて奴隷にされることがあるらしい。そして金持ちなんかに裏で買われていくとのこと。今回もそうなんだろう。
「おぉ~、それは助かった。礼を言う。」
シータはそう言って立ち上がって俺に頭を下げた。大分素直なようだ。
「いや、それはいいんだけど、なんでシータはこんなところにいるんだ?エルフは他の大陸に住んでるんだろう?」
「父様を探しに来た。」
「父親を捜しに来たのか?この大陸まで1人で?」
「あぁ。」
「申し訳ないが話があまり見えてこないんで、シータの事詳しく聞いてもいいか?」
「あぁ、助けてもらったし言う。
私は母様と一緒に暮らしていた。でも母様体があまり良くなかった。そして死んだ。母様自分が死んだら父様探せと言った。だから父様探しにここまで来た。」
結構ざっくりとした説明だったけど何とか分かった。母親と2人暮らしだったけど、母親が亡くなったから父親を頼ってこの大陸にやってきたんだろう。でも。
「母親や父親以外の頼れる親類はいなかったのか?」
「エルフは純潔を重んじます。人と子をなした場合は村を追い出されると聞きます。恐らくそういう事なんだと思います。」
シータの代わりにアリアが俺の質問に答えてくれた。なんだこの世界でもそういう事があるのか。元のいた世界でも良く聞いた話だな。
「それで父親が誰だとか分ってるのか?」
「母様はS級の冒険者だって言ってた。旅していた父様に助けられ、私が出来たと言ってた。」
S級の冒険者ねぇ。でも一緒に暮らしてなかったってもしかしたら、もしかするな。
俺が思ったことを皆考えてるようでガイ達も難しい顔している。
「その、父親に会いたくてここまで来たのか?」
「わからない、父様の事は話でしか聞いたことがなかった。ただ母様に言われた。父様を探せと。」
言われたことを素直に守ってるだけなのか?父親に一目会いたいとかそう事ではないのかな。
「それでなんで人さらいにさらわれてたんだ?」
「昨日お腹が空いて動けなかったところに声を掛けられた。飯をやるって。それから憶えてない。」
「いきなりご飯をくれて怪しいとか思わなかったのか?」
「何故怪しいんだ?親切だろ?」
シータの言葉に声を失う。シータは人を疑う事を知らないのか。そんなんで良くここまでこれたな。まぁあれか持ってるスキルのおかげか。しかしこのままだとまたどっかの誰かに騙されるんじゃないのか?
「シータさんは素直なんですね。でも人と言うのは嘘をついたり、騙したりするんですよ。そして今回はシータさんの事を騙して眠らせ、奴隷商にでも売ろうとしたんです。」
「そうなのか。」
アリアの言葉にシータは少し落ち込んだようだ。でも多分そんな事教わってこなかったんだろう、わかってないのは仕方ないと思う。どうするかだよな・・・。
「恐らく仲間に迎えなければシータさんはまた騙されて今度こそ奴隷に身を落とすと思います。
どうなさいますか?」
アリアが俺に聞いてきた。どうなさいますかって言われてもな。ここまで来て、じゃあ、さようならとは言えないだろう。はぁ、仕方ない。
「シータ、俺達の仲間にならないか。俺達も冒険者だ。もしかしたらその内父様に会えるかもしれないそ。」
「なに、それは本当か。だったら仲間になる。」
シータが喜んだように言う。ホントに素直だな。
「一緒にいるとご飯食べれるんだろ?」
そっちが目的か?今度は食いしん坊キャラか。なんかキャラ濃いのが集まってくるな。
あっ、そう言えばまた勝手に決めちゃってるけどいいのかな。
「ごめん、また勝手に決めちゃってるけどガイとブランは問題なかった?」
「今更の話だな、いつも言ってるが誰が増えてもなにも変わらん。」
「そうじゃの、別にどんな者が増えても、わしらが主の傍にいることに変わりはない。」
2人がそう言ってくれる。ホントにありがたいな。横を見るとアリアがニヤけて俺の顔を見てるんだけど、ホントに勘弁してほしい。
「じゃあ俺の仲間を紹介する、ガイとブラン、そしてアリアだ。」
「ガイだ。」
「ブランじゃ。」
「アリアですわ。よろしくお願いしたしますね。」
そう言って簡単に自己紹介をした。
「あぁ、シータだ。よろしく。」
シータも元気よく挨拶した。
さて自己紹介も終わったしこれからどうしようか。一旦町に戻るか、どうするか。あれ?そう言えばシータって身元を証明するものを持ってないんじゃないのか?町に普通に入れるのか?
「シータって町とかってどうやって入ったんだ?」
「町には入ったことない、村もほとんどない。森とかにいた。」
「そうなのか、じゃあ町に入る時どうしたらいいんだろう?俺達が身元の証明になったりしたらいいのか?後ハーフエルフとかって目立ったりしないのかな?」
「目立つじゃろうな、まぁ絶対にいないかと言うとそうでもないし。
一番いい方法はわしらと同じ主の奴隷にしてしまったらよいじゃないか。」
俺の質問にブランが答えてくれた。
「奴隷?奴隷とおっしゃいました?まさか・・・。」
ブランの言葉にアリアの方が反応した。
「あぁ、わしとガイは主の奴隷じゃよ。」
「ぐはっっっ。」
ブランのその言葉を聞いたアリアが盛大に鼻血を噴いて倒れた。
「奴隷・・・、まさかそんなことを。でもまだ何もとおっしゃっていた・・・じゃあ今から・・・。」
鼻血を垂れ流しながらなんかブツブツ言っているアリア。何を想像しているんだ。
「おい、アリア。お前が考えてるようなことはないからな。何で奴隷ってことかは・・・。」
俺はアリアに称号の奴隷の主の事や今までの事を掻い摘んで話をした。
「っという事で一応奴隷ってことにはなってるけどそう言う契約をしているだけだ。すぐにでも解除できるんだけど2人がそのままの方がいいって言うからそうしてるだけだ。」
「まぁそんなことが。」
アリアはいつも間にか回復魔法で鼻血を止めて俺の話を聞いていた。
「でしたら是非とも私も奴隷にして下さい。」
「なんでだ?今の話を聞いてただろう。」
「えぇ、聞いた上でのお話ですわ。だって奴隷になれば普通では憶えられないスキルも憶えることが出来るのでしょう?レスティア教の神官として数多くのスキルを使えることはかなりのステータスになりますわ。」
そう言えばそうだったね。神官だったんだね。記憶の中から消えてたよ。ヤバい子だなとしか見てなかったよ。レスティアはスキルを司る神だったか、そりゃそこの神官だったら色んなスキルを使えるようになった方がより信仰深いと思われるのかもしれないな。
「そう言えばなんでシータも奴隷契約した方がいいんだ?」
俺は元々の話をしたブランに聞いた。
「奴隷は主人が一緒であれば町へは普通に入れるんじゃ。主人が誓約で奴隷の事を縛っておるからおかしな真似はせんしな。」
「なるほど。」
「どうする、シータ。そう言う話だけど。あんまり奴隷になるなんて気持ちの良いもんじゃないと思うけど。」
「いや、私も奴隷になる。みんなと一緒がいい。」
さっきまでの話を聞いていて問題ないかと思ったのかシータは乗り気の様だ。まぁガイとブランも俺の奴隷であることがどんなに素晴らしいことか語っていたしな。素直なシータには洗脳に近い気がするけど。でもまぁ俺も奴隷契約したからって何かしようなんて気はないし、正直これから一緒に行動するのであれば少しは強くなっていて貰いたかった。なんだか予感がするんだよな、アリアの受けた神託とかって何かある気がする。
ただそうと決まれば早くしてしまおうと思って俺は【刻印術】のスキルを付ける。
「じゃあとっとと契約するか、隷属紋を刻まないといけないんだけど、どこにする。見えない所の方がいいと思うけど。」
「でしたら私は背中に。」
アリアがそう言って服を少したくし上げ背中を見せる。俺はそこに隷属紋を刻む。
「あの、ダイゴ様。」
「何?」
「普通女の子のこんな姿を見たら恥ずかしがったり、照れたりされませんか?」
「ん?別に。興味ないし。」
「それはそうでしょうけど、ガイ様とブラン様はちゃんと見ないようにしてますわよ。」
あっ、しまった。つい全く興味がないから普通に受け入れてしまった。
「もう少し考えて行動された方がよろしいかと思いますわよ。」
隷属紋を刻み終えて、服をなおしながらアリアが言った。何でこいつに注意されてるんだろう。そんなことを思ったが確かに気を抜いていたかもしれない。これからは女子2人が一緒にいることになるんだ、そんな事にも注意を払わないといけなるかるのか。疲れるな。
「えっと、シータはどこにする?」
「私はどこでもいい。」
シータはそう言って服を脱ごうとした。
「いやいやいや、なんで服脱ごうとしてるんだ。」
「ん?どこでもいいので決めて貰おうかと思った。」
「男のいる前で服は脱いじゃ駄目だからね。」
「そうなのか?ご飯のお礼も体で支払おうと思ったんだが。」
「なんでそんなことになるんだ。」
「母様はそうやって父様にお礼をしたと言っていた。」
お母さんどういう事でしょう。そんなこと教えたのか。どういう人だったんだろう。でもそれしかお礼の仕方が思い浮かばなかったのかもしれないし何も言わないでおこう。
「そうですわよ、そのお礼の仕方は万人が喜ぶとは限りません。特にダイゴ様はぐふっ、ぐふふっ。」
アリアおい、てめぇ。何おかしなこと言ってんだ。俺はロリコンの趣味がないんだと説明しろよ。おかしな人みたいになってるだろ。俺もお前も。
「そういうのはホントに大事な人の為に取っておきなさい。
とりあえずアリアと同じ所にしておくか。」
俺はシータに注意して、服のその部分だけを少しめくってもらう様にした。今回はあんまり見ない様にして隷属紋を刻んだ。
「じゃあ、契約するぞ。内容は俺達の仲間を傷付けないってことで、破った場合は体に激痛が走るから。でも俺達を傷付けようとしない限り何も問題ない契約だからいいな?」
俺が聞くとアリアとシータは頷いた。
俺は手にした紙の印に親指を切って出した血を付ける。それからスキルを発動する。紙が光の粒子に変わってアリアとシータの中に消えていった。
「これで終了。とりあえず2人共タイザンへようこそ。」
お読み頂きありがとうございます。
一気に2人目の仲間誕生です。




