天啓
アリアが一応パーティに加入してからの朝を迎えた。あの後他の話も色々聞いたが今直ぐにどうこうなるような話ではなかった。やはり旅をして自分で情報を得るしかないのかもしれない。ブランの弟さんに会った後はやっぱり各地を回ってみないといけないか。この世界はあまり横の情報網がない気がする、皆いろんなことを知りたいと思わないんだろうか。
朝起きて準備をしていたらいきなりドアがバンッと開いた。
出ようと思ってたから鍵かけてなかったっけ?ってそんな事じゃない。入口にはアリアが仁王立ちしていた。
「ちっ。」
なぜかアリアが部屋の様子を見て舌打ちした。なんだ何かしてるとでも思ったのか?
「朝っぱらからなんだ、ってかちゃんとノック位しろよ。着替えてたりしたらどうするんだ。」
俺がアリアを諫める。
「それを狙っ・・・、いえ、なんでもありませんわ。」
誰かこの人を何とかしてください。
「そんな事よりも急ぎ行きたいところがありますの。付いてきていただけますか?」
「はっ?今からか?」
「今直ぐにです、もしかすると間に合わなくなるかもしれません。」
「間に合わない?もしかして何か神託か天啓があったのか?」
「えぇ、今回は天啓ですわね。急いで下さい。」
アリアはそう言ってバタンと扉を閉めた。俺達は顔を見合わせる。
「なんだかわかんないけどとりあえず行ってみるか。」
俺はそう言って荷物を持ってすぐに出れるように準備をした。
部屋から出るとアリアが待っていた。
俺達はそのまま宿から出た、昨日の時点で料金は支払っているから鍵だけ返すだけだったから時間もかからなかった。
宿から出るとアリアは無言で走り出した。
「どこに行くとか教えて貰えないのか?」
アリアに追走しながら聞く。
「申し訳ありません。私の天啓は事が終わるまで内容をお話しできないんです。もしお話してしまうと意志が介在することになりまた別の結果になってしまうんです。」
「天啓ってそういうものなの?」
「いえ、人によって異なるようです。私もただ閃くだけの場合もありますし、今回の様にある光景が頭の中に流れることもあります。ダイゴ様と出会った時と同じですね。今私がダイゴ様にその光景を伝えるとダイゴ様は何かを考えてその場に早く行こうとされたり、やっぱり行かないという選択をされるかもしれません。そういう他の意志が出てくると結果が変わってしまいます。私の場合はそういう事なのです。」
「そういうものなのか、今回の事ってかなり重要とかそういうのも教えてくれないのか?」
「重要と言えば重要ですね。ある分岐点の様なものですわね。良い方に行くか悪い方に行くか。悪い方に行ってもこの世が終わるほどの事ではありませんが。」
「じゃあとりあえずアリアに任せるしかないんだね。」
「いえ、最後はダイゴ様が決めることになります。」
アリアが少し真剣な顔をして言った。俺が何かを決断しないといけなくなるのか?なんか色々と急に出来事が起こってくるな。どんな内容かもわからないし今は走るしかないか。
そう思って俺達は急ぐ。町を出て街道を走り、横道にそれる。
アリアは意外に走るスピードも持続力もあるようだ、結構な距離を街から走ってきた。
林の中に入り、そのまま走る。アリアが先頭で迷いなく進んでいく。しばらく走ると俺は【索敵】に人の影が見えた。もう【索敵】もスキルをわざわざ付けなくても問題なく使えるようになった。数人の人影、こんな時間の林の中。どう考えても怪しい、アリアの天啓に関係ある気がする。
俺はアリアの手を引いて一旦止まらせる。口元に人差し指を立てて持っていき、静かにするようにとジェスチャーを送る。そして俺が先頭でなるべく音を立てずに進む。少し進むと3人の男が見えた。
1人は中肉中背で短剣を腰に差している。もう1人は小柄で此奴も短剣を腰につけていた。最後の奴がかなり大柄で肩に大きな袋の様なものを担いでいた。なんだろうと思って【鑑定眼】で確認してみるとどうやら人の様だ。もしかしてあの人を助けろってことか?
「あの人を助けろってことか?」
俺が小声でアリアに聞くと、アリアは無言で頷いた。
これが決断なのか?目の前のはどう考えても人さらいだ。こんなのを見て放っておこうとは思えない。だったらとっとと助けた方がいいだろう。
俺は久々に使うスキルを付けた。
軽く息を吸い込んで止める、そして自分の影に潜った。【影移動】だ。
俺は瞬時に大男の後ろの影から飛び出して、肩に担いだ袋を両手で抱き男の背中を思いっきり蹴った。その勢いでまた影の中に沈む。腕にはちゃんと人の入った袋は抱えている。
それからガイの影から出現した。さらわれていた人はガイに預ける。これで心置きなく戦える。別に戦わなくてもいいか、助けることは助けたんだし。でも後で追ってこられても面倒なのでこちらの実力は見せた方がいいか。俺は何が起こったかわからずオロオロしている3人の男の前に出て行った。
「なんだてめぇ。」
男の1人が俺に気付き声を上げる。
「旅の冒険者です、人さらいの皆さん。」
「なんだと。じゃあもしかして、てめぇが?」
「えぇ、さらった人ならこちらで保護しました。それでなんですがここは大人しく尻尾撒いて退散してもらえませんか?」
「何言ってやがる、舐めたこと言ってんじゃねぇぞ。」
舐めたこと言ってるのはどっちかわからせてやる。
そう思って俺は針状の【岩の弾】作って近くの木に向かって放った。バキッと音出して岩の弾が木を貫通する。
「俺は高レベルの魔法使いなんですよ。あんまり朝っぱらから殺しはしたくはないんですけどね。そちらがそれでも向かってくるんでしたら容赦はしませんよ。」
俺はそう言って目の前に50本近い【岩の弾】を作って宙に浮かす。
「ちぃ、しょうがねぇ。ここは引くぞ。」
1人の男がそう言って3人は俺とは反対方向へ走って逃げていった。まぁわざわざ殺さなくてもいいだろう。【索敵】で男たちが完全にこの場所から離れたのを確認して岩の弾を地面に戻した。
俺がガイ達のいるところに戻ると大きな袋は横に捨ててあって、皆が横になった女の子を囲んでいた。また女の子か、そう思っているとアリアが回復魔法を使った。これって確か薬とか魔法で眠った人を起こす魔法だっけ。魔法を受けた女の子が軽く呻き声を上げて目を開けた。そして上半身を起こした。辺りを見回してなぜか俺のところで目線を止めて言った。
「お腹空いた。」
はい?お腹空いたって言われてもな、そう言えば俺達も朝飯食べてなかったっけ。じゃあもうここで朝飯でもするか。
「ブラン、テーブルと椅子をお願い。」
「あい、わかった。」
俺の言葉の意味をすぐに理解したのかブランが土魔法でテーブルとイスを作る。俺はその間に【支援魔法】で【退魔陣】と【目隠し】を発動する。それから【浄化】でブランの作ってくれたテーブルを綺麗にする。そして【倉庫持ち】の中から旅用に作ったシチューやパン、お皿なんかを出してテーブルに並べていく。
その匂いを嗅ぎ付けて助けた女の子がテーブルまで勢いよく来た。そして目を輝かせながら配膳されていく食べ物に釘付けになっていた。
「みんなの配膳が済むまで座って待ってろ。」
俺がそう言うとその子はちゃんと椅子に座った。ただ身体が前のめりで今にも襲い掛かるんじゃないかという気迫を感じる。俺はなるべく手際よく配膳を済ませて椅子に座る。ガイ達も座った、アリアも不思議がることなく普通に席に着いた。
「じゃあいただきます。」
俺がそう言うと女の子は凄い勢いで飯を食い始めた。そして凄いスピードで皿を空にした。それから俺の目をじーっと見てくる。仕方ないのでまた皿に飯をよそってやると同じスピードで平らげた。それを何度繰り返したかわからない。鍋いっぱいにあったシチューが一回の食事でなくなった。パンもいくつ食べたのかわからない。当の本人は満足した様子で俺の前に座っている。
「なぁ、こいつって・・・。」
「そうですわ、ハーフエルフですわね。」
俺の問いにアリアが答えてくれた。
そう俺の目の前にいる女の子はハーフエルフだった。
銀色の髪をしていて尖った耳もある。容姿は可愛くてどこかミステリアスな雰囲気もあった。
見た目はアリアと同じぐらいの年齢に見える。見た目の、その、胸のボリュームとかも似たり寄ったりだ。
俺はまた【鑑定眼】でこの子の事は確認していたから、ハーフエルフだと種族のところにあったので知ってる。しかしこんなところで出会うとは思っていなかった。確かエルフは別の大陸に住んでいて、この大陸にはほとんどいないはず。なんでこんなところにいたんだろう、しかもどう考えても人さらいにあってたよな。でも果たしてそれを聞いてもいいんだろうか?また厄介ごとに巻き込まれそうだけど。
そう言えばアリアの天啓で出会うことになったんだよな。今の時点でもうことは済んだってことだろうか?
「もう俺はこれでお役御免な訳か?」
「いえ、まだ。ただもう助け出すことは出来たのでお教えして問題ないと思います。
ダイゴ様が決断するのはこの子を仲間にするか否かの選択ですわ。」
アリアに聞くとそんな答えが返ってきた。
お読み頂きありがとうございます。
私生活で色々と忙しくなりそうです。
その為更新頻度を少し落とそうかと思います。
一日一度くらいの更新になります。
書いて一月で100話行けるかと思ったんですけどちょっと無理そうです。




