神託
さて俺達はエデバラの街を出た。タイタン商会の行商隊の馬車に乗っている。一応俺の商会馬車のはずなんだが人様の家にいるようでそわそわする。商業隊のメンバーは俺達が鍛えた護衛役と、元アンダーソン商会の商人の人とかがいる。
今回はエルバドスの首都リグファーレに行商に行くってことだ。
首都リグファーレはエデバラの街からそう遠くない。2日もあれば到着するという事だった。
俺達が向かうのはブランの弟さんがいるドワーフが住むザールって言う街だ。そこもリグファーレに近くて2日もかからない距離らしい。そう言えばもう最初の街から大分来ていたもんな。
そこで俺は考えた、一旦リグファーレに寄ってからザールに向かうべきか、直接ザールに向かうべきか。
行商隊がどうやって塩を売るのか、そしてお客さんの反応はどうかを見て見たかった。でもリグファーレに行くと商業ギルドの人に捕まりそうなんだよな。そしてまた時間を取られるからもしれないし。考えたらブランの弟さんに会ってからの予定は決まってないんだし、それからでもいいかと思った。
だから俺達はザールに直接向かうことにした。
エデバラの街を出て1日、ある町に立ち寄った。行く先が少し変わるのでここで行商隊の人と別れることにした。そして俺達は町をぶらついてる時にまたイベントが起こった。
「待ちやがれ!」
野太い男の声が響いた。それも俺達の近くで。
何事かと思って声のした方へ振り返る。
するとなかなかいいガタイをしたおっちゃんがいた。おっちゃんはエプロンをして手にはフライパンを持っていた。料理中に慌てて飛び出してきたんだろうか。息を切らせて頑張ってるその姿が少し可愛い。
おっちゃんに目を奪われていて気付かなかったが、ふと少し後ろを見ると一人の少女が俺の後ろにいて、俺の服の端っことを掴んでいた。あれ?いつの間に?町中だからと思ってあんまり回り様子に注意を払ってなかった。少女の事を良く見ると、ピンク色の髪をしたとても可愛い美少女だった。その少女が俺の後ろに隠れる様にしている。そして目の前のおっちゃん。おっちゃんはこの少女を追ってきたんだろう。
「何かあったんですか?」
俺が一応質問する。
「そいつ食い逃げしやがったんだ。お前そいつの知り合いか?」
おっちゃんが言った。食い逃げねぇ~。可愛い顔してそんなことするんだ。まぁもしかしたら何か事情があるのかもしれないけど俺には関係ないしな。
周りには少し人だかりができて来た。
これがゴツイ兄ちゃんが追われていて俺の後ろに隠れたんだったら考えるけど。
いや、その場合は多分借金取りに追われてるとか、何か犯罪の匂いしかしないけどね。
可愛い美少女には興味がない。他の奴ならいざしらず、特に俺はな。
とっととおっちゃんに突き出そうとしたら、その少女にグイッと服を引っ張られた。上半身を引っ張られて少し屈ませられ、低くなった俺の耳元に少女が口を近づけてぼそぼそと話した。
マジか~、なんでこんなことになるんだろう。
「そうなんです、ご迷惑かけたようですいませんでした。目を離したすきにどこかへ行ってしまって探していたんですよ。お金も持たせておりませんで、俺達の姿を見付けてそのまま走ってきてしまったんでしょう。まだなにぶん小さいもので世間を良くわかっていない様です。申し訳ありませんでした。お代は少し多めにお渡しいたしますので今回はご容赦頂けますか?」
俺はそう言っておっちゃんに丁寧に頭を下げる。その様子を見てガイ達が驚いているようだが今はそれどころじゃない。
「そうか、わかった。仕方ねぇ、今回だけだぞ。」
「ご理解いただきありがとうございました。」
俺はそう言っておっちゃんに金貨を渡す。それからおっちゃんがこの場を去るまで頭を下げた。
「ちょっと移動するぞ。」
周りで見ていた人も誰も俺達に興味を失くしたようで、散り散りになっていったのを見計らって俺はみんなにそう告げた。
そして速足で人気のない裏路地の方へ行った。しばらく歩いて人の気配を感じなくなったところで足を止め振り返る。
俺の後ろにはガイとブラン、そして先程助けてやった少女がいた。
「何故俺が勇者だって知ってるんだ?」
俺が口を開く。その言葉にガイとブランが驚く。
先程少女が俺の耳元で「助けて下さい、勇者様」と言ったんだ。だから俺はこの少女の目的を聞く為に助けた。
「お初にお目にかかります勇者様。私はレスティア教の神官アリアと申しますわ。
何故私が勇者様を存じ上げているかは、我が神レスティア様より神託を頂いたからです。」
そうしっかりとした声でアリアと言う名前の少女は俺に言った。
レスティア教はこの世界で一番信者が多い宗教だ。
レスティアと言う神を信仰している。そのレスティアは俺が出会ったスキルを司る神だった。
この世界では持ってるスキルで人生が変わったりする。その為生まれてくる時だったり、生きて行く内に良いスキルを手に入れれるようにとスキルを司る神レスティアにお祈りしたりするんだ。その為神は他にもいるが一番多く信仰されているのがレスティアだった。目の前にいるアリアはそこの神官だという。俺はアリアが俺の事を勇者と言った時点で【鑑定眼】でアリアのステータスを確認した。その中で確かに【神託】と言うスキルを持ってるのを確認した。俺が勇者であることがそれで分かったというならそう言う事なんだろうが、なぜ俺に近づいてきたのか目的が分からない。
「俺が勇者だってわかったのは神レスティアから聞いたからという事はわかった。じゃあお前は何の為に俺に近づいて来た?どういう目的だ?」
「目的でございますか?簡単に申しますとしばらくの間勇者様と一緒に行動させて頂くという事ですわ。」
「それはどういうことだ?」
「そのままの意味でございます。ある時期まで私も勇者様に付き従うという事ですわ。」
「もしかして神託によってレスティアから言われたとか?」
「左様でございます。レスティア様よりそうお言葉を頂きました。」
「何の為に?」
「目的まではわかりません。神託はレスティア様の言葉を頂くだけですので、私からは伺うことは出来ませんわ。ただ、もしそうしなければこの世界は大変な事になるだろうというお言葉も頂きました。
その為私が勇者様をお探ししたのです。」
どういうことだ?アリアの言葉を考える。アリアを連れていかないと世界が大変な事になる?アリアは嘘言ってるようには思えないしな。う~ん、神であるレスティアが言うことなんだし、やっぱり一緒に行動しないといけないんだろう。
「しかし一緒に行動するって、俺達は旅の冒険者をやってるんだぞ。」
「えぇ、問題ありません。必要であれば私も冒険者としてギルドに登録いたしましょう。回復や、支援魔法が使えます。」
アリアはそう言った。俺はそれも確認している。そこそこのレベルを持っていた。しかしな~、女性と一緒に旅をするのはな~。
そう思ってもう一度しっかりとアリアを見る。
身長130cmちょっと位しかない小柄で、ピンクの髪をツインテールにしている。
顔は目が大きく、鼻と口は小さ目で幼いように見えるがパーツがいいからかとても可愛い。
体は、うん、そうだね、ちょっと胸のあたりがさみしいかな。すれんだーぼでぃという事にしておこう。傍から見たらどう考えても12歳ぐらいの美少女だった。
「こんな子供を冒険者として連れていくのか?」
今まで黙っていたガイがそう言った。いつもはなんでも俺に任してくれるが今回は流石に思うところがあるんだろう。
「あら、まだ私の紹介をしておりませんでしたわね。私こう見えても18歳ですわよ。」
アリアの言葉にガイとブランが驚く。そうだよね、どう見ても子供にしか見えないよね。俺はステータスを先に見ていたから年齢には気付いていた。俺も見た時にはちょっと驚いたけどね。
「まぁ年齢も問題ないし、冒険者になってまでも一緒についてこようと思ってるんだし、しばらく一緒にいるしかないか。」
「ありがとうございます。全てはレスティア様のお導きですわ。」
「でもいいの?俺達男だけのパーティで女の子1人だけだけど。」
その点が気になった。これからは気にして行かないといけなくなるだろう。もちろんガイやブランに色目を使わないかだ。まぁ見た目子供だから二人は何とも思わないかもしれないけど、油断は出来ない。
「それはもちろん問題ございませんわ。レスティア様より今回勇者様のお近くにいくのは、私をおいて他ないと言われておりますから。」
「それはどういう・・・?」
「うふっ、それは勇者様のご趣味のお話でございます。その、殿方と・・・。」
「ストップ、ちょっとアリアこっちに来てくれるかな。」
アリアの口を塞いでガイ達と距離を取る。
「どういうことだ?何を知ってる?」
小声でアリアに聞く。
「レスティア様は勇者様の記憶を拝見したことがあると仰っていました。
その中で勇者様は女性には興味がなく、殿方に興味があることを知り得たそうです。」
あの神、人のプライベートなことを話しやがったのか。
「それとお前に何の関係があるんだ?」
「まぁそれは、私が殿方と殿方が仲良くしているのを見ることに大変に興ふ・・・好きな事をレスティア様もご存知なのです。イチャイチャしてる所を見ると、それだけでもうご飯を食べなくても大丈夫です。考えただけでも幸せな気分になります。」
あかん、ヤバい奴来たーーーーーー!
どう考えても腐ってる系だよ、しかも重度っぽい。なんか目がヤバい。
「このような環境へ私を導いてくれたレスティア様には感謝してもしきれませんわ。」
そこか?だから俺の近くに来たのか?目的変わって来てないか?
「それでどちらの殿方とそう言ったご関係に?それともすでにお2人と・・・」
アリアはそう言って鼻から血を流している。怖いから。
「鼻血出てるぞ。
ってそういう関係ではないから・・・・・・・・・まだ。」
「まぁ!?そんな・・・・へたれ?」
「なんでそんな言葉知ってんだよ。」
「なにか急に閃いたんですわ。恐らく天啓ですわね。」
まったく役に立たない天啓もあったもんだな。なんだその天啓何の意味があるんだ。
「しかし私が来たからにはもう安心してくださいまし。必ずや皆様の幸せ、引いては私の楽しみの為勇者様にご協力いたします。」
「いや、いいからそんな事。って言うか絶対に2人の前でおかしなこと言うなよ。」
「あら、そうなんですの?」
「そうなんだよ。もしかしたら2人とギクシャクするかもしれないだろ、それに言う時は俺が言う。人に言われてどうにかなっても俺が納得できない。」
「わかりました、では私は大人しく拝見することにいたしますわ。」
「いや、それも止めて欲しいんだけどな。」
「そんな、私に死ねとおっしゃるのですか!?」
「そこまでか!?」
「えぇ、教会にいた時にも、それはもうどうにかして殿方同士の仲良くされているところ見れないか日々考えておりました。私の周りには女性しかおりませんでしたし。割と厳格な教義で男性とお会いできることも少なかったですしね。それが今まさに待ち望んだ日々がやってくるのです。以前の生活の中の私は死人の様なものでした。今からが私の人生が始まるようなものです。ですから是非とも私に生の実感を下さいまし。」
物凄くドアップでそんなことを言われた。近いから、顔が近いから。そして鼻血いつまで出してんだよ。
「とりあえず鼻血を何とかしろよ。」
俺がそう言うとアリアは自分に回復魔法を使った。恐ろしく無駄な回復魔法の使い方だな。
「ともかく、俺達と一緒に居たいなら絶対に変な事は言わない事!分かったな。それが守れなかった場合はタダじゃおかないからな。」
「わかりましたわ。この環境を長く楽しめるよう我慢いたしますわ。まぁそれはそれで何かヤキモキした感じも楽しめそうですしね。」
もう楽しむとか言っちゃってるよ。絶対にこいつの目的は世界が大変な事になるのを救いたいとかじゃないよ。
俺は重いため息を吐いてガイとブランの所に戻った。
「なんじゃ、会ったばかりじゃと言うのに2人共仲が良いんじゃのう。」
戻るとブランにそんなこと言われた。いやいや、そんな風に思われるのは心外です。
はぁ、これからどうなってくんだろう。
お読み頂きありがとうございます。
新キャラ登場です。
しかも結構濃い感じです。




