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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
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旅立ち2

 商会の名前も決まったのでヒューイさんに商業ギルドに登録してもらった。そしたらギルドカードを貰えた。貰ったギルドカードは身元の証明にもなるし、商売をする時にちゃんと商業ギルドに入ってますってことの証明にもなる。どこかの街で俺が商売してもそれなりに信用はされるってことだ。

 登録をしている間にヒューイさんと話をした。さっきは簡単に【ソルトプラント】の事が認められたと言っていたが、色々と大変だったようだ。商業ギルドの人が【ソルトプラント】の事を調べたが何もわからなかったという事になった。商業ギルドの中には商品の価値や安全性を確認する為のスペシャリストがいて、鑑定や調査をしたりする。しかしその何人もが調べてみたが【ソルトプラント】の詳細はわからないという結論に至ったという。そりゃまぁ色んなスキルを組み合わせて使ってるから、これを理解しようとするとそれだけのスキルを全て使えないといけないしね。でも出来た塩の品質は文句がない出来だったので認められたという。ヒューイさんも質問攻めにあったらしいが自分も詳しくはわかっていないという事ではぐらかしたらしい。でもその調査をした人達が【ソルトプラント】を作った俺に会いたいと熱望していると事をを聞かされた。また旅の途中でリグファーレに寄ることがあったら絶対に商業ギルドに来て下さいと伝言も頼まれていたという事だった。

 そうか、行ってもいいけど説明するのが大変そうだな。



 商会も出来上がって、準備も進めてきた。

 生産、管理、販売とそれぞれの部門もきちっと形になっていた。もうこれで商売を始められるだろう。そして商売が始まったら全てケビンさん達に任せて俺達はまた旅に出るつもりでいた。結構この街でもゆっくりしたしな。

 とりあえず街では新たな商会の設立パーティをしてみた。街の皆にお披露目したかったし。すると結構大規模な祭りまでになってしまった。まぁほぼこの街を支えていく商会が出来たんだからな。街のほとんどの人がかかわってくる話になるし皆楽しみにしてくれているという事だろう。

 街の広場で舞台を作って挨拶なんかもした。俺は別に必要ないと思ったけど一応代表なんだからと舞台に立って挨拶させられた。こういうのって緊張するんだよな。しかも何を話していいかわからない。



「初めまして、タイタン商会代表のダイゴと言います。この度はお集まり頂いた皆々様に・・・。」



 と挨拶したら固いとロイドさんに怒られた。そのままなし崩しに祭りに突入した。街には露店が並んでそこらかしこで人の笑い声が聞こえた。今まではこの街ではこういった祭りなんてなかったみたいだ。だから皆初めての祭りを楽しんでいるのが分かって嬉しくなった。今から商売を始めるんだけど、皆この街が栄えていくだろうと信じてるんだ。

 今まで行った街や村はどこか活気がなかった。モンスターの脅威などもあっただろうけど、何となく希望っていう物がなかったのかもしれない。この街の人にその希望を与えらえたのなら嬉しいことだ。こんな街が増えていけばいいんだけどな。でも俺も行く町行く町でこんなこともしていられない。ここはキースの家族がいたから何とかしようと考えて、そして街の長のケビンさん達もいい人だったからここまでのことが出来たんだと思う。また同じ事をして下さいと言われても無理だよな~。


 そして俺はまだやらないといけないことがあるんだよな。少し気が重いけど仕方がない。



----------------------




「兄貴どうしたんですか?こんなところに呼び出して。」




 俺の前にはキースがいる。俺はキースに話があると訓練場に来てもらう様に伝えた。

 街では祭りをやってるから訓練場には人の気配はない。俺とキースの2人っきりだ。



「あぁ、ちょっとキースに話したいことがあってね。」


「話っすか?何の件ですかね。そう言えばもうすぐ旅を再開するんすよね?その件っすか?」


「そうだな、その件かな。」


「なんかこの街も色々あって一月いたなんて思えないくらいでした。」


「そうだな、色々あった。」


「兄貴どうかしましたか?さっきからなんか気の抜けた感じって言うか覇気がないって言うか。」


「うん、俺さ、キースにお願い事があるんだ。」


「お願いっすか?珍しいっすね。兄貴の言う事だったらなんでも聞くっすよ。」



 キースは笑顔でそう言ってくれた。なんか緊張するな。こういうのって今まで言ったこともないし。



「キース、お前はこの街に残ってくれ。」


「えっ?どういうことっすか、兄貴。」



 キースが俺の言葉に驚いて聞く。



「キースには行商隊の代表になって貰いたいんだ。」


「俺なんて、そんな。」


「いや、キースしかいないって思ってる。

 グラハさんじゃちょっと荷が重いと思う。行商隊のメンバーは商売だけじゃなく護衛の仕事もやるからどうしても戦える実力を持ってないと駄目なんだと思う。

 キースは弟子達にも懐かれているし、これからもし人を増やすことになっても対応できると思う。商売の勉強もしたら直ぐに憶えると俺は思ってる。だからキースが適任なんだ。」


「いや、そんな。俺兄貴達と一緒に旅をしたいっす。」



 キースが必死な様子で言う。



「うん、俺もキースと一緒に旅をしたいと思う。初めて会った時は、こんな事全く考えたこともなかった。俺はしばらくガイ達以外に仲間を作るつもりはなかったんだ。でもキースと出会って、いつの間にか信用出来る仲間になっていた。」


「じゃあ・・・。」


「だからなんだよ。信用出来る仲間にこの街の事を任せたいんだ。ケビンさん達も上手くやってくれるとは思ってるけど、どこかで俺は信用できてないんだと思う。その点キースなら全幅の信頼が出来る。キースだから頼んでいるんだよ。」


「そんな・・・。」


「それにさ、キースにはもう一つお願いしたいことがあるんだ。」


「なんすか?」


「俺達は旅の冒険者だろ。そして俺は他の世界から来た人間なんだ。だからこの世界には帰る家がないんだよ。どんなに旅に疲れても戻る所がないんだ。キースには俺達の帰る所になって欲しいんだ。俺達の帰ってくるところを守って欲しいんだよ。」


「兄貴、そんなのズルいっすよ。そんなこと言われたら俺・・・、断れないじゃないっすか。」


「知らなかったの?俺はズルいんだよ。他の人に比べていろんなスキル使えるからね。」


「兄貴・・・。」


「お願いだから。」


「・・・わかったっす。俺兄貴の帰る所になるっす。だからいつでも帰って来て下さい。」


「ありがとう。」



 キースが泣いていた。俺も泣きそうになるのをこらえる。別に今生の別れでも、付き合った人でもないのにな。何で泣きそうになるんだろう。キースをこの街に残すことはしばらく前から考えていた。本当は一緒に旅を続けたかったけど、キースの家族もいるし、何よりこの街に必要な人物であることが分かった。それほどまでにキースはこの街に溶け込んでいた。人当たりがいいだけではなく、他の人から好かれるんだ。



「でも信用はしてるけど女癖だけは治してね。それで信用を無くさないでくれよ。」


「最近はそんなの全然ないっすよ。

 だって、俺・・・兄貴といて、そのなんて言うか目覚めたって言うか・・・。」



 キースが少し顔を赤らめて言ってくる。

 一緒にいて目覚めた?もしかして!?

 なんだそんな事なら、一緒に旅を続けよう。前言撤回すぐするよ。

 ついに俺の時代が到来したーーーー。



「強くなることに目覚めたっす。

 なんか弟子とか出来て、俺なんかが教えれることなんてあるのかと思ってたけど。あいつら俺の事師匠、師匠って呼んで懐いて来てくれるんす。それが嬉しくって。よし強くなってこいつらの事鍛えてやるって思いました。そしたら女の子の事なんてどうでもよくなったっす。まだまだ兄貴みたいにはなれないっすけど見てて下さい、立派な師匠になってみせます。」



 えぇ~、あぁ、うん。

 そうだよね、そんな訳ないよね。良くある戦いに目覚めたってパターンだよね。知ってた、知ってたよ。そう簡単に俺の事好きになったりしないってね。ある意味好意は持ってくれてるんだけど、そっちじゃないよ俺が望んでるのは。あ~、さっきのドキドキ感を返して欲しい。でもキースもすごくキラッキラしてる目で言ってるし。まだまだ望みは捨てたらいけないか。人生何があるかわからない。その内ころっと行くかもしれん。気長に待ってよう。



「そうか、わかった。期待して待ってるよ。」



 俺は笑顔でそう言った。




-----------------------




「じゃあ、後は任せたからな。」



 俺とガイ、ブランは馬車の荷台からキースや、他の人に告げた。

 キースと話した何日か後に俺達は旅に出ることにした。

 タイタン商会が塩を売りに行商隊を出し、その目的地が俺達の向かう方向と一緒だった為に途中まで乗せていって貰うことにした。

 そして馬車の荷台に乗っていると、キースやケビンさん達が見送りに来てくれた。



「わかったっす。しっかりとこの街を守っていくっす。いつでも帰って来て下さいね。」



 キースが泣きそうな顔で言った。その顔を見てガイもブランも苦笑している。

 ガイとブランにはキースがこの街に残ってもらうことは、キースに話す前に伝えている。二人共俺の好きなようにといつもの返答だった。

 一応何かあったら【念話(テレパス)】で呼べとは伝えている。3人共いつも俺と使っているからかスキルを憶えた。多分離れていても何かあったことぐらいは伝えれるだろう。何か感じたら俺がMPを出来る限り突っ込んだら、この国にいる間なら会話できると思う。



「それじゃあ、元気でな~。」



 馬車が動き出し、俺は手を振って皆に別れを言った。

 街の皆も手を振り返してくれた、ホントにこの街が俺の帰る所になってくれたら嬉しいな。

 でも今は旅をしよう、もっと色んなことを経験して強くなろう。それにもう少しでブランの弟さんとも会えるしな、楽しみだ。

お読み頂きありがとうございます。


この話でエデバラの街編が終わります。

キースがパーティから離れてしまいました。

元々ちょい役のはずだったんですけどいつの間にか仲間になってるし。


次回からはこれまでとは少し違う感じの話にしていこうと思ってます。

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