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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
80/237

弟子 vs

 問題が発生した。それは【ストーンフロッグ】がまだいたという事だった。

 俺達が倒したやつ以外にも何匹か確認された。

 それは弟子達もそこそこ強くなったという事で、街の近くでモンスターを倒して更なるレベルアップを目指していた時、偶然【ストーンフロッグ】を見付けたんだ。

 その時は俺達も一緒だったので、俺が速攻魔法で始末した。もしかしたら卵か何かで増える魔獣なんだろうか。1匹だけ突然変異で生まれるとかじゃないのか?俺が読んだ本にはそんなことは書いていなかった。俺は【索敵(レーダ―)】で広範囲を調べてみた。すると後何匹かいるみたいだった。流石に元の世界のカエルとは違って何十匹とかにはならないみたいだったが、このまま放置していたらまた増えるかもしれない。早急に対処が必要ってことになった。


 しかし俺はこれはチャンスかもしれないと思った。

 そして弟子たちを集めて弟子達だけで【ストーンフロッグ】を倒す様に伝えた。伝えると弟子たちは大ブーイングをした。俺も考えた上で言ってるだけどな。今の実力だと弟子達全員で掛かれば1匹ずつなら簡単に倒せると思う。組み合わせによってはもっと少ない人数でも大丈夫だと思ってる。

 だから弟子たちにちゃんとその事を伝えた。考えて戦えば【ストーンフロッグ】を倒せるだけの実力は付けたやったと。それで勝てないんだったら考えが足りていないという事を。それを聞いた弟子たちが悩んで相談をし始めた。

 俺は期限を決めて、ちゃんと倒し方を思いついてもつかなくても【ストーンフロッグ】を倒しに行くように弟子たちに命令をした。命令に逆らえば今までやってきたことが無駄になる。その為に弟子たちはみんなで必死になっていた。その必死さが大事なんだと思う。

 しかし今までそんなことを考えたこともなかった様で、中々に苦戦していた。アドバイスでもした方がいいのかと思っていたら、俺のところにキースがやってきて、もし俺が弟子達だったらどう戦うかを聞いてきた。俺がそれを教えると、何やらキースは弟子たちにその事をこっそりと話したようだ。全部は教えずにぼかすところはぼかして、一緒に考える風なことをしてちゃんと本人たちに考えさせていた。キースのこういう所が弟子たちが懐く要因なんだろうと再認識した。


 そして弟子たちが【ストーンフロッグ】に討伐に出る日が来た。

 俺は死ななければどんな傷や石化でも治してやると言って送り出した。ガイやブラン、キースも今回は同行させないことにした。師匠がいることでも何かあった時は何とかしてくれるとか甘えが出ない様にする為だ。

 でも俺だけ【隠匿(インビジブル)】などの姿を隠すのに適したスキルと付けて、ついていってるのバレない様にして弟子たちの後とついていく。ホントに何かあったら問題だろうし、実際にどう戦うかを見てみたかったからだ。



 弟子たちは一応全員で固まって移動した。

 その中で何人かの人間を偵察に放っていた。気功術と体術に優れていて、足に自信がある者だ。もし【ストーンフロッグ】に見つかっても逃げ切れるだろう。ここら辺はちゃんと俺の言ったことを実践しているようだ。冒険者でパーティを組んでるとなかなか誰かを偵察に出すことは難しい。偵察に適したスキルや技量を持っている人間がパーティの中にいないといけないからだ。今回は結構な人数で行動しているし、それぐらいの技量を持った人間は結構いた。

 しばらくすると偵察に出た人間が帰ってきた。それからしばらく相談している様だったが動き出した。多分【ストーンフロッグ】を見付けたんだろう。皆緊張した面持ちで歩いていた。


 弟子たちがしばらく歩くと向こうの方に【ストーンフロッグ】が見えてきた。体長は2m近くあった。キースが倒したのと変わらないぐらいの大きさか。あいつの兄弟とかなんだろうか。



「話し合った通りの作戦で行くぞ。」



 弟子たちの1人が声を上げた。剣を持ったリーダー格の奴だ。今回冒険者ギルドの人には遠慮してもらった。ロビンさん達はちょっと強くなり過ぎたし、戦いに慣れ過ぎてる。一緒に来たら彼らだけで倒してしまうだろう。


 まず何人かの弓を持った者が【ストーンフロッグ】を少し遠巻きに取り囲む。先程偵察に出ていたメンバーだな。そして散発的に弓で【ストーンフロッグ】に攻撃を仕掛ける。しかし【ストーンフロッグ】も焦らず弱点の頭を低くして手を使ってカードした。矢は全て刺さることなく地面に落ちた。

 それから【ストーンフロッグ】が動く。口から石化粘液を一番近くにいた弟子に吐き掛ける。しかし弟子も予想していたので後ろに下がって避ける。他の者が矢を放つが通じている様子はない。それに気を悪くしたのか【ストーンフロッグ】が次から次へ石化粘液を所かまわず吐いた。やっぱり結構な範囲を連続で吐けるんだ。近距離戦を仕掛ける訳にはいかないよな。弓にしたってキースみたいに超遠距離からは狙えない。弟子でも弓術のスキルはそれなりに高いレベルになったがキースの様に【遠視(ロングサイト)】のスキルは持っていない。単純に弓の腕がいいだけだ。それにあの時は支援魔法で大分強化してたから出来た芸当だ。

 今回は相手を引き付ける役に徹している。皆素早いものが多くて気功術も恐らく足などの筋力に集中して使っているんだろう。【ストーンフロッグ】の攻撃を危なげなくかわしている。その間に魔法を使う弟子たちが魔力を練っているのが分かる。口々に詠唱もしているようだ。【ストーンフロッグ】にバレない様に準備をしてるんだろう。その準備が終わったようで一人がリーダーの弟子に目で合図をした。



「行けるぞ。」



 リーダーが伝えると弓の弟子たちが一か所に集まった。普通だったら狙い撃ちされるのでそんな行動はしない。【ストーンフロッグ】もその様子を見て好機だと思ったのか、今までで一番大きな口を上けて大量の石化粘液を吐きだした。弟子達も攻撃を読んでるので左右に別れて大きく跳んで回避する。



「「【土の弾(クレイバレット)】」」



 その瞬間に何人かの弟子の声が重なって響く。

 【ストーンフロッグ】の近くにあったいくつかの土の塊が浮かび上がり、大きく開けた口の中に飛び込む。【土の弾(クレイバレット)】は名前の通り土の弾を放つ土魔法だ。かなり低レベルの土魔法で【岩の弾(ロックバレット)】よりも威力はない。ただ消費MPは少ない。

 【ストーンフロッグ】が気付かない様にしてあらかじめ近くに作っていたんだろう。弓の弟子たちも作っているのがバレない様にある一定方向に【ストーンフロッグ】の視線を誘導していた。

 しかしただ土の塊が【ストーンフロッグ】の口の中に入っても意味はない。【ストーンフロッグ】が吐き出したらお終いだ。



「【土の壁(アースウォール)】」



 別の弟子がそう唱えた。すると【ストーンフロッグ】の口の中の土が一枚の壁になる。【ストーンフロッグ】の口いっぱいに土の壁が広がる。それなりの厚さもあるようだ、限界まで開けた口の直径程の土の壁を作られたんだ、【ストーンフロッグ】は口を閉じることが出来なくなった。【ストーンフロッグ】には歯がない、獲物は丸のみにする。後で石化した部分だけ排出するらしい。まぁ歯があったところで限界まで開けた口を閉じるのってかなりの顎の力がないと無理だもんな。

 今回の魔法の使い方は俺が以前にやった【岩の弾(ロックバレット)】から【岩の槍(ロックスパイク)】を生やしたのと同じ考え方だ。【ストーンフロッグ】の口に入った土を材料にして【土の壁(アースウォール)】を作ったんだ。



「今だ、かかれ。」



 作戦が上手くいった事を見たリーダーが声を上げる。そして剣を持った弟子たちが【ストーンフロッグ】の後ろ脚を狙う。魔法を使う弟子たちも後ろ脚に水の魔法で水を掛けたり、土魔法で土を掛けたりしていた。大した威力の魔法ではないので味方に当たっても大したことはない。【ストーンフロッグ】体を覆う粘液を取る為だ。何とか粘液が取れたようで、斬り付けた剣が【ストーンフロッグ】の足を切り裂いていく。皆それなりに剣術の腕があるし、気功術で剣の切れ味を上げたりしているんだろう。

 

 もうこうなると【ストーンフロッグ】はほぼ何もできない。口は塞がっているし、後ろ脚も潰した、逃げられないだろう。リーダーの奴が大きくジャンプして剣を下に構えたまま【ストーンフロッグ】の頭に突っ込んだ。剣は【ストーンフロッグ】の頭に刺さる。【ストーンフロッグ】がしばらくピクピクと体を震わせていたが、やがてコロンと転がり動かなくなった。弟子たちの勝利の瞬間だった。



「やった、俺達だけで勝てたーーー!」



 リーダーが叫ぶと他の皆も手を取りあって喜んだ。

 


 今のは俺が考えた通りの倒し方だった。

 まずは回避能力が優れたものが囮になる。そして相手の攻撃方法や攻撃範囲を正確に分析する。有効な攻撃が出来なくても問題ない。まずは相手と状況の分析が必要だ。他の仲間の準備時間を稼ぐ。この世界の魔法は詠唱があったり、魔力を練る必要があるので使えるようになるまでに時間がかかったりする。よっぽど慣れていたり、俺の様に無詠唱のスキルとかがあれば別だけど。

 

 囮が時間を稼いでくれている間に魔法の準備をして、それを行使する。魔法は何も攻撃するだけじゃない。有効打にならなくても動きを封じたり、攻撃できなくするだけでも大分有利になる。結構皆魔法で直接的に攻撃するか、防御するかしか頭にない様だった。

 魔法が使える弟子はレベルはそこそこになったので中級ぐらいの魔法はみんな使えるようになっていた。ただそれを運用していくMPが足りていなかった。ガイ達と違って【成長速度アップ】や【成長値アップ】のスキルは持っていない、その為レベルが上がってもそこまでMPの上限が増えないんだ。そこが師弟契約と奴隷契約の差なんだよな。ただスキルレベルは早く上がるので【スキル習得度アップ】だけは憶えたみたいだけど。話を戻すがその為魔法を使える弟子は自分の使える最大の魔法を使うとすぐにMP切れを起こしてしまう。その魔法を使っても魔法に耐性がある【ストーンフロッグ】に対しては大したこと効果がないかもしれない。そこで消費MPの少ない低レベルの魔法を使って、攻撃するのではなく相手を攻撃出来ないようにする為に魔法を使う。

 弟子達は【ストーンフロッグ】の石化粘液をどうやってかわしたり、防御したりするかをずっと考えていた。しかしかわしたり防御したりしていてもこちらに有効な攻撃手段がない限り、いつかはかわしたり防御しきれなくなる。それよりもどうやってその攻撃を出来なくするかが重要なんだと俺は思った。

 魔法に耐性があるので異常状態にも出来ないので、物理的にするしかない。口を開かないようにするか、蓋をするかだろう。俺は手っ取り早く蓋をする方を考え付いた。それが弟子たちが取ったさっきの方法だった。低レベルの魔法だけでやるとなるとあれぐらいだろう。

 

 そして攻撃手段を封じれば、後は攻撃力の高い者の出番になる。まずは後ろ足は潰す。蹴られたり、そのままの状態で突っ込んできても怖いからな。それから止めに弱点の頭への攻撃。この辺までくればもう殆ど勝ちは決まっただろう。何匹も同時に相手しなければ、この方法で簡単に【ストーンフロッグ】を倒せる。しかし上手くいって良かった。見てるだけだと自分が戦うより緊張するな。弟子たちに怪我は一つもないし、余力も十分ある。何かあってもまだまだ戦闘継続したりは出来るだろう。十分な結果だと思う。


 弟子達が【ストーンフロッグ】の死骸を縄で縛って木に(くく)りつけようとしていた。

 今回は1匹だけ討伐して来いと言っておいた。そして死骸を持ち帰る様に伝えた。これで畑の肥料がまた出来た。



 さて弟子が街に帰るまでに俺が先に帰っておかないとな。見に来たことがバレてしまいそうだ。

お読み頂きありがとうございます。

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