行商隊
しかし問題は行商隊の方だった。こちらの方が色々とあって大変だった。【ソルトプラント】を育てるのは俺が殆ど自分で勝手に動いていただけど、こちらの件は人を育てないといけない。人が集まるとそれだけ色々と軋轢を生んだりする。
とりあえず行商隊に入りたい人を募集しないといけない。身内ではエリックやエミリオが希望した。若いのにしっかりと色々と考えているみたいだ。しかしそれ以外の人はアンダーソン商会の中でもいなかった。事務や管理、販売などの仕事をしてる人ばっかりだったので強くなりたいとかはあまり考えていないみたいだ。
ロイドさんと相談して冒険者ギルドで募集することにした。ロイドさんが強くなりたい人以外はギルドから出て行けと宣言してからギルドからは冒険者の数は減った。それでいいのかとロイドさんに確認したが問題ないと言っていた。このギルドで強くなれるんだったら噂を聞きつけたやつがまたやってくるだろうという事だった。ロイドさんも色々と考えてるみたいだ。
募集して応募してきた冒険者には色々いた。この街の為に、と言うこの街の出身の冒険者もいたが、ただあまり強くなくて低レベルのモンスターしか相手に出来ない冒険者が一定の給料を貰う為に応募してきたやつもいた。そう言う奴は向上心がないから弟子にしても全然成長しなかった。心が痛んだが破門と言う形で契約を解除して商会からは去って貰った。みんなはそんなことを気にすることはないって言ってたけど。師匠の方から師弟の契約解除した場合は育てたスキルはそのままになる。少しでも強くなったんだからそれで我慢してもらう事にする。
とりあえずやる気のある人が何人か残った。それに冒険者ギルドの人もロイドさん筆頭で何人かが鍛えたいとのことだった一緒に弟子にした。
街の東側に訓練場を作った。畑と同じように壁を作って、中はそんなにいじらずに休憩する為の場所なんかを作っただけだったけど。
そこで俺、ガイ、ブラン、キースが師匠になって師弟の契約をした。全ての契約は俺が【刻印術】を使ってやった。旅に出る前にこの街の刻印師にも師弟契約のやり方を教えておかないとな。師弟契約自体が最近作ったばかりでどんなことが出来るのかがまだまだ研究が足りなかったので今回で色々と実験させてもらった。
1つの契約に付き1つのスキルしか対応できないが重複は出来るのか?と言うのを試させてもらった。
ロイドさんがガイの剣術の弟子になった。その時にもう1つ体術のスキルも一緒に出来ないかと思って契約をしたら可能だった。だからロイドさんはガイの剣術と体術の弟子ってことになった。どうして前に気付かなかったのか、色々と試してみると師匠の持っているスキルレベルによるらしい。
師匠は一番得意としてる技術を弟子に教えることが出来る。1つだけだと思っていたが師匠の持ってる一番得意とするスキルと同じスキルレベルがあれば同時に教えることが出来るみたいだ。普通は何か得意なものがあってもスキルのレベルを上げるのは大変だ。そうそう高レベルのスキルは持てない。1つの事を突き詰めた結果で高レベルのスキルを持つのが普通だ。だから剣術のスキルが高ければそれを鍛える為に時間を割き、他のスキルも同じく高レベルってことはそうそうない。だがガイは剣術と体術はレベル10だ、だからどちらも同じぐらい得意としている。だからこそ2つのスキルの師匠になれたようだ。そうと分かれば仲間の皆は色々と他にもレベル10のスキルを持っているのでいっぺんに教えることにした。
最終的にガイは剣術、体術、気功術の師匠。ブランは体術、気功術、土魔法の師匠。キースが弓術、投擲、体術の師匠。俺が魔法全般の師匠になった。キースは少しレベルが足りてなかったので集中的に先にレベルを上げて貰った。【ストーンフロッグ】を倒したことで、弓術のスキルはレベル10になったんだけどね。
そうしたことが出来るようになったので想像していたよりも、もっと簡単に強くなれそうだった。本当は体術を教えてから剣を教えてとか順番にやっていこうかと思っていた。それがいっぺんに出来るので大分時間の短縮が出来る。
鍛える時には訓練場で組手なんかをしていった。元々冒険者をしていた人が大半なのでそれなりに筋が良くてみんな結構なスピードでスキルを習得して、レベルが上がっていった。ロイドさんは元々剣術のレベルが6だったが直ぐに10になった。やっぱり師弟契約の方が奴隷の契約よりレベルが上がりやすいようだ。後は教え方と本人のやる気もあるけど。ガイは近衛兵団にいたからか人に教えるのも上手だった。もうちょっと人心掌握出来たらそのまま団長でいられたんだろうけどな。ロイドさん以外の弟子もそれなりに成長していった。
ブランはどちらかと言うと体術と気功術の防御的な使い方を教えた。ガイとキースは素早さを生かして攻撃は回避することに重きを置いている。ただ冒険者の中には大きな盾や頑丈な鎧を纏って、攻撃を耐えたりする壁役の人間もいる。そう言う人達がブランの弟子になった。後はブランは土魔法では人形の魔法を得意としている。その為、その人形を見て【ソルトプラント】の畑の仕事に就く人がブランの弟子になった。畑仕事で人形を作って運用しようという事なんだろう。
キースは弓術やサポートの技術についてを教えていた。人当たりがいいキースが一番弟子から懐かれていた。ガイや、ブランは少し怖いらしい。そう言うところを見てキースがフォローしていた。やる気を引き出すには色々あるんだなと俺も勉強になった。
そして俺は魔法の師匠だ。ほぼすべての魔法を使いこなせるので魔法を憶えたりレベルを上げたりするにはうってつけだろう。冒険者以外でも教えて欲しいという人が商会の中にいたのでまとめて教えた。俺の場合は一旦色んな魔法を教えてみて、その人にあった魔法を選んで教えることが出来た。魔法も相性があって一つの属性に特化して学んだ方が覚えが早く、使った時にも威力が上がったりする。他の魔法使いだと一旦弟子になったらそう簡単にやめらえない。師匠が得意な魔法が弟子も必ず得意だとは限らない。俺の場合はそれがない、等しくどの魔法もレベル10で使えるのでそう言った制約がない。だから自分で言うのもなんだがかなり有用な魔法の師匠だろう。
魔法ならとケビンさんやヒューイさんも俺に弟子入りした。後商会の人にも何人か回復魔法に適性がある人に弟子になって貰った。行商隊が傷ついたりした時に治して貰おうと思ったんだ。この街にも回復魔法を使える人はいたがそこまで高レベルでもないし、この前みたいに状態異常を治してもらうのに遠くの大きな街まで行かないといけないというのが大変だと思ったから。後驚いたのがソフィアさんも回復魔法に適性があった。拳闘術とかを鍛えていったら普通に素手で魔獣を倒せるようになるんじゃないかと思ったけど、女性でお母さんなので街で後方支援に回って貰った方がいいだろうと思って何も言わないことにした。
3週間ほどで弟子の皆はある程度まで育った。人によるが大体スキルレベルが6前後になった。元から教わるスキルを使っていた人はもう少し高いレベルだが、それでもレベルの6スキルだったらBランクの冒険者が持ってるスキルレベルだ。魔獣はCランクからいてBランクの冒険者であれば何パーティかあれば倒せるという。ただうちの弟子たちは1つのスキルだけじゃなくていくつかのスキルがそのレベルなので普通のBランクの冒険者よりも強いと思う。だから戦い方によっては1人でCランクの魔獣なら倒せると思うんだか。
後は戦い方なんだよな。この世界の戦い方はセオリーがあるみたいだ。ただ皆そのセオリーを守って戦おうとしてる。人によって得手不得手とかあるから自分で考えたらいいのにって思う。俺は別の世界から来てるからそう言ったセオリーを知らず自分で考えて勝手に戦う。モンスターをある方法であれば安全に倒せる、そういうのは必要だと思うけね、命懸けだし。ただそれしかしなくなって自分で考えようとしないんだよな。特に低いランクの冒険者がそうだ。だからそれが通じなければ何をすればいいか分からなくなるみたいだ。
俺は元の世界でゲームをしている時にどうやったら敵に勝てるかを、シミュレートしたりして戦い方を考えたりしていた。この世界ではそう言う事がないんだろう。自分のかなわない相手には戦いを挑まない、勝てない相手に出会った次はない。仕方ないんだろうとは思ったけど、ただそう言うどうやったら相手に勝てるようになるかの考え方を皆あまり持ってない気がする。その考え方はどうやったら強くなれるのかにも通じていると思う。その考え方がないから今まで奴隷契約で強くなるっていう事や、師弟の契約にも気付く人がいなかったんじゃないかと思った。
その点が何とかならないかなっと考えていたら問題が起こった。
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