塩の成る木
街に戻ってからが大変だった。街の横にいきなり岩の壁が出来たんだからな。まぁ街も外壁に囲まれてるから中からは見えなかったみたいだけど地響きは聞こえていたらしい。街の門に戻ったら門番の人が凄く騒いでいた。これだと街の中の人も不安がってるかな。
とりあえずケビンさん達が問題ないとは伝えた。ちゃんと街全体に周知しないといけないという事になった。申し訳ないけどその事はお任せした。俺が出しゃばって言っても誰も信用しないだろうしね。
この日を境に俺達は物凄く忙しくなった。
それはもう、こんなにやることがあるのかってくらいに。少しだけ商会を作ったことを後悔した。
まずは塩の成る木の畑作りから栽培、収穫について。
塩の成る木を【ソルトプラント】と言う名前にした。
畑作りは俺もそんなに知識がなかったのでヒューイさんに頼んで農作に詳しい人を紹介してもらって色々と話を聞いたりした。その聞いた通りの事を人形に任せておけば直ぐに出来上がった。力仕事は大きな人形に任せて、種蒔きなんかは小さな人形を作ってやらせた。
【ソルトプラント】の種だが一本の木を成長させれば実が20~30個付く。実の中に塩と一粒だけ種が入ってる。それをまた植えれば生えてくるので、一度育てると数は増やせる。しかし初めに蒔く種は俺が用意しないといけない。ある植物の種をスキルを使って掛け合わせたんだけど、それを何とか50個程用意した。スキルには【模倣】と言うスキルがあって単純な物であれば複製が出来る。それを使って1つの種その物を複製できたらいいんだが、流石にスキルで色々といじってあるからか出来なかった。仕方がないので作る工程を【模倣】して時間を短縮して作った。それで第一弾の種蒔きをした。
育て方だがそんなに難しくない。水をやっていたら普通に育つ。そう言う風に俺が作った。病気にも強いので誰でも育てることが出来るだろう。ただこいつは他の植物よりも魔素を吸収する。多分塩を作るっていうのが化学反応とかで作っている訳ではなく、植物自体が錬金術みたいなのを使用してるっぽい。だから魔素を吸収してその材料にしてるみたいだ。魔素は自然に存在するものなので特に気にしなくてもいいかと思ったんだが木の数が多くなると、そこら辺一体の魔素が減るのか木同士が奪い合いをするみたいだ。だから育ち方に差が出てきていた。魔素を増やすなんてどうしたものかと思っていたんだが、そう言えば俺の【倉庫持ち】の中に魔獣の死骸が入ってることを思い出した。確か魔獣の肉には魔素が含まれているという話だった。俺は試しに魔獣の死骸を粉砕して肥料にして撒いてみた。するとどの木も一律の成長を見せるようになった。これからはもしかしたら魔獣の肥料作りをしないといけなくなるかも。魔獣も増えて来てるみたいだし率先して狩るか。
そうして【ソルトプラント】は順調に育っていった。収穫までには人を雇えそうだし何とかなるかな。流石に実を収穫するときには人形は使えない。力が強かったり手がゴツゴツしてるので繊細な仕事向きじゃないんだ。
後は収穫できた塩をどういう形で売りに出すかなんだけど、そこが結構問題だったりする。
そもそも世界にない【ソルトプラント】と言うものから取った塩を売る。どうやって作った塩かはお客さんには説明しないといけないだろう。謎の植物から取れた塩を普通は買おうと思わないだろうし。【ソルトプラント】自体も世間に認知させないといけない。
それはヒューイさんと話し合った。普通に海水から取れた塩よりもしばらくは安価にして試してもらう。皆が問題ないと思える様になったら普通に売りだす、そんな感じになりそうだ。行商で回るのなら実そのものを持っていって見せてみるとか、少しだけタダで配ってもいいかも知れない。
商業ギルドが認めた商品だったら信用出来るという事で、売れるのは売れるだろうと言っていた。ただその為には本部に【ソルトプラント】がどういう物かを伝えて、問題ないことを認めて貰わないといけないとも言われた。流石にヒューイさん1人が認めても他の街で売ったりは出来ないだろう。商業ギルドを通して新しい塩が出来ましたってのを世間に公表して貰った方がいいだろうってことだった。
しかしこんな物をどうやって作ったのかを商業ギルドの本部に聞かれることになるかも知れないとも言われた。
それは面倒なことになる予感がする。どう考えても普通の人はこんな植物作れないしね。偶然それに似た種を見付けて少しだけいじったしたことにしようかと思った。まぁその件については実際に商業ギルドに届け出をしてから考えようという事になった。今考えてもどういう事になるかわからないし。そう言えば他の香辛料の植物だったりも持ってたりするんだけど、まずは【ソルトプラント】を普通に売れるようになってからでもいいかな。あまりに一気に色々やると対応しないといけないことが増えて訳が分からなくなりそうだしな。
こんな感じで生産と販売の流れはも出来てきた。それをケビンさんに伝えて今後運営をしていって貰おうと思う。ケビンさんもいろんな商売をしているから俺よりもうまく回していってくれるだろう。
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