宣言
俺達は街に戻ってきた。
ロイドさんは俺達にギルドまで一緒に来て欲しいと言ってきた。俺はガイとブランに合流することが出来ると思って承諾し、一緒に冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは前に行ったリステルの街よりは大きかった。グラントの城下町にあったほどではなかったけど一階には酒場もあった。中に入ると結構な数の冒険者が酒場の方で酒を飲んでいた。もしかしてあれかな、魔獣が出るから外に出れなくなってここでくだを巻いてるんだろうか。
気付くとロイドさんは部屋の中心に歩いて行った。
「おい、てめぇら、よーーーく聞けーーー!」
部屋の中心に立つロイドさんが大きな声を張り上げて言う。
その声を聞いてギルドの中にいた人が皆ロイドさんに注目する。
「この街の近くをうろついていた【ストーンフロッグ】は討伐された!」
ロイドさんの言葉に皆がざわつく。
「それを倒したのはそこに居るダイザンっていうパーティのダイゴとキースだ。」
その言葉を聞いて今度は俺達の方にみんなの注目が集まる。なにこれ?どういう事?
あっ、ガイとブランを見付けた。二人共なんか微妙な表情してる。
いや、違うよ。俺がこんなことして欲しいって頼んだわけじゃないからね。
「しかもだ、二人共ギルドランクはCランクなんだぞ。」
その言葉を聞いて更にざわつきが大きくなる。
「こいつらはこの街を拠点としてる冒険者でもねぇ。てめぇらそんな奴に獲物をかっさらわれて恥ずかしいと思わねぇのか。」
ロイドさんの言い方はあれだが、ここにいる冒険者達に発破を掛けたいんだろう。ここは何も言わない方がいいだろう。
「冒険者ってのはなぁ、戦えないやつを守るためにモンスターを討伐する奴の事を言うんだ。ここにそんな器量のあるやつはいるか?いねぇだろう。」
ロイドさんが周りを見渡すがみんな無言だ。
「俺は決めたぞ。うちのギルドには強くなって街の奴を守る気があるやつしかいらねぇ。それ以外の奴はどっか違う街にでも行くんだな。だがな、強くなりたい奴は俺が責任もって強くしてやる。分かったか。」
ロイドさんの宣言を聞いても誰一人として何も言わない。まぁいきなり現れてそんな事言われてもって思うよな。
「俺の言いたいことは以上だ。ここに残るんだったら心するんだな。」
ロイドさんはそう言って俺達の方に戻ってきた。いいのかな、いきなりあんな宣言して。でもまぁ正直に言って俺はすっきりしたけどね。ロイドさんが去った後も冒険者達はざわざわしてる。これからどうするかパーティの中で話し合ったりしてるんだろう。
「主」
ブランとガイも俺達の所にやってきて声を掛けてきた。
「いったい何があったんだ?」
ガイが聞いてくる。何があったといってもなぁ。俺もこんな事になるなんて予想してなかったからな。
「ごめん、また後でゆっくり話す。」
「わかった。」
俺が難しい顔しているのでガイは納得してくれた。
「勝手に名前を使ってすまんな。」
ロイドさんが俺達に謝った。
「いえ、問題ありません。【ストーンフロッグ】を倒したのは事実ですし、Cランクっていうのもホントの事ですから。隠していてもその内バレてしまうと思います。それよりもこのタイミングで言ってもらった方がインパクトあるでしょうしね。」
「それでどうする?例の件の承認なら問題ないぞ。後の二人にも伝えるか?」
「ありがとうございます。ただ私が先程言ったように近くに畑を作ってからでも構わないんですが。
後畑を作る時に場所や作り方に問題ないか確認をして頂きたいので、その時に同行してもらいたいんです。」
「そうか、じゃあその時にでも話をするか。それはいつになる?」
「私の方はいつでも問題ないです。明日でも可能です。皆さんの方がお忙しいのでは?」
「いや、この街が変わるかも知れない大事な件だ。他の二人もこちらを優先するだろう。」
「そう仰って頂けると光栄です。では明日の昼過ぎにでもまたケビンさんの所でお会いできないでしょうか?」
「あぁ分かった。ケビンとヒューイの方には俺から伝えておこう。」
「ありがとうございます。では、俺達は宿に戻ることにします。」
「おい、【ストーンフロッグ】を討伐した報酬はいらないのか?」
「あ~、そう言えば。
う~ん、元々倒す気でしたし結構です。」
「お前マジに言ってんのか?」
「いや~、あはははっ。」
報酬貰おうと思ったらギルドカードを見せないといけないんだよね。でも今この状況でどんなスキルを持ってるかなんかを考えるのが面倒なんだよな。まだ俺の素性とか詳しい話はしてないし。他の冒険者もいるしからその件は別で話したいしな。
「ホントに変わってるなお前。」
「まぁそういう事でまた明日お願いします。」
俺はそう言ってギルドから逃げ出す様に外に出た。
ガイ達も俺の後を追って一緒に出てきた。
「とりあえず取って貰った宿に行こうか。そこで詳しい話をするよ。」
俺はそう言ってガイに宿までの案内を頼んだ。
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宿について人心地ついてから俺は今日あったことをガイとブランに伝えた。
「そんなことを考えていたのか。」
ガイが俺の話を聞いて考え込むような仕草をして言う。
「うん、だからこの街にしばらく滞在すると思う。多分一月位かな。
その間に皆にして貰いたいことが色々と出てくると思うんだけど・・・。」
「俺は大丈夫っす。自分の生まれた街の為に頑張るっす。」
そうキースが答えてくれた。
「わしも主が望むことであればお安い御用じゃ。」
ブランはいつも通りだな。
「俺も別に問題ない、色々といい経験になるだろう。」
ガイも賛同してくれた。
「みんなありがとう。」
三人にお礼を言う。
「これからの予定で決まってることはあるのか?」
ガイが聞いてくる。
「そうだね、魔獣は倒したから次は畑作りかな。それも明日から作り始めるからブランには手伝ってもらうことになる。後の二人はもしかしたらロイドさんが言ってた冒険者を鍛えるっていうのを手伝ってもらうことになるかも知れない。行商隊に入る人も鍛えたいしね。後は行商隊が出来上がるまでの間街から出る人の護衛とかの仕事もあるかも。」
「心得た。」
「わかった。」
「了解っす。」
三人共そう言ってくれた。
「そう言えばガイとブラン、冒険者ギルドではどうだった?何か目新しい情報はあった?」
「そうじゃな~、とりあえずこのギルドにおるのはほとんどDかCランクの冒険者達だったのう。
そして魔獣が出て依頼を受けることが出来ないと皆愚痴ばっかり言っておった。結局わしらはその愚痴ばかりを聞かされておったのう。」
ブランがため息を吐きながらそう言った。
「そうか、大変だったね。嫌な役回りを押し付けて申し訳ない。」
「いや、問題ない。しかしその為皆ほとんど街の外に出ておらんから大した話は聞けなかったのう。
ただそう言えば勇者に関しての話が出ておった。」
「えっ?そうなんだ、どういう話?」
「何でもグラントの国が勇者を召喚できたと他の国に吹聴してる割に、誰もその姿を見たことがないって話じゃわい。どこで何をしているのかもわからないらしいんじゃ。それで本当に勇者を召喚したのか他の国は怪しんどると言っておった。」
ブランの言ったことを考える。俺達って結構前に召喚されたよな。それでも全然姿を見せてないんだ。どういう事だろう。城に軟禁でもされてるだろうか。というかモンスターの討伐とかせずにずっと城に籠って鍛えてるのか?そんなことをしててもレベルは上がらないし、ちゃんと強くなれないと思うんだけどな。これって俺が勇者ってことを言ってもホントにいいんだろうか。バレてもいいと思ってたけどなんか心配になってきた。やっぱり国の偉いさんとかにバレると外交に使われたりするんだろうか。それはやだな~。ケビンさんとかにも聞いてみようかな。流石に俺を売るようなことはしないと思う、多分。
とりあえず今日は色々と気を使って疲れたし、また明日から頑張ろう。
お読み頂きありがとうございます。




