冒険者とは
「それで商会を作るとはいう事になるんですか?出来た塩をケビンの所で売買して貰えば済む話ではないんでしょうか?」
ヒューイさんが聞いていた。
「えぇ、私はそれ販売する以外に、その売買を他の街で行う為の行商隊も設立しようと思っています。
具体的には商品を運び、その警護をする方々です。」
「ほおぅ、するってぇと何か?今後街を出るのに冒険者の警護は必要ないってことか?」
今まで会話に参加してこなかったロイドさんが眼光鋭く俺に言った。
「えぇ、そういうことになりますね。」
「てめぇ、冒険者のくせして自分達の仕事を失くすつもりか!」
俺の言葉にロイドさんは額に青筋を立てた。
「しかし今街の外には魔獣がうろついてて警護の仕事を請け負ったりしてないんでしょう?その魔獣を倒したりせず、その出来ない仕事をなくされて怒るんですか?」
「そんなの仕方ないだろう、Bランクの魔獣だぞ。相手にできるやつなんざそうそういないんだよ。」
「そうですね、魔獣は簡単に討伐出来る訳ではないでしょう。
私はグラントからこの国にやってきました。来る間に3体の魔獣を討伐しました。魔獣の動きが活発になっている様でこれからもっと増えてくるかもしれません。
そう言った時に全てを冒険者に任せるんですか?冒険者は自由に依頼を選べます。危険な魔獣が出るかもしれない護衛の依頼をわざわざ受けないでしょう。そして鍛えてその魔獣を何とかして倒そうと考えていないでしょう。
でも商人の人たちは違う。危ない目に合おうが生きていく為に外の世界に出るしかないんです。たとえ一緒に行ってくれる冒険者の人がいなくてもね。その人たちが自分の事を守ってくれる人を作ることがいけない事ですか?旅に出る時の護衛の仕事がなくなるだけです。その他の依頼はそのまま冒険者の方が継続して行えばいいと思います。
今まではモンスターも弱かったし護衛するけど、強いモンスターが出て命が惜しいからもう護衛するのは止める、後は勝手にやってくれというのはあまりにもひどい話ではないでしょうか?」
「そんなこと言ったって、いきなり魔獣倒せるくらいまで強くなれる訳ないだろうが。」
「いえ、なれます。一か月くらいでCランクの魔獣位なら倒せるように鍛えることが出来ます。」
「はぁ?そんなこと出来る訳ないだろうが。仮にできたとしてどうやってだよ?」
「それは私のノウハウなので簡単にはお教えできません。ただ私が商会を作ることを認めて頂けるのであればお教えします。まぁ教えたところで出来るかどうかは別の話ですがね。」
「なんだと、てめぇ。調子に乗ってんじゃねぇぞ。」
「まぁまぁ、一旦落ち着いて下さい。」
ヒートアップした俺とロイドさんの間にケビンさんが入って場を落ち着かせる。
ロイドさんの意見も分かることはわかる。俺も冒険者であって、自分の選べる仕事を減らされるとなるとどうかと思う。しかし同時に何故減らされた分の仕事を頑張って取り戻そうとしないんだろうかとも思う。そりゃ冒険者の仕事なんて命懸けのもので、無茶して強いモンスターを倒せるようになれって言われても出来ないだろう。
しかしこの世界には奴隷契約の様に、普通よりも簡単に強くなれる手段がある。ロイドさんに話した強くなる方法は奴隷契約以外の事だ、これも俺が試したことで発見した。この世界には強くなる方法が結構ある、でも誰もその方法を試していない。
今まで行ったこのとあるギルドにいるのは大体Dランク、良くてCランク位の冒険者が大半だ。Dランクのモンスターを狩っていれば生活しようとすれば出来る。無理して強いランクのモンスターを倒してランクを上げる必要はない。ランクが上がればそれだけ危険度の高い依頼が回ってくるんだ。だから比較的安全なDランクや、Cランクでいいといった冒険者がこれまで旅中に見てきた中に多くいた。強くなろうと思えばいくらでもなれるのにだ。
自分の出来ない仕事なのに、その仕事をなくされたら怒る。誰かがその仕事をやってくれれば、また自分達の出来る仕事になるはずだと。
それっておかしくないか?なんだか腹が立つ。だから俺はそんな冒険者に頼るよりも、頼れる人間を自分達で作った方がいいと思ったんだ。それでギルドの依頼が減っても知るもんか。待ってれば勝手に依頼が舞い込んでくるばっかりだと思うなよ。
「私は全面的にダイゴさんの案には賛成します。」
ケビンさんがそう落ち着いた声で言った。
「なんだと、てめぇ。」
ロイドさんが今度はケビンさんに食って掛かる。
「私は1人の町民として、そしてこの街の長としての意見です。このように素晴らしい商品を作ってもらえば町は潤い活性化するでしょう、そして新たに産業などに従事する人も仕事を得ることが出来る。更に街の外へ安心して商売をしに行けるのであれば更なる発展にもつながるでしょう。デメリットはないと思います。」
「確かに。商業ギルドとしてもこの街が活性化して、他の街とは違った新しい街の形態に生まれ変わることについては賛成だ。ここで塩を作れるとなると、他国への販売が出来るようになるかもしれないし、わざわざ他国から高い金を払って塩を購入する必要が無くなるという事だからな。」
ケビンさん、ヒューイさんは俺を支持してくれるようだ。
しかし、
「俺は反対だ。」
ロイドさんはそう言った。
「それはどういった点で反対されているんですか?」
俺はロイドさんに質問する。
「何となくだ、気が乗らない。」
「そんな理由で。」
ロイドさんの言葉にケビンさんの方が呆れて俺より先に返す。
「だってそうだろう、冒険者達に伝えるんだぞ。こんなことになりましたから今後この街では護衛の仕事はなくなります、ってな。」
「それは当たり前の話だと思いますけどね。さっきダイゴさんが言ったように今は護衛の依頼を冒険者は誰も引き受けないんでしょ?」
今度はヒューイさんがロイドさんにそう返した。
「そりゃそうだが・・・。」
「だったらやっぱりその仕事をなくされても仕方ないじゃないですか。」
「じゃあどうするんだよ、その魔獣は。冒険者にそんなこと言ったら皆この街から出て行くかもしれないぞ。」
「その魔獣は私たちが討伐します。」
ヒューイさんとロイドさんの会話に割り込んで言う。
「私たちがその魔獣を討伐すれば、他の冒険者もモンスターを狩りに行けるようになるんじゃないですか?」
「そうか、魔獣を倒したことによって冒険者達からも感謝されるでしょうし、そのダイゴさんが行商隊を立ち上げて、警護の仕事をするという事だったら反感も買いにくいってことですか。」
俺の言葉にケビンさんが頷きながら言った。そこまで深くは考えてなかった、他のモンスターを狩りに行ける様になったら警備の仕事なくてもやっていけるから問題ないかなって思っただけなんだけど。
「そりゃそうかも知れないがホントに出来るのか?」
ロイドさんが挑戦的な目をして言ってくる。
「この周辺出没する魔獣ってBランクの【ストーンフロッグ】ですよね?」
「あぁ、そうだ。」
「でしたら余裕です。」
「へぇ、大口叩きやがるな。」
「事実を言ってるだけです。」
「余程腕に自信があるのか?」
「それなりにですかね。」
「お前ギルドランクは?」
「Cですよ。」
「何!?Cだと、馬鹿にしてるのか?Cランクの奴が【ストーンフロッグ】を倒せる訳ないだろう。」
「いえ、倒せると思いますよ。」
「へぇ、面白れぇ。だったらお前が【ストーンフロッグ】を倒せたらこの話乗ってやるよ。」
「言いましたね、ケビンさんもヒューイさんも今のロイドさんの発言聞いていらっしゃいましたよね。」
「あぁ、確かに聞いたよ。」
「でしたら、【ストーンフロッグ】倒してこの話を進めさせてもらいます。」
「あ~、まだ問題がありますが。」
俺とロイドさんのやり取りに口をはさんだのはヒューイさんだった。
「問題でしょうか?」
「そうだ、ロイドも今の事が上手くいったら承認するのであれば商会の設立は可能でしょう。だが作るだけだ。その後はどうするんですか?結局はその塩の成る木を栽培する場所や人でもいるんでしょう?」
「そうですね、それについては一応考えてはいます。
お聞きしたいんですがこの街の周りの土地は誰が所有してることになるんでしょうか?国ですか?」
「いや、この街の周り10kmぐらいはこの街の所有になっています。エルバドスは基本的に領主などいない国家だから街単位で土地を管理してます。そこら辺の森でも開拓していくつかの家を建て住民がいれば町として認められその土地はその町のものになりますね。」
「でしたらこの街の周りに畑を作っても問題ないんですね?」
「それはそうですが、作る為の費用はどうするんですか?
畑を作り、壁で囲いモンスターなどが入ってこないようにするなんて物凄い額のお金が必要になりますよ。」
俺の質問にヒューイさんが答えてくれた。
「それは私達が勝手に作ります。出来ればこの街の防壁とその畑を繋げて、楽に移動できるようにしたいですね。」
「そんなことが出来ると?」
「えぇ、可能です。1日でというのは無理かもしれませんが数日あったら出来る気がします。」
「あなたはいったい何者なんです?」
俺の言葉にヒューイさんが何度も聞かれたことのある言葉を言った。
「旅の冒険者ですよ。」
お読み頂きありがとうございます。
2016/10/18 それは俺のノウハウなので⇒それは私のノウハウなので 修正しました。
2016/10/20 ヒューイの話し方を修正しました。




