デモンストレーション
はぁ、正直しんどい。
自分より年上の人相手にこうしたい、ああしたいと交渉するのは疲れるよ。
俺も別に商売のことについて詳しく勉強したことはない、ほとんど適当に得た知識だし。だからこうして自分で商会立ち上げてなんて本当だったらしたくはない。でも多分こうする方法が一番良いような気がするってだけだ。正直に言うと少しばかり楽しそうではあるし。元の世界ではこんな経験なんてめったに出来ないだろう。俺はやりたいと思ったことをやるだけだ。周りの人が優秀っぽいし力を貸して貰えば何とかなる気がする。とりあえず挑戦してみる。駄目だったら駄目でまた考えよう。
そんなことを考えながら俺達は庭に移動した。
俺がこちらの方が都合がよいとケビンさんに伝えて庭に通して貰ったんだ。
周りに建物がある中庭だ、広さは結構あってちゃんと手入れをしている草花があった。テーブルと椅子のセットもあって、たまに商談でもこの場を使うらしい。外の方が気分的にいいのもあって、初めての商談の時などは緊張も取れ話も弾む場合があるらしい。
そこで俺達はお茶を頂いた、そのおかげか俺も一息つくことが出来た。
結構な時間が経ったとき、女性に連れられて2人の男性がこちらに歩いてきた。その2人がそれぞれのギルドマスターなんだろう。
1人は眼鏡をかけ青い髪と目をしていた。すらりとした長身で身なりもピシッとしている。もう1人は大分ラフなカッコをしている。赤い短髪に、同じく赤い瞳。野性味のあるなかなかの男前だ。体格もいい。年の頃は二人共ケビンさんと同じぐらいの年齢かな。旧知の仲と言っていたしもしかして同年代の幼馴染か何かだろうか。
「ケビンいきなり呼び出すとはいい度胸じゃねぇか。」
こちらに来て直ぐ赤い髪の方がケビンさんに悪態をつく。
「お呼び立てしてすまんね。ただこの街の行く末を決めるかもしれない重要な件なんだ。」
「ほう。」
ケビンさんの言葉に赤髪が面白そうと言った感じで声を漏らす。
「とりあえず紹介をさせてくれ。
こちらが旅の冒険者のダイゴさんとその仲間のキースさんだ。」
ケビンさんがそう俺達を紹介してくれる。
「ダイザンというパーティのリーダーをしている、ダイゴと申します。以後お見知りおきを。」
俺はそう言って目の前の2人にお辞儀する。
「こちらも私から紹介しよう。こちらが冒険者ギルドのマスター、ロイド・オレガンだ。」
「よう、ロイドでいいぜ。」
ケビンさんの紹介で赤髪が手を軽く上げて挨拶する。なんか軽いな。
「そしてこちらが商業ギルドのギルドマスター、ヒューイ・パッカードだ。」
「初めまして、私もヒューイをお呼びください。」
青髪の方が挨拶をしながらお辞儀した。
「とりあえず一旦座りましょうか。」
ケビンさんがみんなを促して一旦椅子に座る。
この場にはケビンさん、エリック、俺、キース、そして今紹介を受けたロイドさんとヒューイさんの6人がいる。
「しかしこの街の行く末を決めるかもしれないというのは、一体どういうことですか?」
皆が座ったのを確認してヒューイさんが切り出した。
「それはこちらのダイゴさんが新たに商会を作って、全く新しい商売を始めようと計画されているんです。」
ケビンさんが一応簡単には説明してくれた。ただそれから俺の目を見ているので、これからは俺が話した方がいいってことなんだろう。
「そうなんです、これを使ってです。」
そう言って俺はケビンさんにも見せた塩の成る木の種を2人に見せた。
「これは一体?それに新しい商売をするとしても、この街の行く末を決めるようなことになるんでしょうか?」
ヒューイさんが疑っている様な顔をして言った。
「まずはこれがどういうものか見て頂いた方がいいと思います。」
俺はそう言って席を立って離れ、近くの花壇まで行く。そして手に持った種をその花壇の土に埋めた。ケビンさんの許可は先程取ってある。だがケビンさんも含めて皆が興味深そうにこちらを見ていた。
そして俺はある魔法を使う。
「【急成長】」
俺が唱えると今種を植えたところの地面が光る。そして光が収まったと思ったら土から芽が生える。芽が生えたかと思ったら、その芽は恐ろしいスピードで成長して幹になり、枝と葉っぱを生やす。
俺が使った魔法は土魔法の中の【急成長】という魔法だ。この魔法は自分のMPを養分に変換して植物を急成長させるというものだ。注ぎ込むMPが多ければ多い程植物の成長速度は上がる。ただ急成長する分偏った成長になる。実をつける植物だったら極端に付ける実の数が減るなどだ。今回はデモンストレーションの為だし1つでも実を収穫できればいい。
そうこうしてる間に花が出来、そこから実になっていく。乳白色の実が付き、ドンドン大きくなっていき手の平ぐらいの大きさになった。出来た実は1つだけだった。それを俺は手に取って木からもぎ取る。もぎ取った木はそのまま成長が進み枯れてしまった。
その実を持ったまま皆がいるテーブルまで戻る。
それから実の上の部分を直径1cmくらいの穴が空くようにナイフを立てる様にして切り取って穴を空ける。あらかじめ用意して貰っていた皿の上に実を傾ける。すると空けた穴からサラサラと白い粉が皿の上に零れ落ちる。その光景を見てケビンさんも驚いた表情をしてみている。実際にどういうものかは今初めて見せるしな。少し山が出来る位更に注いでから実をテーブルの上に置いた。
「これは塩なんです。」
俺はそう言って今実から流れ出た塩が乗っている皿をスッと前に押した。
「塩だと?」
「塩ですって?」
ロイドさんとヒューイさんの驚きの声が重なる。
「えぇ、私が売りたいのはこの塩の成る木から出来た塩なんです。」
俺がそう説明するが2人は驚いたまま固まっていた。そりゃそうだよね。俺もいきなり言われるとそうなるとは思うけど。
「えっと、一応説明させてもらうと、今は魔法で凄い勢いで成長させてしまったんですけど普通は1月くらいで実が取れるようになります。そして1つの木に付き大体20~30個の実が出来ます。その実の中にこうした塩がいっぱい詰まってる感じですね。」
「いや、説明になっていないような気がするんですが。これは一体どういう事なんですか?こんな木があるなんて見たことも聞いたこともないですよ。」
俺の説明にヒューイさんが怒ったように言った。
「簡単に言うとこれは私が私のスキルを使って作ったオリジナルの植物です。だからこの世界では私しか持っていません。見たことも聞いたこともないのはそのせいでしょう。」
「いやいや、作った?こんなものをですか?どんなスキルを使ったらこんな植物が作れるっていうんですか?」
「申し訳ありませんがそれはお教えすることが出来ません。まぁ教えたところで真似できるとは思いませんがね。」
「それはそうかもしれませんが・・・。」
ヒューイさんが少し落ち着く。こんな大儲け出来る商品の作り方なん、て簡単に教えれる訳ないことを商人として気付いたんだろう。
「しかしこんなもの本当に塩として食しても大丈夫なんですか?」
「だったらお前が調べたらいいじゃないか?商業ギルドのマスターなんだから。」
「それもそうか。」
ヒューイさんの質問にロイドさんが答えた。ロイドさんの方が落ち着いてるみたいだ。
「確認してもよろしいですか?」
ヒューイさんが俺に聞く。
「えぇ、どうぞ。」
俺はそう笑顔で答える。
商業ギルドでは商品の品質を調べて値段を決めたりする。だからギルドの人間は商品の品質を調べることが出来るんだろう。恐らくスキルの【鑑定】を使うんだろうけどね。
「本物だ、しかも最高品質と出た。」
しばらく塩を見つめた後ヒューイさんが言った。そりゃね、植物がそのまま製造してる感じだから不純物とかも入らないんだよね。だからそこら辺の不純物の入った塩よりもよっぽど品質はいいはずだ。
「お分かりいただけましたか?」
「あぁ、これが大量に栽培できるとしたら、どれくらいの利益を生むかは簡単に想像がつく。
この街で栽培して販売することになったら街は大きく変わるだろう。」
ヒューイさんはそう唸る様に言った。
とりあえず第一段階はいけたかな。インパクトは与えられただろうけど、まだまだあるし胃が痛くなる。
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