やりたいこと
「でしたら、この植物から取れた塩を私達アンダーソン商会に下ろして頂けませんか?独占契約という事で、もし必要であればこの植物を育てる場所や人材を提供いたします。」
興奮したケビンさんがそう提案してくる。
「お申し出は大変ありがたいのですが、私の考えはこの塩を売るだけではないのです。」
「それはどういう事でしょう。」
「この塩を作れば近くの街から買い付けにやってくる商人が増えるでしょう。もしかすればそれだけで儲けを出せ、他の街へわざわざ売り付けに行かなくても済むかもしれません。ただ他の街の物の仕入れなどもあるでしょう、その時に冒険者の護衛を雇い、馬車を走らせるのは大変ではないですか?」
「それはそうですが何か別の方法でもあるんでしょうか?」
「そこで私は冒険者とは別に各町を回る行商隊を作ろうと思います。それぞれの隊に手練れの人間を配置して、街を回る時に現れたモンスターや盗賊に襲われた時に対処するようにします。」
「そんなことが?」
「えぇ、私は短時間で人を鍛えることが出来るんです。そうですね、本人のやる気にもよりますが1月もあればCランクの魔獣位なら1人で倒せるまでに鍛えることが出来ます。」
「まさか・・・。」
「このキースも1月もかからない間に今ではCランクの魔獣でも1人で倒すことが出来るようになりました。これも信用できないかもしれませんね。
ただ全て事実なんです。しかしこんな話しても誰も信じないでしょう?だから私は自分で商会を作って自分でやろうと思ったんです。」
「しかし、いや、でも本当なら。」
ケビンさんは少し混乱している様で色々とブツブツ呟いている。
「別に私は信用してもらわなくてもいいんです。ただどうすれば効率よく塩を売れるかなんてことは考え付きませんし。他の商人との繋がりはありません。もしいきなり商売を始めて、いくら凄いものを売っていても顧客が付くかどうかはわからない。協力して下さる人が欲しいことは欲しいんですがね。」
「それは、私共にあなたの商会に付けとおっしゃってるんですか?」
ケビンさんがまた鋭い目をして俺に言った。
「さぁ?それはケビンさんが判断することなので私の方からはいう事はありません。ただ私がこうした商売を始めた時にケビンさんにとっては面白くない相手になってしまうかもしれませんね。」
ケビンさんは目線を下げ逡巡しているようだ。
「ただ私は別に私だけが儲けたい気持ちでやる訳じゃないんです。」
「それはどういう意味ですか?」
「そのままの意味です。正直私は冒険者として生活しても普通に稼いで生活できると思ってます。旅をして、贅沢したい訳でもないのでそんなにお金を使うこともないですしね。ただこの街には仲間の家族がいるんです。だからこの街全部がいい感じになってくれたらなって思ってます。
安全に生活できて、みんな楽しく仕事に付けて街が活気づいたらいいなって思います。
だから今回儲けが私に入らなくてもいいかなって思ってるんです。」
「まさかそんな考えをお持ちとは。」
「別に聖人君子になりたい訳じゃないですよ。ただ自分がやりたいと思う事をやるんです。そんな街があったら楽しそうじゃないですか。」
「そうですね、そんな街があれば楽しそうですね。」
「まぁ商売人としては失格だと思います。儲けは考えないと働いてくれる人にお給料払えないですしね。」
「そういう事を考えてくれる人が欲しいという事でしょうか?」
ケビンさんがこちらの様子を伺う様に聞いてくる。
「そうですね、そういう事をしっかりと舵取りできる人は必要だと思います。」
「でしたら、是非とも私も参加させてください。」
ケビンさんは力強くそう言った。
「よろしいんですか?初めて会った冒険者の言ったことを信じても。」
「えぇ、あなたからは底知れない何かを感じます。商人である私の魂があなたについて行けと言ってるんです。それにあなたの話を聞いて、子供の頃におとぎ話を聞いた時の様なドキドキ、ワクワクを感じました。
いつも頃からかモンスターに怯えながら商売をすることに疲れました。そして生活をするために他の商売人よりもどうすれば儲かるかしか考えなくなりました。この街で一番の商会になりましたがそれだけです。この街に住む人には今希望がありません。魔獣が出たことに恐れ商売が出来なくなり、困窮してる人も多くなってくるでしょう。そう言ったことを抱えた人が増えれば街はどんどん衰退していくだけです。だがあなたのおっしゃったことには希望がある。それが実現したらどれだけ素晴らしいことになるでしょう。」
ケビンさんは目をキラキラさせてそう言った。
良かった、話をした人がそう思ってくれる人で。これがもし商売の事しか考えない人だったらどうしようかと思った。そんな人だったら俺はさっさと話しを止めてこの場から去るつもりだったけどね。
「ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです。
ただ直ぐにこのお話をどうこうとはいかないとは思っています。この植物を作る為の場所やどうやって作っていくか、行商隊をどう編成して、どう鍛えるか、問題は山積みなんです。色々と調整しないといけなくなる部分もありますし。
それで出来ればこの街の一番偉い方に紹介いただけないでしょうか?こうしたいとかお話してみたいんですが。」
「はははっ、そうですか。そうですよね。ただこの街の偉い人は目の前に1人います。」
「ケビンさんがこの街の長ってことですか?」
「そうとも言えますが、この街は3人の人間が町長としているんです。私は民の代表という立場ですね。それから商業ギルトのギルドマスターと冒険者ギルドのギルドマスターが3人でこのエデバラを取り仕切っています。」
そうか、ケビンさんも町長だから街の事が良くなるんだったら嬉しいのか。だからあんな考えが出来たんだな。
「でしたら後のお2人にこのお話をさせて頂ければよろしんでしょうか?」
「そうですね、後の2人が承認すれば問題ないでしょう。
私が一緒に行って話しましょう。この後でも一緒に会いに行きましょうか?」
「よろしいんですか?」
「えぇ、私もこのお話を伺って年甲斐もなく興奮しております。直ぐにでも行って話したい気分です。」
「それはありがたい申し出です。」
「いや、それぞれに会って同じ話をするのは二度手間ですし。こちらに2人を呼び出しましょう。」
「そんなこといいんですか?」
「えぇ、2人とは旧知の仲ですし。今は魔獣のせいで街の外に出ることもあまりできなくなって商業ギルドも冒険者ギルドも暇でしょうし大丈夫です。
さっそく呼び出しましょう。エリック店の者に言って2人をここに来るように伝えるんだ。至急で重要な件だと伝えるようにな。」
「はい、わかりました。」
そう言われたエリックはいそいそと部屋を出て行った。
これで上手くいくといいけど、また次のプレゼンだな。頑張ろう。
お読み頂きありがとうございます。
なかなか経済に関することは難しいですね。戦闘とか考えてる方がよっぽど楽です。
一商人が街の代表でもいいものか考えたりとか。




