女王
俺達はブラン達と別れてまた暗いトンネルを進む。
後は直接【アーミーインセクト】の女王の所に乗り込んでいって倒すだけだ。
俺の【索敵】には一際大きい影が見えている。食料庫からはそんなに遠くない。女王は動けないから食料を運ぶのに近い方がいいとかのパターンかな。
道を進み、もうすぐ女王の元へ辿り着くだろうと思い一度立ち止まりガイとキースにどうやって戦うかを確認する。俺が読んだ本には【アーミーインセクト】の女王の事についてはそこまで詳しく書いてなかった。そう言う存在がいるという事ぐらいだった。だから相手がどんな手段で攻撃するかもわからない。そしてここは地下だ、下手な攻撃をしたらもしかして崩落してみんな生き埋めになったりするかもしれない。だから今回も俺が魔法で他に影響がないように仕留めようと思ってることを伝えた。ただ準備に時間がかかりそうなので、その間注意を引いてもらうようにお願いをした。
倒す算段も付いたところで向かうとするか。
俺達が入ったのは食料庫の何倍もある部屋だった。
俺達の目の前には大きな腹をした【アーミーインセクト】の女王がいる。
しかし大きな腹と説明すると簡単だがその姿は想像を絶していた。
体長は10m位ありその8割が腹だ。腹の部分は内臓をそのまま体の外に出したような見た目でうごめいていてとても気持ちが悪い。そこに足が生えている胸と小さな頭が付いている。今は足を小刻みに動かして奇声を上げ俺達を威嚇しているようだ。
その部屋の壁には一面びっしりと白っぽい20cmくらいの楕円形をしたボールみたいなものが付いている。もしかしてこれが全部【アーミーインセクト】の卵か?昔見た映画を思い出した。中からいきなり飛び出して襲ってこないかとビクビクする。しかしそんなことも言っていられない。さっさと目の前の女王を倒して外に出たい。
でも女王はあんな体だったら動けないんじゃないのか?足も地面についてないし。だがここにある卵も全部潰しておきたい。とりあえずさっき2人に話したように事を勧めよう、そう思い2人に合図する。
ガイとキースが戦闘態勢に入った。
ガイは剣に気を纏わせて振るい剣撃を女王へ飛ばす。キースも弓から矢を放つ。
しかしそれを見た女王は「キシャー」と声を上げながら自分の前に土の壁を作り2人の攻撃を防いだ。
土魔法が使えるのか。今のは【土の壁】だった。そう言えば【アーミーインセクト】の隊長クラスの奴も土魔法が使えた。しかし2人の攻撃を防ぐくらいの壁を作り出せるって結構なレベルを持っているのかもしれない。自分が動けないので魔法を使って戦うのか。
そう思ってるとガイとキースの足元が少し盛り上がり、地面から槍が生える。【岩の槍】か、しかしガイとキースは異変を感じて回避している。2人共【気配察知】は持ってるから攻撃をされてもあれぐらいの魔法であれば簡単に避けれるだろう。
それから女王は2人に対して何本も岩の槍を地面から出して攻撃した。壁には卵が付いているから向こうも下手な攻撃が出来ないんだろう。2人はその岩の槍を交わし続け、散発的に攻撃をしている。俺が言ったように注意を引いてくれてるんだろう。
その間俺も何もしていない訳ではない、ちゃんと女王と卵の全てを壊す為の用意をしている。
そろそろいいだろう。
そう思って【念話】でガイとキースに下がってもらうように伝える。2人はすぐに俺のところまで戻ってきてそのまま部屋から出て下がっていく。
女王は俺達の行動がどういうことかわからないのか動きを止めて俺の事を見ていた。
すまないけど、もう仕込みも済んでお前は詰んでるんだ。
後は、そう思い俺は唱えた。
「【凍てつく庭園】」
部屋の温度が一気に下がる。そして壁には氷の荊が現れる。蛇の様に這い、壁一面に氷の荊が伸びて埋め尽くしていく。そしてそれは女王の体にも巻き付く。棘があり、その棘は女王の体に食い込む。女王は声を上げもがくが、そんなことで氷の荊の戒めからは逃れられるわけがない。部屋一面を氷の荊が埋め尽くす。しかしこれで終わりではない。荊の所々から薔薇の様な氷の花が咲く。部屋には何百と言いう氷の花が咲く。その花が咲き切ると花びらは散り始め、それが氷の結晶となり近くにあった物を凍り付かせていく。全ての氷の花が散った後は部屋何もかもが凍り付いた白い世界になった。
【凍てつく庭園】も俺のオリジナルの魔法だ。
相手を氷の荊で拘束し、その後全てを凍らせる。広範囲に攻撃が出来、こうした閉鎖された環境であれば相手に逃げ場はない。ただ終わった後が物凄く寒い。冷凍庫にいるみたいだ。
俺は二人に女王の注意を引いて貰っている間に【倉庫持ち】から水を出し、操作してバレない様に部屋の中に広げていった。だから一瞬で部屋全体に氷の荊を生やすことが出来た。何とか上手くいった。俺達には被害もないし、これで卵も全て駄目になっただろう。
今回はもう女王の部位とかは持って帰らなくてもいいかな、なんかちょっとグロそうだし。地上に戻ろう、ブランも待ってるかもしれないし。
俺は部屋を後にして、通路で待ってる2人に合流した。
【索敵】を使って巣の中を確認したがもう【アーミーインセクト】の姿はなかった。岩の人形達が頑張ってくれたんだろう。ただまだ外に出てる【アーミーインセクト】いるかもしれない。岩の人形達をこのまま巣の中に残していけば帰ってきたやつも倒してくれるかもしれない。渡したMPが切れたら土に還るだろうし、このままこの巣に残ってもう事にするか。
そう思って俺達3人は巣の外へ向かった。
足の速い3人だったのであっという間に巣の外に出ることが出来た。
外に出るとブランとエリックが座って待っていた。
「待たせちゃってごめんね。」
2人に謝る。
「いえ、それで魔獣は全部倒したんですか?」
「あぁ、卵とかも全て処分したから大丈夫だと思う。」
「お強いんですね。」
「冒険者なんでそれなりですね。」
エリックに聞かれ一応答えておいた。
「そうですか、私も今回グラントに行くときに冒険者を雇い護衛をして貰っていたのですが。」
エリックが浮かない顔で言った。そうだったんだ。エリックが巣で見つかったってことは護衛が役に立たなかったってことだろう。そいつらはもしかしたらもう、ってことだな。
「それでどうされますか?エデバラに戻るんですか?」
「そうですね。本当はグラントへは商売をしに行くはずでした。ただ今はその商売用の荷も何も手元にありませんし、グラントに向かってもしょうがありませんし。」
「私達もエデバラに行くつもりなので一緒に行きましょうか?」
「えっ、よろしいんですか?よろしくお願いします。街に着いてからからなずお礼はさせて頂きます。」
エリックはとても喜んで言った。どうせこれから向かおうと思っていた街だし問題ないだろう。
でもこれでやっとエルバドスに来て旅をするってことに戻れそうだ。いきなり色々あり過ぎた。エデバラって街でゆっくり出来たらいいな。
お読み頂きありがとうございます。
やっと【商業国家 エルバドス】編に突入です。
ただ次の話は【アーミーインセクト】の女王を倒した時点でのみんなのステータスを表記しようと思います。




