中間管理職
30分位だろうか、俺とガイ、そして水の龍によって【アーミーインセクト】の群れはもうほとんど残っていなかった。一応隊長クラスっぽいのが【岩の弾】を打ってきたりしたが、俺達にそんなものが当たるはずもなく他の個体と同じように倒していった。
何匹かが町の横から侵入していったみたいだが恐らくブランやキースの攻撃で速攻始末されてるんだろう。町に入った【アーミーインセクト】の気配が直ぐに消えていったのでそう判断した。
もう少しで終わるかと思ったら【アーミーインセクト】が撤退を始めた。
追撃して倒そうかと思ったけど、とりあえず今は町中の方が気になったので追撃はせずにしておいた。
「ガイ、ブラン、キース。【アーミーインセクト】が撤退を始めた。今は追撃はしない。とりあえず現状の確認をしたいから全員町の中心に集まってくれ。」
俺は【念話】を使って全員に伝えた。ガイは横にいるから直接言ってもいいだけどとりあえずってことだ。
後そうだ。
「もういいから、戻ってこい。」
そう言って残った【アーミーインセクト】を追おうとしてた水龍に声を掛けた。
水龍は俺のところにきて伏せの様に体を低くして俺に頭を向けた。
撫でて欲しいのかな?そう思って俺の前にある水龍の頭を撫でた。なんかプルプルしてる。撫でられた水龍は満足げな表情している。
今回の水龍には疑似的な意志を与えている。そっちの方が勝手に動いてくれるから一々操作するより楽なんだ。ただそのその意識というのは俺の考えが基本となって出来上がる。だから俺がこういう感じの性格だったらいいな、とかの趣味というか志向性が出てしまう。人形を作る時もそうだがどこかペットに近い感じになってしまうんだよな、俺が作ると。
この水龍に名前でも付けようか・・・。でもなと考えてしまう。
このまま出し続ける訳にもいかないので少し可哀想な気もしたが形作っている魔力を操作して元の水に戻す、そして頭を投げていた手の平から【倉庫持ち】の中へ入れていった。しばらくして水に戻った水龍はまた俺の【倉庫持ち】の中に全て帰った。
さてこれで俺達も動けるようになったし、町の中心まで戻るか。
ガイと俺が町の中心に戻るとブランとキースの前にすごく人が集まっていた。
なんだろうと思って近づいてみる。
「お疲れ様。こっちはどうだった?」
俺がキース達に声を掛けるとそれに気付いた人たちが歓声を上げる。
「あっ、兄貴お疲れ様です。なんか町の人達が、兄貴達が無事かどうかって気になってたみたいで。」
一応魔獣の群れに特攻して行って、しばらく帰ってこなかったもんな。声掛けとくか。
「皆さん、【アーミーインセクト】の群れは撃退しましたので安心してください。」
俺がそう声を掛けるとさっきよりも大きな歓声が周りを包む。しかしみんな無事だったんだろうか?
「それよりも皆さんは無事でしたか?誰か大怪我をおってここにいても治らなかった人や、周りで見かけなくなった人はいませんか?」
俺がそう聞くが、そう言った人はいないみたいだ。【索敵】でこの町にいる人達のことは全てわかる。ただそれは気配がある生きてる人だけだ。もう死んでしまった人は【索敵】には引っかからない。だから気になっていたけど、今回の襲撃で死んだ人はいなかったと聞いて安心した。
そんな話をしていると、砦の方からこちらに向かってくる一団に気付いた。
全員鎧を着て武装している。
そう言えばここは国境で砦がある。その砦にはこの国の兵士たちがいたはずだ。
しかし町中で戦っていたのは冒険者だけだった。兵士の姿は見ていない。今頃ご登場するとはどういうことだ。
兵士たちの一団が到着して俺達の前に来る。
一番先頭にいた他の兵士とは違って少し良さそうな鎧を着ているやつが兜を脱いだ。
兜を脱いだのはそこそこの顔した男だった。年の頃ならガイと同じくらいか。長めの髪をオールバックにしている。髪と目の色はチャコールグレー。彫りが深く少し疲れた顔をしていた。管理職で苦労してるとか?
「あなた方が今回の騒動を鎮めて下さったんですね?」
その男が俺達にそう言った。
「そのような感じですね。でも他の方々も協力して下さったからです。
あぁ、あなた達兵士の方以外の人達ってことですけどね。」
俺は少し嫌味を言った。安全になった今更出てきてどういうつもりだと思った。
「なかなか手厳しいですね。申し遅れましたが私はこの国境のこちら側を管理をしています、アルザークと申します。この度はこの国境線を守って頂きありがとうございました。皆を代表して感謝いたします。」
「いえ、感謝をするなら私達だけではなくそちらにいる他の冒険者の方にもお願いします。」
「そうですね、皆様のご尽力のおかげです。誠にありがとうございます。」
アルザークはそう言って周りにいる冒険者にも頭を下げた。
う~ん、思ったよりもちゃんとしてる人っぽい。なんか兵士とか嫌な人間ばっかりしかみてこなかあったから俺も思い込みがあったのか。
「しかし何故皆さんが襲われた時に助けに来られなかったんですか?」
俺は思ったことを聞いてみた。
「それは本当に申し訳ないと思っております。ただ私達兵士の一番の優先する事項は、国境の砦を守ることなのです。もしあの門が壊されて魔物などがグラントの国へ侵攻すると国同士の問題になるからです。」
アルザークは申し訳なさそうにそう言った。
それはそうか、国仕えの人も大変だね。グラントにこっちの国からモンスターが行ったらあの国王だったらそれを逆手にとって色々言ってきそうだもんね。うん、そんな性格してる。
「しかし砦を守ると言っても兵の数が少なくないですか?またこんなことがあっても守れないんじゃないですか?」
俺達の目の前にいる一団の人数は少ない。まぁ砦にまだ残ってる人もいるだろうけどそんなに気配は感じないんだよね。
「それが、今まではこの人数で問題はなかったのです。魔獣がやってくることなどは今まで一度もありませんでした。」
アルザークが言う。
やっぱりなんか魔獣の活動が活発になってきてる?行く先々で暴れてる気がするんだけど。でも今そんなこと考えても意味ない気がするしいいか。というか国境も越えて魔獣も追っ払ったから俺達がここにいる理由もないしここから離れよう。このままいたらなんか色々と話聞かれそうだし。
「そうですか、ともかく俺達はそろそろここから離れます。旅をしているので。申し訳ありませんが【アーミーインセクト】の死骸がそこら辺に転がってると思うので、どなたかが処理して頂けるようにお願いします。」
それぐらいお願いしてもいいだろう。助けた恩もあるんだし。向こうの方で他の冒険者達が「任せとけ」と言ってくれてたりする。
「そう言えば確認なんですが、俺達って勝手に国境超えちゃったんですけど大丈夫でした?」
俺は思い出したことを聞いておく。グラント側は兵士にちゃんと言ってきたけどこっちに来てから何にも言ってなかった。
「勝手にですか?」
「えぇ、岩の壁に穴を空けて通ってきました。」
「あの岩の壁にですか?」
「そうです、もう魔法で閉じちゃいましたけどね。」
「そんなことが出来るんですか?」
「はい、出来たのでここにいます。」
「そんな方法で通った人がいる前例がないので、何とも言えませんが。普通国境を越える時にはギルドカードなどの身元を確認できるようなものを見せて貰って問題なければ通って貰ってます。あなた達が問題があるようには見えませんので大丈夫だと思います。」
「そうですか、ありがとうございます。」
問題ないことも確認できたし、俺達には行くところもあるし、行こうか。
俺は岩の人形を大地に戻し、回復と支援の魔法も解除した。
「もしよろしければ、お名前を伺ってもよろしいですか?」
アルザークが俺に問いかけた。あんまりこういうところで名前を言いたくないんだよね。目立ちたくない、今更だけど。今でも周りからかなり好奇な目で見られているのが分かる。
「えっと、まぁ、ちょっと。あんまりこういうところで言いたくないです。」
一応伏せておいた。
「そうですか、しかしあなたの様な方だったらその内に名前は広がるでしょう。その時に憶えることにします。」
アルザークは軽く笑ってそう言った。
お読み頂きありがとうございます。
水龍のお名前付けてくれる方募集です。
感想にでも書いて頂ければその中から決めさせて頂こうかと思います。
人の名前とか地名とか考えるのが苦手なんです。
いつも「どっかで聞いたことあるな~。」と思いつつつけてます。
切実にお願いします。




