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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
いざ世界へ
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防衛戦

 俺が岩の壁から出た時には他の3人はすでに戦闘態勢に入って俺の事を待っていてれた。

 俺は【索敵(レーダ―)】のスキルで周りの状況が大体わかっている。全員に指示をする。



「ガイは遊撃に回ってモンスターを倒していってくれ。

 ブランは人形(ゴーレム)を作って防衛線を張ってくれ。大きさは人位でいいが数が欲しい。街の真ん中に十字路があってその中心が少し広くなっている。見通しが効くし集まるには好都合だからそこに拠点を作る。

 キースは高いところに上って状況把握と狙撃による敵の数減らしだ。何かあったらすぐに俺に報告してくれ。

 俺は拠点で傷ついた人を回復して【退魔陣(アンチサークル)】を張る。落ち着いたらモンスターのせん滅に回る。何かあればその都度【念話(テレパス)】で伝えてくれ。じゃあ散開。」


 そう言って俺達は町の中へバラバラに走っていった。

 先程の会話の中で出てきた【念話(テレパス)】だがホントにテレパシーで話せるスキルだ。

 昔からそのスキルがあったのは気付いていたんだが使えなかった。説明を見てみると「繋がりが深い者とのやり取りが出来る」とあって繋がりって何だろう?と思った。もしかして体の繋がりかな?なんて思ったのは内緒だ。ガイとブランに対しては使えなかった。

 そんなスキルはすっかり忘れていたんだがキースが新しく入ってもしかしてスキルの相性がいいかもしれないからと試してみたらホントに出来た。頭で考えるだけでキースに言いたいことが伝わってキースからも伝わった。何か2人とは違うのかと色々調べてみたら恐らく奴隷契約の時に、俺が【刻印術(ルールメイカー)】を使ってキースに直接隷属紋(れいぞくもん)を刻んだからじゃないかという結論に辿り着いた。キースが俺に【念話(テレパス)】を使って話しかける時に隷属紋(れいぞくもん)の所が熱を帯びた様な感じがすると言っていた。俺が印を刻んでそれが繋がりになったからかなと思いまた実験することにした。ガイとブランの奴隷契約を解除して、もう一度俺が直接スキルを使って契約してみた。今回の誓約はキースにしたものを同じものに変更しておいた。契約がすんでから【念話(テレパス)】のスキルを使ってみると、ちゃんとガイとブランにも俺が考えたことが伝わった。ただ2人から俺の方にはなかなか伝わらず最近になってやっと会話が出来るようになったので今回初めての実践投入になる。距離は持ってる人間の魔力に対してなので俺が使うのでかなりの距離でも頭の中で会話ができる。まぁただ俺とそれぞれの3人は会話ができるが、3人だけで会話は出来ない。一旦俺を経由しないといけない。パスみたいなのを通してるのが俺だからかもしれないけど。

 でも戦闘中にいちいち声を出したりしなくても作戦を伝えられるし、離れて行動してる時にも考えを伝えられる。更に俺の【索敵(レーダ―)】で見てるものなんかも直接伝えられる。言葉じゃなくて俺が見てるものをそのまま見える様に伝えられるんだ。だからこういった防衛戦なんかにはすごく使えるスキルだ。どこからどんな敵が近づいてきていて、誰が危険に陥っているかなんてことがみんなで共有できる。



 俺は全力で走っていたので直ぐ町の中心、十字路の真ん中に到着する。

 【索敵(レーダ―)】で確認しているが今は【アーミーインセクト】も街の中に入ってきているのは数十匹だ、ただ遠くの方には結構な数がこちらに向かってくるのが分かる。個体差で足の速いのが先遣隊としてやってきてるのだろう。


 俺はかなりの大声で叫ぶ。



「俺は高位の魔法使いです。ここに魔獣がこれないような魔法の陣を張ります。そして回復魔法も使えますので怪我をした人はここに集まって下さい。」



 そう叫んでから【支援魔法】の【退魔陣(アンチサークル)】を発動する。直径20m位の光の円が出来る。【アーミーインセクト】ぐらいならこの中には入ってこれないだろう。その間にも俺の声を聞いた人が集まってくる。この街で宿屋などで働いたりている人や、逃げ遅れた商人なんだろう。逃げる様に俺の近くに集まってくる。



「怪我をした人はいませんか?」


「すまん、こっちに結構いる。」



 俺の声に反応した方へ行く。

 そこには何人かの冒険者が腕を怪我したり、足を引きずったりしていた。この国境を通ろうとした冒険者が事態に気付いて【アーミーインセクト】と戦闘をしたのだろう。別の道からも何人かの冒険者が傷を負いながらこちらに来るのが見えた。1人ひとり治すのは大変か。



「【治癒の陣(リカバリーサークル)】」



 俺が唱えると青白い光の円が広がっていく。先程張った【退魔陣(アンチサークル)】に重なる様に円は地面に張り付いた。回復魔法では上級魔法に当たる。円の中の効果範囲内であればそこに居るだけで傷が治るようになる。一度に多くの人の怪我を治せるが使っている間ずっとMPを膨大に消費する。ただし俺の場合はMPの回復量が尋常じゃないので、減る量よりも回復する量の方が多い。だから問題なくずっと使っていられる。使用者があまり離れなければ魔法の効果が消えることがない。

 目の前にいる冒険者達の傷が癒え、その光景に周りの人も驚いている様だった。



「この円の中にいる限り【アーミーインセクト】は襲ってきません。そしてもし怪我をしてもこの円の中にいれば回復します。戦えない人はこの場所にいて下さい。回復した冒険者の方は申し訳ないですが街に散って戦えない人、怪我を負った人にここに集まる様に伝えていってください。戦闘は俺達が行います。無理に戦う必要はありません。」



 俺は不安そうにしているみんなに言った。



「あの、本当に大丈夫なんでしょうか?」



 俺の近くにいた年配の女性が聞いてきた。



「大丈夫です。俺も、俺の仲間たちもかなり強いので【アーミーインセクト】なんかには負けません。」



 俺は笑顔で答えた。



「【岩の人形(ロックゴーレム)】」



 俺は岩の人形(ロックゴーレム)を数体作り命令する。



「ここにいる人たちを何があっても守れ。」



 俺の命令を聞いた2mもあろうかという岩の人形(ロックゴーレム)が両手を上げて答えた。その光景を見た人々から「おぉ」と声が上がる。こういうパフォーマンスを見せた方が人は希望を見出しやすい。



「俺ここを離れて逃げ遅れた人を助けに行ってきます。」



 その場にいる人にそう告げて俺は走り出した。

 一番近い気配の所へ行く。最近ではもう【索敵(レーダ―)】を使う為にいくつものスキルをセットする必要はなくなった。ずっと使っているスキルだからスキルを付けなくてもほぼほぼ使えように身に着いたんだ。今回位の大きさの町ならばもうスキルをセットしなくても、使える能力だけでカバー出来る。その分他のスキルに回すことが出来ている。と言っても今はほとんど魔法しか使っていないからセットするスキルもそんなにない。【MP高速回復】と【魔素吸収】、【魔力操作】のスキルもセットしていなくても最高ランクに近い能力を使える。日々の鍛錬のたまものだよな。これからも睡眠学習は続けよう。


 道を走っていると【アーミーインセクト】と戦っている冒険者が見えた。



「【凍る槍(フリージングスピア)】」



 俺は【倉庫持ち(アイテムボックス)】から水を取り出して、それを氷の槍にして放つ。

 氷の槍は【アーミーインセクト】に当たった瞬間に弾け、当たったところから氷漬けにしていく。

 この魔法は元々は鋭い氷の槍を放つ【氷の槍(アイシクルスピア)】を元に俺が作ったオリジナルの魔法だ。

 【氷の槍(アイシクルスピア)】は殺傷能力が高く刺さると太い木でも貫通する。人が戦ってる所に向けて打って、万が一にでも人の方に当たると刺さり所が悪ければ死んでしまう。他の属性の、炎や、岩、風の刃も同じように当たり所が悪かったりすると周りに人がいると巻き込む可能性が高い。ただ俺の【凍る槍(フリージングスピア)】は当たった物を凍らすだけで、もし人に当たっても凍るだけ。まぁ凍ってしまうのも大概なんだけど、即死することはまずないし、後で溶かして凍傷とかになっても治したら済むだけだしな。それと外しても周りに建物があっても当たった所が凍る位で被害はほとんどない。そして相手の動きも当たった時点で止めれる、他の魔法で殺し損ねてそのまま反撃を食うってことも防げる。こういう町中で他にも戦闘している人がいる時にはうってつけの魔法だ。

 俺の【凍る槍(フリージングスピア)】を受けて凍りついた【アーミーインセクト】にもう2、3発続けてお見舞いしてやる。そうすることで完全に体の中まで凍り付く。そしてそのまま走って【アーミーインセクト】に飛び蹴りを食らわす。

 バキンと音を出して【アーミーインセクト】が砕ける。凍らせるとそこまで力を入れない蹴りでも倒すことが出来る。



「今町の真ん中に魔獣が寄ってこれないような魔法の陣を引いてあります。あなたはそこまで下がりながら逃げ遅れたり、戦っている冒険者に声を掛けてあげて下さい。建物の中にいる人にもお願いします。戦闘は任せて下さい。」



 俺は言葉を失くして呆然と立ってる冒険者に向けてそう言った。



「えっ、あぁ。分かった。」



 冒険者は俺の言葉に我を取り戻したように反応して答えた。

 そんな話をしていると後ろに気配を感じた。

 振り返ると俺達の方に向かってくる【アーミーインセクト】見えた。

 俺は【凍る槍(フリージングスピア)】を放とうとするが、その前にどこからか飛んできた矢が【アーミーインセクト】の頭に刺さりそのまま倒れる。



「キース、ありがとう。助かった。」



 俺は頭の中でキースにお礼を言った。



「いや、兄貴だったら必要なかったかもしれませんけどね。」



 キースからの返事が俺に届く。



「それで今どんな状況かわかるか?」



 俺はそのままキースに現状を聞いてみた。



「えっと、そうっすね。俺は建物を屋根伝いに移動して、その建物に残った人に町の中心に避難するように伝えていってるっす。んで途中見付けた【アーミーインセクト】を倒しながら冒険者達にも声掛けいってるっす。今避難は出来てるのは町にいる7割ってとこですかね。ガイさんは着実に【アーミーインセクト】の数を減らしていってますど今実際に倒していってるのがガイさんだけなんで、なかなか数が減らないって感じですかね。ブランさんの防衛ラインも町の中心から大分前に押し戻せてるみたいなんでそっちは問題ないかなって思います。」


「そうか、じゃあキースは引き続き今と同じように動いてくれ。」


「了解っす。」


「ブラン?」


(あるじ)なんでしょう?」



 キースとの会話を終わらせて、今度はブランと話す。



「防衛ラインはそのままでいいからキースと一緒に街の中にいる人の避難を優先してくれ。俺がガイの所に行って倒すのを手伝うから、多分そんなにそちらまで回さないと思う。もしかして怪我をして動けないくらいの者がいるかもしれないので人形(ゴーレム)を使ってでも拠点に運んでやってくれ。」


「あい、わかった。」



 俺はブランにも伝え、ガイの元へ急いだ。

 ガイは町の入口辺りで【アーミーインセクト】の群れと戦っていた。剣撃を飛ばして何匹もいっぺんに斬ったり、直接剣で真っ二つにしたりと無双しているが数が多くてなかなか減らない様だ。



「お待たせ、遅くなって済まない。」



 俺はガイの横に並び声を掛けた。



「いや、なかなか数が多くて一行に終わりが見えない。」



 ガイの言葉に俺も【索敵(レーダ―)】で確認しているが、町の外にもまだ大分数がいる様だ。



「じゃあ、ちょっと大きい魔法使って一掃する。」



 そう言って俺は大量の水を【倉庫持ち(アイテムボックス)】から出して唱える。



水龍演武サモン・アクアドラゴン



 俺の言葉を受けて俺の手から流れ出る水が形を持っていく。

 その形は東洋スタイルの蛇の様な形をした水の龍そのものだった。

 俺が収納していた水をすべて使った水の龍は体長20mぐらいある。透き通った体を持ち俺の横で上体を上げ口を大きく開き、【アーミーインセクト】を威嚇している様だった。

 水魔法の最上位に位置する魔法の1つで、人形(ゴーレム)の様に疑似的に意志を作ったり、そのまま操ったりできる。



「行け、目の前の奴らを飲み込め。」



 俺が水の龍に命令すると、水の龍は口を大きく開けたまま【アーミーインセクト】の群れに突っ込んでいった。そして口はそのまま【アーミーインセクト】を飲み込んでいく。飲み込まれた【アーミーインセクト】は水の龍に飲み込まれた順番にバラバラになっていく。水の龍の体は透けているので見えるんだけど口の中に入ったと思った次の瞬間には手足がもげて胴体や頭も千切れていく。水の龍の体の中は凄まじい水の流れがあり飲み込んだものを瞬時にバラバラにしてしまうほどだった。

 水の龍は地面を蛇の様に体をくねらせてスルスルと進み、【アーミーインセクト】を飲み込み粉砕していく。ある程度体の中に【アーミーインセクト】の死骸が溜まると丸めて固め、ポイッと地面に身体から出す。

 う~ん、掃除機とミキサーを合わせた様な感じだな、とそれを見ていて思った。しかし凄まじい勢いで【アーミーインセクト】の群れは数を減らしていった。

 俺達も残り物を片付けるとするか。

 そう思ってガイと後に残った少数の【アーミーインセクト】に向けて攻撃を放っていった。

お読み頂きありがとうございます。

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